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神殺しは銃で死ぬ  作者: 尾根末彦
第11章 大災厄テュポーン
90/90

戦端

 起きた大和と勇美の間には何とも言えない空気が流れていた。

 そんな二人をにやにやと見守るアレスとアテナ。

「その、悪い、起こさなくて」

「いや、私こそ。ごめん」

「お二人は仲がよろしいですね。よいことです」

 アテナにフォローする気があったのかなかったのか、更に顔を赤くする二人。


「さて、あと一時間ほどだ。最後の作戦会議を始める。新女王のところに向かうとしよう」

 金髪碧眼の偉丈夫、アレスが二人に声をかける。

 二人はストレッチしつつ、軍神と戦女神について行った。


 地平線の果てまで見えるような広大な平野にて立っているのは、オリンポス十二神のうちヘラとテメデルを抜いた十神。

 そして、赤羽陽美香(あかばねひみか)岩倉風雅(いわくらふうが)釧灘大和(くしなだやまと)井上勇美(いのうえいさみ)

「今いる面子で、この辺りの神域が持つ耐久力の限界って所だな。

 これ以上戦力を増やしても、世界が壊れるだけだ」

 風雅の言葉に勇美は疑問を呈す。


「それ、さっきも聞いたけどこの世界が壊れるとどうなるの」

「神界と人界を分けている層が壊れて、人界に異能があふれるようになる」

「それだけではなく、世界に蟻地獄のような無数の虚空への穴ができるでしょう。

 だからルシファー達もやろうとはしません」

 風雅の答えにアテナが補足する。

「簡単に言うと世界がヤバいってことか」

 勇美の言に大和も頷く。


「で、テュポーンを相手にするには具体的にどうするんだ」

「まず神体と化した神々でやつを抑え込む。

 その間に大和、勇美。貴様らは俺とアテナとともにテュポーンの内部に切り込み、心臓を閻魔で貫け」

「内部があるのか? ただの怪物じゃないのか?」


 大和の言葉にアレスは首を振る。

「アレは、ガイアが生み出した、オリンポスの代わりに存在するはずだった世界そのものだ」

「その中は広大な地球そのものです。そしてその中には多くの巨人、それも神に匹敵する力を持つものがいます」


 壮大な話に二人は頭がクラクラするのを感じた。

「中身は四人が何とかするとして、外身はどうするの。世界を覆う暴風と火山そのものなんでしょ?」

 陽美香の問いにゼウスは答える。

「全員で戦うことになるわけだが、何のことはない。

 災害を押しとどめるだけだ、この領域から出ないようにな」

「大和組がオフェンス、陽美香ちゃん組がディフェンス。ディフェンスが守ってるうちにおオフェンスが間に合えば勝利。

 間に合わなければ世界は破滅する。簡単だね」


 風雅がギターをチューニングしながら、何とはなしに言う。

「最後に聞くが、お前たちはそれでいいのか」

 ゼウスは四人に問う。

「俺を殺せば、先送りにはできるぞ」

「あんまり意味があるようには思えんな。どんどん強くなってるんだろう」

 大和は確認するように言う。


「なら、とっとと殺してやるのが情けだ。それに、あんたみてえな人間臭いのを殺すってのは後味が悪い」

「ふふ、確かにそうだね」

 大和の物言いに勇美も笑う。

「私としては、誰も死なないで済むならそれに越したことはない。

 それに、あんたには陽美香に殴られ続ける義務があるだろう。

 死んで逃げるのは許されない」

「そうね、あんたの短慮でこうなったんだから生きて責任取りなさいよ」

 陽美香はつんとすまして言った。


「君らは厳しいな」

 ゼウスはそういってまぶしそうに眼を細める。

 そんな空気を怒号が揺らす。

「陽美香!」

 怒気を巻きながら走ってくるのは黒い髪の、体格で言えば中学一年生程度の少女だった。


「やっと名前で呼んでくれたわね! ヘラ!」

「……あれがヘラか」

 長い黒髪に美貌、豊かな双丘を兼ね備えた、麗しい少女である。

「あんな美人の嫁さんがいて浮気に精を出すんだから大したもんだな」

「つうかロリコンじゃん。引くわ」

