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神殺しは銃で死ぬ  作者: 尾根末彦
第10章 オリンポス十二柱神
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アポロンとアルテミス

 アポロンとアルテミスはギリシャ神話において太陽と月を司る神であると知られる。

 しかしその性質以上に、アポロンは預言と信託、アルテミスは狩猟と清純を司る属性が大きい。

 彼らの武具は弓。

 アポロンは未来を見据える目、アルテミスは自身の腕前でもって、共に百発百中を誇る。

 

 黄金の神殿は軋みながらも弓矢の攻撃を今の所は受け切っている。

 だが、こうしてばかりもいられない。

 いつ崩落し、生き埋めになるかわからない。

「あいつら、あんたらごと射ってきてるけどいいのか?」

「アルテミスとアポロンは仲間に頓着しないから。そうは言っても誤射するような腕ではないわよ」

 二神の弓の腕に全幅の信頼を置いているようだ。

 その時、アポロンとアルテミスの気配が掻き消えた。


「何でだ?」

「分からない。撤退したわけではなさそうだが」


 疑問に思う大和と勇美をよそに、大きな音と馬のいななきが聞こえる。

「アテナとアレスか」

 ヘファイストスがポツリと呟く。

「風雅。お前はこいつら見張ってろ。アレスは俺が、アテナは井上が相手してくれ」

「了解」

 拳を打ち鳴らし、勇美が駆ける。

 大和も黄金の壁を切り崩し、突撃していった。


 黄金でできた回廊を戦車で驀進するアレスを補足し、大和は斬りかかる。

 大和が戦車にのったアレスに斬りかかると、アレスは槍で受け止める。

 二人はしばしつばぜり合う。

「アレス! もう復活したか!」

「ふん! 不本意だが決着をつけよう!」

 アレスはそう言うと、一頭立てになった馬車を巧に操り、方向転換する。

 かなりの速度で、壁を吹き飛ばすと外に出た。

 

 瞬間、こちらを見聞するような視線が二つ、ぞろりと殺気を込めて見つめていることに大和はきづいた。

 思わず視線の方へ目線をやる。

 その視界は、満天の星空であった。

 大和はまず、来た時は夜であったかと疑問に思う。

 さらに現実の星空と違う点が二つ。

 何だあのバカでかい月と太陽は。

 

 人界では考えられないことに、星空だというのに太陽が昇っていた。

 それと相対するように、月の大きさも通常の十倍以上に膨れ上がっていた。

 大和は一瞬呆けそうになったが、頭を切り替えた。

 そして悟る。まずい。

 

 そう思ったタイミングで、太陽から放たれた極太の光線が地上を焼いた。

 大和は光線に向け黒刀の一撃を放つ。

 あまりの熱用に辺り一面の地面が沸騰し、ボコボコと音が鳴る。

 さらに、彼の太ももに何かが刺さった。

 激痛で思わず足を見る。

 

 一本の矢が、ももを貫通していた。

 これはアルテミスの矢だろうか。

 それを皮切りに月から降ってくる矢が大和を次々と貫こうとする。

 大和は必死に矢を弾き飛ばしながらも、さらなる殺気に飛びのいた。

 アレスの剛槍が先ほどまで大和がいた場所を貫いている。


 三対一、マズい、マズい。

 アポロンとアルテミスが天体に姿を変え、射撃を行うなど誰が想像できようか。

 

「釧灘!」

 勇美の声が聞こえる。あちらも戦っているようだ。

 ここで加勢に来られては、井上勇美も窮地になる。

「井上! 君はアテナを仕留めろ! 俺がアレスを仕留める!」

「ふん! やってみろ!」

 少年と軍神が切り結びながらも、援護射撃は止むことはない。


 限界まで、残り3分といったところか。

 大和は痛みにぼやけた思考で、残酷に戦力分析する。

 この三神と戦いながら勝つなど不可能。

 それならば、せめて井上勇美がアテナを倒すまで時間を稼ぐ。

 アレスに猛攻を仕掛け、アポロンとアルテミスの援護射撃をこちらに集中させる。

 

