ガープとアミー
ガープに対し、華崎兄妹は素早いラッシュで瞬間移動する隙を与えない。
フック、アッパー、ジャブ、打ち下ろしの右。
しかし、赤ん坊の泣き声で攻撃が止まる。
ガープは赤ん坊を盾にしたのだ。
「悪魔がてめえ!」
「ホント! 性格悪い!」
そう言いながら、フットワークを使い懐に潜りこむ。
赤子は泣きながら、炎を巻き上げる。
レーザービームのような高出力の炎が吹き荒れる。
それを華崎兄妹と大和は倒れこむように回避する。
だが、井上勇美は動じない。
「所詮異能だ! 食らってもどうってことない!」
「それは井上だけだ」
そう言うと、大和は袈裟斬りにガープに斬りかかる。
ガープは瞬間移動しようとするが、隆盛は殴り合いながら翠炎を巻き上げ妨害する。
その隙に、井上勇美が飛び込んで赤ん坊をキャッチした。
「処刑するなら、首を落とさねえとな」
ガープに対し、両側から翠炎の双子に挟み撃ちにされながら、大悪魔の頭が宙を舞う。
悪魔の瞳がそのとき、ギラりとこの世ならざる色に切り替わる。
その瞬間、井上勇美に抱き上げられた赤ん坊に異変が起こる。
「この! 悪魔野郎!」
「? どうした?」
「こいつ、最後に、自分の力をこの子に! やべえ!」
赤ん坊がおぎゃあおぎゃあと泣きながら、その体が変質する。
菖蒲色の肌に燃える炎のような赤い髪をした女の子は5歳前後にまで成長していた。
そして燃え盛る爆発を幻視するほどの高熱。
この辺りを吹き飛ばす程の威力だと察した。
「おい、ヤバいんじゃねえのか」
「熱い! 華崎兄妹! 三方向に!」
意図を察したのか、2人は勇美とともに赤子を取り囲むように移動する。
そして、魔界の炎が吹き荒れる。
それを紫炎と翠炎が防ぎ後ろには行かせない。
だが、吹き荒れる奔流は火柱となって、上空を雲まで突っ切るほどに燃え上がった。
そして、静寂が辺りを包む、パトカーのサイレンが耳朶を叩いた。
女の子はいつの間にか赤子の姿になり、ぐっすりと眠っていた。
「おーい、大丈夫か」
見ると、小太郎と意識を取り戻したらしい母親が立っていた。
「私の赤ちゃん!」
まるでひったくるように赤ん坊を受け取り、泣き崩れる。
そのまま縋りつくように、赤子にほおずりする。
赤子は不思議そうに、女性の頬に手を伸ばした。
「なあ、妹はどうなると思う?」
「……私には分からん。こうしてみると、普通の赤ん坊だが」
上空を見上げると、雲がまるで円形上に切り取られたように明るい星空だった。どこかで豪雨かもしれない。
「おーい、おにいちゃんですよー」
「にーちゃん」
その赤ん坊の返答に、辺りの空気が凍り付く。
言葉をしゃべるのは早くて9~10カ月であり、生後まもなくでここまで闊達な反応をすることはありえない。
それを知識として知っていなくても、生まれたての赤ん坊が話すとはなかなか考えづらい。
けれども。
「お母さんよ、私お母さん」
「お母さん!」
赤子がそう言って感極まったように抱きしめる母親を見て、無粋な言葉を言うのは躊躇われた。
「ん? あれ、大和は?」
「あれ、そういやどこか行ったわね」
「小太郎はどうすんだよ」
「ああ、とりあえず警察に出頭するわ。しかし骨が折れたぜ」
小太郎はそう言うと、鎖鎌をその辺りの地面に置く。
「まあ、目的は達したからな。親父の仇もほとんど仕留めただろうし」
そう言って優しい瞳で赤子と母親を見る。
「なら、俺も付いて行こうか」
「お兄ちゃん?」
隆盛は小太郎の目を見て言う。
「どうせ、俺も防人が入院して静岡にはしばらくいられないしな。どのみちその子に霊能者の監視なしでいさせられるとは思えねえし」
「じゃあ、私もついてくー」
「……まあ、細かいことはおいおいで」
勇美がそう言うと、疲れたように少年少女たちは腰を下ろした。
「あ、連絡先交換しようぜ。ふるふるしよふるふる」
そう言う小太郎に、全員の肩の力が抜けた。
近くの下水道で、満身創痍の悪魔と大和が対峙する。
「興元さんのいう通りだ。俺の刀でも悪魔を一撃とはいかないらしい」
そう言うと、すらりと抜刀し刀を突きつける。
「残す言葉は?」
その問に悪魔が笑う。
「あれには、私の全ての権能とアミーの権能が入っている。直に面白いことになる」
「ふーん、まあ、興味もねえ」
そう言って、悪魔の残骸に刀を突き立てた。




