月としてあるがままに愛を見る
降りしきる雨に打たれながら、見えもしない月を見ている。
どれだけ想いを馳せていても届かないものがあると知った今日、僕は愛を知るだろう。
帰り道の踏み切りで、昼休みの図書館で、授業中の教室で見る君の背中はとても艶かしかった。
時折見せる、振り向き様の髪が、睫毛が、僕には刺激が強すぎた。
その事に君が気づいていたかいないかは正直どうだって良い。
僕が君を見ていた想っていたという事実さえ僕が覚えていれば良い。
そうでないと、心が休まらない。
もし君が僕を覚えているとなると、恥ずかしくて死にそうだ。
心を届ける気もない。
想いを乗っける気もない。
ただ見ているだけで満足できるのだ。
それなのに君は、平穏に過ごしている僕に踏み込んで来ようとする。
踏み込まれてしまうと僕と君との境界線が分からなくなる。
なんとも言えない感覚に僕は包まれる。
君を君のままで僕は見ていたい。
君と触れ合う度に君は君ではなくなっていく。
すると次第に僕は君になっていく。
君と僕の境界線が消失する。
その時君は笑っていた。
その意味こそわからないが、きっと君は嬉しいんだろう。
僕にはそれが見えない。
見ないのかもしれない。
君という星、月が雲に隠れていようがいまいが、確かに君はそこにいる。
僕はそれでいいと思う。