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神殺しは銃で死ぬ  作者: 尾根末彦
第4章 翠炎の双子
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合流とガープ襲来

 スイッチを落とす。

 京間はよくそう言って、隆盛と繚蘭に指導した。

 人間は意識のあるなしで防御力が変わってくる。

 意識外の攻撃を急所に叩き込めば、体格関係なく人は意識を失う。


 そのタイミングを認識しろ。


 そう言って、京間は双子に、生け捕りした信奉者を向かわせた。

 二人は構える。

 回想は終わり、時間軸は現在に戻る。


 井上勇美が男に奇襲するよりも早く、華崎繚蘭は男の真横から右ストレートを顎に向けて撃った。

 まるで糸が切れた人形のように倒れ伏す男を見て、勇美は感嘆の声を上げる。


「ボクシングか」

「ええ。まあ私は見ての通り非力だけど」


 スイッチが見えるのよ。


 そう言って、いっそ蠱惑的なまでの笑顔を勇美に向ける。

 勇美が呆けていると、繚蘭は何かを察して振り返る。


「行こう。お兄ちゃんが来てる」


 霊能者は、お互いの気配を察知できる。

 彼女もそうなのだろう。


「え? 大丈夫なのか」

「うん、お兄ちゃんは強いもの。合流しましょう」

「ああ、その前に、この本だけ持って行こう」


 魔術書を持ち、少女たちは地上を目指す。


 一方。


 小太郎は三角飛びの要領で壁を登り、男達の背後に回る。


「おい! 妹さんこっちであってんだろうな!?」


 銃で武装した男達の首を鎌で切り裂きながら、小太郎は一切の慈悲なく駆ける。


「わからん! どこかに地下への階段があるはずだ!」


 銃をベルトにさしながら、隆盛は焦ったように叫ぶ。


「おい、間違っても撃つなよ。切りがなくなっちまう」

「わかってる」


 近くにいた教団員の顎を拳で砕き、突き進む。


「おい、階段はどこだ」

「あ、あっちだ」


 怖気づいた男を殴り飛ばし、小太郎は呼ばれた方に進む。

 地下への階段が見えた、見張りが二人。


「あ。こんちわーす」


 小太郎がにこやかに男に声をかける。


「何だて、」


 言い切る前に、男の喉に鎌が刺さる。


 もう一人の男があたふたしている内に、隆盛は豹のように俊敏に男との距離を詰める。

 そのまま側頭部に右フックを一撃、悶絶する男の顎にアッパーカットで仕留めた。


「はは、やるねえ」

「繚蘭!」


 そこにいたのは、背の高い少女達だった。


「繚蘭! 何もされていないか?」

「お兄ちゃん怪我はない!?」


 二人は抱き合いながら互いの無事を確認する。

 小太郎はその二人を微笑ましげに見ながら、もう一人の少女、勇美に目を向ける。


「友達?」

「ああ、まあ、あんたは」

「俺蓮野小太郎! おたくは?」

「……井上勇美」


 そう言うと、勇美は小太郎に右手を差し出す。


「その本なんなの?」

「ああ、魔導書ってやつだけど。あんた何者?」


 井上勇美は握手から、彼があの少年と同じような常軌を逸した訓練をしていると看過した。


「別に、ただの中学生なんだけどね」


 そう答えながら、小太郎は後ろに向かって何かを投擲する。

 それは、分銅だった。

 真っ直ぐに駆け寄ってきた男の眉間に打ち込まれ、転倒する。

 さらに、もう一人男が懐から拳銃を取り出そうとするところ、勇美が壁伝いに走り飛びかかり、後ろ回し蹴りを頭に叩き込む。


 小太郎はその様を見て、雷に打たれたような感覚を覚えた。

 だが、すぐ様に己を取り戻す。


「とりあえず来た道を戻ってお嬢さん達を脱出させろ、んで通報しろ」


 小太郎は三人に指示を出す。


「何であんたが仕切るのさ」

「そりゃあ俺が一番強いからだよ勇美ちゃん」


 おどけたように笑う小太郎にため息をつく。


「あ、ちなみに30歳位の女の人見なかった?」

「ああ、私らが囚われた所にいるかもしれない」

「そっか、そこだけ教えてくれ」


「義母さんかもしれないんだよ」


 そう言うと、三人の表情はこわばる。


「先に言えよ水臭い。俺も協力する」

「いや、それより警察を呼んでくれ。流石に人質を取られると不味いからな」

「警察なら来てる」


 勇美が小太郎の目を見据えていう。


「釧灘……。私の相棒の霊能者が車でこっちに来てる。多分警察も一緒だ」


 霊能者同士は互いの場所を感知できる。大和程の力を持つ霊能者なら数十キロ先からも感知出来る。


「あと数分でこっちに来る。大捕物になる前に確保した方がいい」

「……分かった。案内してくれ」


 移動しながら情報を交換する。


「そのガープって悪魔は危ないな」

「ええ、私たちの防人もそいつにやられた」

「瞬間移動なんざどうしようもない。よしついた」


 女性達のロープを切り解放していく。


「静かに、落ち着いてください。蓮野、あなたのお母さんは?」

「ああ、ここにはいない」


 そう言われ、勇美はしばし目をつむる。


「一階の中央、異能の気配がする」


 ひょっとしたらそこかもな。

 そう言った時、勇美は紫炎を巻き上げ、後ろ回し蹴りを放つ。

 衝撃が、華崎兄妹の前髪をかきあげる。

 小太郎はその奇妙な光景に目を丸くする。


「とりあえず魔導士連中はこれで何とかなった筈。儀式場に行こう」


 そう言って、勇美を先頭に彼らは儀式場へ向かった。

 

「まだつかないんですか」


 パトカーに乗りながら、釧灘大和は井上雄大に毒つく。

 その肩を巨漢の刑事は抱き留めた。


「焦るな。勇美はこっちなんだな」

「ああ、他にも霊能者が二人います」

「敵か?」

「いや、どうも友好的です」

「だったら静岡の華崎兄妹だな。静岡から連れ去られたそうだ」


 その言葉に、大和は眉をひそめる。


「3人いれば大丈夫だろうが、様子から拘束されてるわけではなさそうです」

「そうか、とにかく急ごう」


 会話が打ち切られると、大和は黒刀を虚空から出現させる。


「すいません、ちょっと」


 大和は不完全な態勢ながらも居合斬りを放つ。


「何だ?」

「……大物の悪魔です。それも実体化している」


 雄大が窓から身を乗り出すと、確かにはるか上空に異形が鎮座していた。


「一旦止めてください。俺が相手します」

「……分かった。気を付けろ」


 そう言うと、少年と大悪魔が睨みあう。

 上空、おそらく百五十メートル程度。

 釧灘大和の斬撃が間違いなく届く距離だ。


 そこで、人間の姿に悪魔の羽が生えた男性は右手を上げる。

 瞬間、彼の目の前に現れたのは、直径30メートル程の岩盤だった。

 そのまま重力に従い、落下していく。


 釧灘大和が今までいた場所を、巨大な岩盤が押しつぶした。

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