 大和と勇美は冷めた目でゼウスを見る。


「もっと言ってやってください」

「『お前の父ちゃんゼウスー』はここにいる多数の神に刺さりますからねえ」

 アテナの物言いにヘルメスも賛同する。

 ゼウスは涼やかな美貌を歪めつつ、無視した。


「ヘラ、落ち着け。戦いが始まる」

「しかしゼウス。妾は、妾はこいつに顔をつぶされたのだぞ」

「ふふふ、まさに文字通りの意味でしたね」

 ヘルメスの戯言にヘラは睨みつけるが、伝令神は肩をすくめるのみ。

「お前そんなことをしたのか、引くわ」

「あんたに言われたくないよ。頭クシヤマか?」


 大和と陽美香が言い合うのを勇美が割って入る。

「やってる場合かよ。そろそろなんじゃないの?」

「そうだな。シチリア島に現れるぞ」

「ヘスティアさん。お願いします」

「うん。四人とも、生き残る。オリンポス十二柱神、彼らを絶対に死なせないで」


 ヘスティアが消えしばらくの時がすぎる。

 戦の緊張が一同満たす。

「……ヘスティアちゃんって。無茶苦茶かわいいわね」

 空気に耐え切れなくなったのか、陽美香がポツリとつぶやく。

「アンタ、阿呆なこと言ってる場合?」

 勇美が思わずひそひそ声で問う。

「だってえ。何かみんなシリアスで……」

「ヘスティア伯母上は群を抜いてますから、間違いありません」


 何故かアテナが同意する。

「アフロディテは弄っていいけど、ヘスティア様は弄ったらいけない感じあるわ」

「ちょっとどういうことよ」

 アルテミスの物言いに美の女神が噛みつく。

「伯母上は唯一の良心だからな」

「あの方がいなければ我々は何度か殺しあっているし、内部分解していただろう」

 アレスとヘファイストスも同意する。


「まあ確かに、女神様っていう感じね。何か安心感あるっていうか」

 勇美もうんうんと頷く。

「勇美。あなた女神達を前にいい度胸ですね」

「いや、だって他の女神って確かに美人だけど災害って感じするもの」

 アテナの皮肉に勇美は真顔で返す。


「まあ、否定は」

「できない」

「わねえ」

「フン」

 今いる四人の女神は揃って目を伏せる。


「……大和くんや風雅くんはどう思うのー?」

「軽く死の質問をするな。そうやって変な意地の張り合いに巻き込んで、何人も人生狂わせてきただろうがアンタら」

 アフロディテの問いに大和がため息を吐き、無視する。

「ええ、答えてよー」

「そうね、答えてみたら」

 何故か勇美が機嫌悪そうに大和を見る。


 大和はふむと顎に手を添える。

 しばし考える。

「そうだな、思ったより」

「思ったより?」

「……来るぞ」


 大和の真剣な表情に、神々の表情も変わる。

 視覚化されるような闘気が空間を歪める。


 夜空にそれが現れる。

 溶岩が、風により宙をまっている。

 そんな嵐の塊が、テュポーンであった。

 星空に届くスケールで現れたそれ。

 その肉体を切り取れば、山脈を作り出すことが可能であろう。


 ポセイドンがポツリと呟く。

「一度でいいから、ヘスティアを好きにしたかったなあ」

「自分もです、伯父上」

 アポロンが深々と同意する。

「色ボケ海神は土で壁作って。あほ太陽神とアルテミスさんは手筈通り頼む」

「「「御意」」」

 陽美香の指示に同意した三神は行動を開始する。


 ポセイドンがトライデントを操ると、皆の立つ大地がせりあがる。

 凄まじい速さで、テュポーンの顔と思しき高さまで追いつこうとする。

 そんな彼らを、溶岩の濁流でできた腕が叩き潰そうとする。


 腕を太陽と月からの斉射が居抜き、破壊した。

「行くわよ! 災厄を無くすために、世界の安寧のために! 何より誰も消えない結末のために行くのよ!」

「「「「「「「応!」」」」」」

 陽美香の闘気が周囲の神々に伝播し、鬨の声が空間を裂いた。


 神殺し&オリンポス十二柱神VSガイアの最大怪作テュポーン。

 全面戦争開幕。


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