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神殺しは銃で死ぬ  作者: 尾根末彦
第10章 オリンポス十二柱神
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大和VSアルテミス

 勇美とアテナがぶつかり合う上空、風雅の使役する朱雀により空へと飛んで行った大和達。

 大和は降り注ぐ矢を刀で切り落していた。

「どんどん来るな! 弓の連射力じゃない!」

「神話に残る狩猟の神だ! 十二人の兄弟たちを射殺した凶悪性含めて厄介すぎるぞ!」

 大和の分析に風雅が補足する。

 かつてアポロンとアルテミスの双子の兄妹は、母を侮辱した人間の息子と娘十二人をその矢で射殺したとされる。

 神はたてつく人間を絶対に許さない。


「で! 太陽と月どっちにいく!?」

「まずはアルテミスだろう! 正確無比な射撃はオリンポス一だ! まあどっちにしろ地獄だろうけどね!」

 風雅の言う通り、どちらを選んでも困難に変わりはない。

 ならば直感を信じるのみ。

 矢の雨と極太のレーザーを旋回し避けながら上へ上へと進んでいく。


 神殺しの視力は月面からこちらに照準を向ける短髪の女神の姿を捉えた。

 女神が持っているのは、三日月を連想させる短弓であった。

 見た目から想像できる張力とは場違いなほどに長い射程で狙う距離、およそ300キロメートル。

 遠い。が、実際の月程ではない。

 

「風雅! このまま太陽と月を結ぶ線まで飛べ」

「……何か考えでも?」

「二人同時に倒さないと不味いだろう」

「……いや! そうはならないって!」

 考えを悟ったのか風雅が悲鳴を上げる。

「ほかに手はあるか?」

「あーあー分かりましたよ!」

 風雅はやけっぱちになって叫ぶ。


 火の鳥は横向きに進路を変え、アルテミスの矢を避ける。

 そのままぐんぐんと距離を空ける。



 凍えるような銀色の短髪に水着のような軽鎧を身に着けた、腹筋が割れ肩は盛り上がるほど鍛え上げられた肉体をした女神。

 月女神アルテミスは怪訝な顔で照準を合わせる。

 獲物が方向転換した。

 まるで兄アポロンが生み出す太陽へと、自身の照準を誘導するように。

 ハスキーな声で独り言を呟く狩猟の神。

「同士討ち狙いか?」

 確かにそうすれば少なくとも兄アポロンのレーザーは、彼女の持つ月を焼くため使えなくなる。

 だが、それならそれでやりようはある。

 アルテミスは星空を見た。

 自身の愛しい人がいる星空を。

「……では、ともに彼らを射殺そうか。あの日のように弓の腕を競おう。わが友オリオンよ」

 そうアルテミスが言うと、ギリシャ神話の空で星々が輝きだす。



「おい! あれは何だ!」

 星々の異常な輝きに思わず叫ぶ大和。

「相手はアルテミスだろう……? まずいな、多分想像ができるんだが」

「狩人オリオンか」

 オリオンとはアルテミスの恋人だった神話の狩人である。

 その仲を嫉妬した兄アポロンの姦計に合うまで二人仲良く狩りに興じていたとされる。

 現在もオリオン座となりアルテミスと逢瀬を重ねているという。

「この神界なら、ゼウスの力で空に昇ったオリオンが召喚されてもおかしくないが……?」

 かくして、二人の予想の通りとなった。

 星々は巨大な人型を形成する。

 まるで古に歌われる世界を支えた巨人のような大きさだ。

 あるいは、世界を覆う星屑そのものが形作ったような。

 

 煌く星が人型の流星群を形づくり、アルテミスの勇ましい声が宇宙空間を越え、二人の耳朶を叩く。

「わが友オリオンよ。今宵の獲物は二匹だ。ともに狩りつくそう」

 オリオンは女神の意志に応えるように、星屑でできた弓を引き絞る。

「どうする!?」

「予定通りだ」

 

 その時、夜空を切り裂くような魔弾が二人に襲い掛かる。

 それは星屑の形をしていた。

 まさに隕石そのものの流れ星、当たれば即死はまのがれない。

 覚悟を決め、二人は作戦を決行する。


 大和の体から黒い炎が噴出し、輝く星々を漆黒に塗りつぶす。

 そして、火の鳥と漆黒の炎弾は二手に分かれた。

 

 行ったのは単純、大和が火の鳥めがけて思いっきり両足を使って飛び上がったのだ。

 大和は月にむかって突撃し、火の鳥は反作用によって太陽の方に突っ込んでいく。

「恨むぞ大和おおおおおぉぉぉぉぉぉ!」

 かき消えていく少年の叫びを無視し、大和は月に近づいていく。


 短い弓からの攻撃を、かつて日本最強の霊能者がみせた気炎の噴出による方向転換で躱していく。

 そしてそのままぐんぐんと距離を詰め、ついに月面に到着した。

 大和は月女神を見る。

 何となく、勇美に似ている。

「ちょっとやりづらいが、手早く戦わせてもらう」

 アルテミスはしかし、自身の指を天にまで高くつき上げ、微動だにしない。

 大和が視線を移すと、オリオンが必殺の射撃を撃ちこもうとしていた。


 降って来た隕石を大和は一刀で両断する。

「ふーん、じゃあ。……始めるか」

 月面にクレーターができる。

 大和の足元だけは盛り上がったままで、まるで大地が裂けたように消滅している。


 その攻撃の間にアルテミスは虚空から自身の戦車を生み出した。

 自身が空を駆けるときに使う、三頭立ての銀の戦車を。

 そして大和に対して距離をとり、短弓の餌食にしようと弓を撃つ。

 魔力で無限に矢を供給しているその連射は、ガトリングガンのように荒々しく大和を襲う。


 大和は、黒炎を噴き出す高速移動でその暴威を躱していく。

 相手の短弓の構えから弾道を予測し、躱していく。

 降ってくる隕石の衝撃も頭にいれながら、距離を詰めていく。

 

 アルテミスは逃げるように空を飛んだ。

 そうはさせじと大和は飛び上がり、戦車のふちを掴み、刀を抜く。

 一閃。

 大和の斬撃が、銀の戦車を粉々に破壊する。

 三頭の馬が怯えたように天を駆けていき逃げ回り、月女神は受け身を取りながらも地面に投げ出された。

 麗しい彼女の首筋に沿えるように黒い刀に、月女神は目を閉じ手を上げ降参の意を示す。

「ふう、俺の負けだな。オリオン。ここまでだ」

 大和はオリオンに睨まれるものの、すぐに誠実な眼差しで返す。

 決して乱暴はしない。そう言うように。

 毒気を抜かれたのか、人型の巨大な輝きは霧散し、星々の位置が正常に戻る。


「一応拘束はさせてもらう。だが、辱める意図はない」

 ヘファイストスから強奪した金の鎖を巻き付けると、アルテミスの神気が萎む。

「……仕方がない。それにしても、貴様帰りはどうするつもりだ? 俺の銀の馬車は壊れてしまったぞ」

 大和は男言葉でなじる女神の眼差しを涼しい顔で返す。

「大丈夫だ。風雅が勝つ」

「ずいぶんと、信頼しているんだな」

 アルテミスの言葉に、大和は自信満々に答える。


「惚れた女のために戦うって言うんだ。根性みせるさあいつなら」


 言った瞬間、むせかえるような熱気が月を襲う。

 見ると、太陽がさらに輝きを増している。

 大きさも倍以上になり、星々もその輝きに巻き込まれていく。

 それでも大和は、風雅の勝利を確信していた。

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