表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神殺しは銃で死ぬ  作者: 尾根末彦
第4章 翠炎の双子
23/90

炎の共闘

 勇美(いさみ)繚蘭(りょうらん)は、二人揃って倉庫から出た。

 女性達は置いていくしかない。苦渋の決断だった。


「金星教団め、最後の足掻きだな」

「金星教団って、四月のフルフル騒ぎの?」


 勇美のぼやきに繚蘭が返す。


「ああ、私たちが関わって半月ばかり経つが、そろそろ一斉検挙って時に、あいつら私を浚いやがった」

「そう、けど何で静岡くんだりまで来たのかしら。回生会と何か関わりがあるのかしら」

「……まあいい、それは警察の仕事だ。私たちはとっとと脱出しよう」


 そういって、勇美達は地下道を登っていく。どうやら倉庫だと思っていた場所は地下にあったようだ。


「中の様子、覚えてる?」

「うん、一階からすぐに下に行ったよね。だから駆け上がれればすぐなんだけど」

「あいつら見張りしてるかな」


 そんな話声に、二人はビクリと肩を震わせる。


「どうせたのしんでるんじゃねえのか」

「だよなあ、くそ、今からでもさぼっちまおうか」

「やめとけ、あいつみたいになりたくないだろ」

「……くそ、何だってこんな目に、若頭もどうしたってんだか」


 二人は、ため息をついている。


「……離れよう」 

「……ちょっと待って」


 勇美に対し、繚蘭が制止する。


「お前たち」


 その声にビクリと反応するも、すぐに自分じゃないと気付く。


「わ、若頭」


 若頭と呼ばれた男は180センチ程度で、趣味の悪い派手なスーツの男だった。


「お前たち、お愉しみもいいが、くれぐれも逃がさんように頼むぞ」

「え、ええ」

「もし逃がしたら、エンコではすまさん」


 その、ヤクザというだけでない底知れぬ気配の男達はたじろぐ。


「は、はい」

「まあ、ここ以外に出入口はないはずだがな」


 そういって若頭は去っていった。


「どうしよう」


 繚蘭が勇美に問う。


「とりあえず調べてみよう」


 二人は地下を戻った。




 青い乗用車が、教会の前に進んでいた。


「正面には見張りが何人もいるな」

「な、なあ助けてく」

「黙ってな。裏口に回れ」


 男を鎌で脅し、小太郎は指示する。


「繚蘭……!」

「……しかし、悪魔ね、正直眉唾だと思ったが、そんなのもいるとはな。

 どおりで九州のヤクザが人身売買をしているはずだぜ。

 おおかた、教団の言う生贄に使っていたんだろうさ」


 小太郎の父は常々、ヤクザと対立していた。

 しかし、その裏にまさか悪魔召喚などという奇怪な魔術的事象が絡んでいると誰が予想できようか。


「お前さんも食われるところだったわけだ」

「ああ、命の恩人だよ、本当に」


 隆盛は真面目に言うが、小太郎はあえて笑って受け流す。


「お、裏口は5人ってところか、これならいけるぜ」

「どうするんだ」

「俺は忍者だっつったろ?」


 隆盛の問いかけに、小太郎は満面の笑みで返した。




 小太郎と隆盛は荷物を持って堂々と近づいた。


「おーい、生贄持ってきました」

「ああ? 聞いてないがな」

「いやあ、こいつ金返さねえもんで、もちろん天涯孤独ですよ」


 荷物が暴れるのを無視し、余りにも自然体に応答する。


「ふん、どうやら今日儀式を行うようだから、ついでに処分してやろう」

「あざっす! ちなみに今日何人位が生贄に?」

「大体三十人ってところだなあ」

「ありがとうございます! あ、重いんで運びますよ」

「おお、ありがとう。ところで、お前ら随分若いな」


 見張りの一人が剣吞な表情で尋ねる。


「見習いなんすよ」


「ふーん」


 何か思いついたように男はごそごそと懐から何かを探る。

 隆盛が懐から銃を取り出そうとするのを手で制す。


「これ、うちの教団のパンフレットな、気が向いたらミサにでも来るといい」

「あざーす!」


 そういって、小太郎と隆盛は男を担いで中に入っていく。


「……ザルかよ」

 男達から十分離れた所で、隆盛はあきれたように呟く。


「んな練度の高い連中かよ。訓練もされてなければマニュアルすらないだろうぜ」


 小太郎はあっけらかんと笑い、扉を開けた。

 隆盛もまた、それに続いた。

 屋内に入ると、一息つく。そして、小太郎はビラをなんとはなしに目を通そうとし、急な眩暈に襲われた。


「何だこりゃあ」


 まるで、自分が無理やりに作り替えられていくような、気味の悪い感覚に襲われる。


「……あまり見るな」


 隆盛がビラを受け取ると、それは翠色の炎によって燃え尽きた。

 そのこの世の色ではありえない炎を小太郎は目を丸くして見つめる。


「俺の炎が通じるってことは、異能の力を込めて作られているってことだ」

「……するってえと、何か? こいつらこのビラばら撒いて」

「無理やり洗脳しているってことだな」


 隆盛がもたらす答えに、小太郎は眉をしかめる。


「そりゃあ、ぞっとしねえ話だな」

「ああ、だが、これではっきりした。繚蘭はここにいる」

「ああ、お前の妹さんを助けようぜ」


 そういって小太郎は笑った。

 隆盛も、口元を緩めた。

 


 一方そのころ、繚蘭と勇美は地下にある図書室にいた。

 二人の目の前には、一冊の本があった。


 ふせんが張ってあるその本は、古今東西の悪魔の召喚方法が載っているゴエディアの写本だろう。

 特に執拗に付箋やメモ書きが書き込まれているそのページにはガープの召喚方法が記載されていた。

 総裁ガープ。地獄の序列三十三番にして、過去、現在、未来を見通し、瞬間移動の権能を持つ大悪魔。

 現在一般に流通しているゴエディアと違うのは、その悪魔の召喚に必要な生贄の量まで正確に記されていること。

 その召喚に必要なものは、二つ爪の蝙蝠、マンドラゴラの粉末、聖廟、そして。


「人間の生き血、20人分」

「……止めないと」


 勇美は震える声で言うが、繚蘭は首を振る。


「……もう、召喚済みよ。私たちの防人は、その悪魔に倒された」

「……クソ」


 勇美はさらに本を読み進める。

 そこで、同じほどに書き込まれたページを発見する。

 そこに書かれた悪魔は、アミー。

 炎の悪魔であり、隠された財宝を見つける力を持つ。


「……お金儲けでもしたいのかしら」

「費用対効果に合わない気もするな。一体何が目的なのか」


 単純に考えて、これだけ大掛かりな悪魔召喚をするにはそれ相応のリスクを負うはずである。

 現代日本で人一人を消すことにかかる費用はバカにならない。

 勇美は、これだけの大掛かりなことをしでかすに足る理由は、ただの金儲けではない気がした。


 その時、人の気配がして、二人は本棚の影に身を隠した。

 勇美は本棚の影から炎を巻き上げるが、男は動じた様子はない。


(常人かよ。まずいな)


 勇美と繚蘭は息を潜め、機を伺った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