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神殺しは銃で死ぬ  作者: 尾根末彦
第5章 龍
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龍脈

 食事も終わって、女子部屋にて、瞑想をしている勇美。


「お主ら付き合っておるのか? なあなあ」


 それを邪魔する龍神。

 井上勇美のこめかみに青筋が浮き上がる。


「付き合ってるんじゃないんすよ」

「でも好き合っておるのではないのか?」


 直截な言葉に、グっと言葉に詰まる。


「……色々あるんすよ。ここまで付き合い長いと、いうて6年位ですけど」

「短いのう、それで自分の作った縄で締められておってはかなり生きづらい」


 その言葉に、確かにと思ってしまう自分がいた。


「……どうすればいいんすかね」


 見た目は少女だか、実は千数百年を生きる神なのだと思い直し、問いを発する。


「人間の時間は短い。もっと単純に生きねばならんぞ」

「単純に」

「好いていれば好きという。尊いものは崇める。痛いことはやめる。美味しいものを食べる。何故簡単にできぬのか」


 千年以上生きた龍神の意見はシンプルだ。

 けれど、龍は目を伏せる。


「だが、それもまた、人間の美しさよな」

「……みくちゃん」


 勇美がみつめると、彼女は慈母の如き表情で勇美をみつめる。


「人間は時代を越えて美しいままだ、綺麗なものを作る、美しい営みをする。確かに醜い側面もあるがそれでも愛しく思うよ」


 そういう彼女は、まさに女神のごとき美しさだった。


「だから、自分の醜さもまた受け入れよ、そうすれば、よい風な方向へ開かれるだろう」


 自分の醜さを受け入れる。自分のトラウマを。

 瞬間、目の前の少女とあの日置いてきたもの達が重なる。


「みくちゃん……ありがとう」

「ふふ、皆愛しい我らの子だよ」


 そう言って笑いあったあと、突然のことだった。

 龍神が、その体をどす黒い瘴気で染め上げた。


「みくちゃん!!」


 思わず肩を抱きしめる。


「この呪い……。まさかこの国に……」


 昏倒する少女を横抱きにし、勇美は彼女を抱えた。


「どうよ、この歌は」


 ギターを抱え、ポーズを決める風雅に大和と雄大はパチパチと拍手する。


「いや、いい歌だよ。それが何で神楽になるのかわからんけど」

「いや、いい歌だったわ。それであの嬢ちゃんがパワーアップするのか?」


 大和と雄大は歌をとりあえず絶賛していた。

 訳とか理由とかは分からないが演奏のクオリティは非常に高かった。


「そりゃもう俺の歌聞いたらあの子に敵う存在なんてそれこそアマテラス位になりますよ」

「そんなにかい」

「良く分かんねえけど。じゃあすぐに」


 雄大がそう言おうとした所で、扉を開くバンという音がする。


「勇美? どうした?」

「急にみくちゃんが!」


 そのどす黒い瘴気に、雄大もたじろぐ。


「何だこの黒いの! ヤバそうだぜ」

「分からない。話をしてたら急に!」

「これは……昼間と同じだな。どこかから呪われている」

「な、どこから!」


 風雅はリュックサックから地図を取り出し、広げる。


「さっきの社は式神を貼っているから違う。だから、考えられるのは加賀の龍脈の中心」


 そして地図のある点を指さす。


「白山。おそらくそこに悪魔がいる」


 そう断言すると、風雅は言う。


「とにかく動きやすい服に着替えて、旅館の外へ!」

 

 数分後。

 再び加賀地方全域に大雨警報が出せれた。

 それほどの大雨が、まさかこの苦しむ少女から生み出されるとは誰も思うまい。


「お待たせ!」


 勇美が駐車場に走ってくると、風雅と大和も揃っていた。


「朱雀!」


 風雅が叫ぶと、炎の鳥が現れる。


「その嬢ちゃんも連れて行くのか?」

「もし暴れだしたら大惨事になります。一緒に連れて行きます」


 そう言うと四人で乗り込み、すぐさま飛び立った。


「気をつけていけよー!」


 雄大の声に三人は拳を振り上げて応えた。




 もはや嵐とかした世界を炎の鳥はかける。

  その背で風雅と勇美は話し合う。


「龍脈には守りとかないの?」

「普通は呪えないんだよ。そんな無茶苦茶な魔術行使すればみくちゃんなり神殺しなりが予兆できるはずだ」


 それに龍脈を守る神殿や霊獣もいたはずだが、それもおそらく一瞬で消されたと風雅は言う。


「じゃあ何でいきなり!」

「だから、気配もなく、瞬間的にこれほど大規模な魔術行使ができる相手ってことだ! 敵を見誤ってた!」


 勇美は泣きそうな顔で苦しむ少女を見やる。

 会話をしながら飛行すること数分。


「おい、あれ!」


 風雅が指さす方、巨大な山のさらに上、天空にまで貫かんばかりの巨大な塔が立っていた。

 瞬間、大和と勇美に力が漲る。


「ここいらは完全に異界化しているから、もう走った方が早いんじゃないか」


 勇美の疑問を風雅が手で制す。


「いや、何か来る」


 見ると、翼の生えた悪魔の大群が空を覆わんばかりに現れている。


「ありゃあ魔界に点在する塔の一つだ! 無尽蔵に魔界を覆う瘴気から低級悪魔を生み出す装置! あれを地上に出すなんて世界廃絶(せかいはいぜつ)級の魔術だぞ!」


 風雅は自分で言って戦慄する。

 あれをアマテラスに気取られないように瞬時に設置するなど、それこそ北欧の魔術神オーディン級の魔術使いでなくば不可能だ。


「どうでもいいだろ」


 先ほどまで瞑想していた釧灘大和が言葉を放つ。


「悪魔の範疇なら俺らでどうとでもなる」


 勇美と大和が首を鳴らしながら立ち上がる。


「待ってくれ! どんな悪魔かは知らないが、あの術法なら記録にあるから知っている!

 あれは確かに広範囲の魔術だけど、塔そのものが術の核だ! 当然相手もそれは知っているから守りも手厚い!」


 勇美が風雅を見つめていう。


「あれがあるから、この子は苦しんでいるんだな?」

「ああ! あれはその周囲を魔界に変える術式! 当然龍脈を奪われた土地神はあっと言う間に魔界に染まり存在を書き換えられる!


 ただ、呪いってのは上位種族には通じないから、水分神が呪われたってことは」


「神より強い存在ってことだろ。関係ないよ」

 

 神を殺せるから、神殺しなんだからな。

 瞬間、黒と紫の閃光が飛び立った。




 悪魔たちを踏み台にしながら、超音速で空をかける。

 それは、まさに隕石だった。

 超高速で降り立った井上勇美は、重力により加速した拳を塔の根本に叩きつけた。


 それだけで、塔を砕かんばかりの一撃だった。 

 だが、受け止められた。


 その拳は()()()()()()に受け止められた。


 それを見て、大和が割れんばかりの声を上げる。



「ル! シ! ファー!」



 瞬間、斬撃が塔を左右に両断した、そのまま倒れ伏す巨大な建造物。

 しかし、その男は片腕でその衝撃を受け止めた。

 にらみ合う両者、膠着は一瞬だった。


 ルシファーが生み出した障壁に弾かれ、大和の体が後方に特大の瓦礫をまき散らしながら吹き飛ばされた。

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