 しかし、その目論見も、踵を正確に射抜いたアルテミスの矢により危ういものとなる。

 それを見届けると、アレスは退いた。

 アポロンの熱線が地上ごと焼き払おうとしてくる。

 大和の体が吹き飛び、神殿の壁にはりつけになる。


「釧灘!」

 勇美の悲鳴が響く。

 それをかき消すように、アポロンとアルテミスの集中砲火が勇美の紫炎を貫く。

 勇美の紫炎は大和よりも防御力に秀でており、二神の攻撃を耐え抜く。

 だが、それでも多勢に無勢か。

 

 アレスの槍が大和の心臓を、アテナの盾が勇美の首を、それぞれ貫かんとする。




 なあ、ゼウス。

 この世界は美しいねえ。

 君達は伝承では人間の醜さにうんざりして、どこか遠い所に消えてしまったそうだけど。

 それでも私は人を美しいと思うんだ。

 もちろん、君達自身も。

 君達から連なっている人々の営みが、守る価値のあるものだと思うんだ。


 だから、消えないでいてくれてありがとう。



 ゼウスはうっすらと瞼を開ける。

 目の前には、涙を流しながら自分を殴る妻のすがたがあった。

「どうして、私だけを。どうして私だけを、愛してくれないの?」

 ゼウスの妻、ヘラは涙を流しながらゼウスの胸に縋りつく。

 ヘラはしばらくしくしくと泣いたあと、言葉を絞り出すように呟く。


「……私だって、緋沙奈を嫌いになんてなりたくなかったのに」

 その言葉に、ゼウスは胸が締め付けられる感覚をおぼえる。

 皆、仲が良かった。

 オリンポス十二柱神の誰もが赤羽緋沙奈のことを好きだった。

 ヘラと緋沙奈もまた、仲が良かった。

 それを壊したのは、自分だった。


 ゼウスはヘラに何か言葉をかけようとするが、どう言い繕っても何も変わらない。

 

「ヘラ。あの娘は……」

 ゼウスの躊躇を、ヘラは一刀両断する。

「殺さねばなりません。貴方も分かっているのでしょう」

 そう固い声で言われ、ぐうの音もでない。


 二人が黙っていると、咳払いをしつつ一人の神が近づいてくる。

「ああ、失礼。いちゃついてる所すみませーん。二つばかりご報告が」

 ヘルメスが兜を脱ぎながら、慇懃無礼(いんぎんぶれい)にお辞儀をする。

 この男もまた、ゼウスに対して思うところがあるのだろう。

 もともと従順なだけの男ではなかったが、最近では特にゼウスに対する敬意を感じなくなってきた。

 

 仕方がない。

 ヘルメスもまた、緋沙奈のことを気に入っていたから。

「何だ。申せ」

「陽美香の力がどんどん増してますね。いや、本当。僕らくらいの神気を纏っていますよ。」

 ヘラがゼウスの肩の肉を握りつぶし、抉る。

 激痛が襲うはずだが、ゼウスに動じた様子はない。


「もう一つは?」

「アレスからの報告ですが、侵入者の神殺しの少年と少女、ポセイドンを封じた少年の三人が消えました。

 本当に目の前から存在がなくなったように消えたそうです。あ、ついでにヘファイストスとアフロディテも」

「……姉上だな」

 ゼウスのつぶやきにヘラが夫の腹を激しく殴る。

 軽くない地震が起きたが、ゼウスとヘルメスは気にもとめない。


「まあいい、アポロンとアルテミス、アレスにアテナはそのまま哨戒させろ。どのみちあちらから来るだろう?」

「お、そうですか? じゃ、私は彼らに伝えてきます。お大事にー!」

 そう言ってヘルメスは神々一の瞬足で駆けて行った。

 ゼウスはただ傷の痛みを堪えつつ、暴れまわるヘラを押さえつけた。

  

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