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神殺しは銃で死ぬ  作者: 尾根末彦
第4章 翠炎の双子
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殺戮の果てに平穏があるか

 それから、慌ただしく警察が踏み入ってきた。彼らが最初にやったのは蓮野小太郎の逮捕だった。

 しかし、彼の表情は和やかだったのが、なんとなく井上勇美の印象に残っている。


 静岡の華崎兄妹は、あの母親の地元である福岡に世話になるらしい。


 翌日のニュースには暴力団回生会と、金星教団の癒着。見つかった大量の人身売買の証拠と違法薬物というニュースに隠れ、建物の崩落や上がった火柱は忘れさられた。

 世間を騒がせた蓮野小太郎も同様の場所で逮捕されたが、少しの取り調べの上釈放された。


 なぜなら、彼が十三才であったからだ。

 日本の刑法では、十四歳以上でないと刑事訴追できない。

 だが、通常であれば少年院に措置されるなどの厳しい処分が為されるはずである。


 しかし現実は保護観察処分ということで釈放された。

 上層部に何か思惑があるのかはわからないが、少しもやもやとしたものを井上勇美は感じていた。


 釧灘大和は、「別に悪魔召喚するような暴力団を殺してくれたんだし、罪に問われないならそれでいい」などと言っていたが。

 そして、あの戦いから半月程が経った。




「やっほー、勇美ちゃん元気ー?」

「あー、元気元気」



 とにかく、華崎繚蘭(かざきりょうらん)井上勇美(いのうえいさみ)は、まあ友人と呼んでいい程度の仲にはなっているのだろう。

 そして、あの赤ん坊も。


「はーい、挨拶して」

「ねーちゃ、ねーちゃ」

「いや、デカくなりすぎじゃない?」


 半月ほどで、既に3歳前後に成長している。

 菖蒲色の肌と赤い髪はそのままで。


「大人しくていい子なんだけど、成長が早いわね。悪魔だからかしら」

「でも普通の人間にも見えるんだろ? 百%悪魔ってわけじゃない」

「そうね、一応悪い子ではないんだけど」

「ふーん、名前は?」

「はーい、自己紹介して」

「蓮野アミです!」


 外見年齢相当らしい愛らしい口調で話す。


「アミーだから?」

「そ、安直でしょ?」


 結局のところ、赤ん坊を生かした。

 あの場で殺すという選択を誰も下さなかったし、生かすという決定を誰もがした。

 その決定が吉とでるのか凶と出るのかは誰にも分からない。

 ひょっとしたら誰かを害することになるかもしれないが、その時は華崎兄妹がなんとかするだろう。


「お、繚蘭。誰と話してんの?」

「小太郎、勇美ちゃんよ」

「おー、井上さん。その節はどうも」


 小太郎はけろっとした顔で言う。とても数十人単位で人を殺した人間とは思えない。


「結局アンタら、兄妹と母親と五人で暮らしてんの?」

「そ、結局義妹の監視に霊能者がいないとダメだっつうんで。俺が防人ってことになるね」


「ふーん、まあ実力的には問題なさそうだけど」

「けど正直少年院送りは覚悟してたからな。肩透かしって感じだ」

「まあ、政府側も色々混乱はしたんだろうけどね。あんたが大人しくするってんなら、無理にとはならなかったんでしょう」

「お咎めなしってのも、違和感があるんだけどな」

「……義妹の世話をしろってことでしょ」

「そうだな」


 小太郎は目を伏せる。



「妹ができるって、楽しみにしてたんだ。まあ万々歳とはいかないが……良かったよ」

「……そうかい」


 そう言ったあとは、他愛ない話をして終わった。

 ヘッドホンを下ろし、後ろを振り向く。


「立ち聞きは趣味がわるいんじゃない? アマテラス」

「うふふ、なかがよさそうでなによりなにより」


 井上家の一室にいつの間にかいた神格は楽し気に笑う。


「アンタが色々動いたんだろ? どういう気紛れだ」

「うふふふふ、わたしはわるいことはしてないぞ。ただちょっとおもっただけじゃ。

 ははといもうとをすくおうとしたしょうねんにはたして()()があるのかどうか」

「あるのが法律だ」

「だが、それではつまらない」


 アマテラスはにっこりと笑う。邪気もなく。正義もない。


「じきにおおきななみがくる。のりてはおおければおおいほどよい」

「私らも乗り手か」

「そうそ、いそがしくなるぞ、いそがしく」


 そう笑って、すーっと消えていった。


「……大和。やっぱアマテラスに頼ったのは良くなかったのかもな」


 だが、遅い、もう漕ぎ出してしまったのだから。



 

 ボクシングの使い手二人を前に、小太郎は一人を片手で凌いでいく。


 一時間もさばき続け、双子は膝をつき、小太郎は息が切れた程度だ。


「よーし、休憩するか」

「……化けモンが」

「もうムリ―」


 双子が倒れ伏す。そして、小太郎は妹に近づく。


「亜美もやるか?」


 亜美はたどたどと庭木に括りつけられたサンドバッグに近づく。

 そのまま軽くたたくと、ドスンという音とともにサンドバッグが跳ね上がった。


「ああ、加減を覚えないと公園デビューはできないな」

「まず肌の色をどうにかしないといけないだろ」

「ううん、どうすっかな。まあ時期が来たら考えるか」


 そう呟くと、小太郎はサンドバッグに近づく。

 殴りつけると、チェーンが千切れて、飛んで行った。

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