蒼い空
俺は、苗村と別れ綺道と家を目指した。
「ねぇ竜胆」
「ん?何?」
「今日は楽しかったね」
「ああ、そうだな・・・感謝してる」
「え?なんで?」
「あれだけ楽しかったのもお前たちと出会えたからだからな」
俺は、恥ずかしい台詞を平気で喋っていた。言った後自分の顔が熱っぽくなったのを感じた。
「フフフ、私もだよ」
そう言うと俺に強く抱きついてきた。
「うわ!いきなり抱きつくな!危ない!」
「あわわわ、ごめんつい」
ふらついて、なんとか体勢を立て直して二人で顔を見合わせて
「「アハハハハハ」」
もうこいつの天然も楽しく感じる。俺はこいつのこと受け入れてる証拠なのかもしれない。
「なぁ、借りたアパートってどこだ?」
「もうすぐ見えるよー。あ!あそこ!」
綺道が指差したところに最近できたんだろう、綺麗なアパートがあった。ここに一人暮らしか・・・少し羨ましい。というか俺の家の近くなのに全然気づかなかった。俺が良く通る道とは大きく離れていたから気づかなかっただけなのかもしれないけど。
「こんなところにこんなアパートあったんだな」
「うん、お茶していく?」
「そうだな・・・いいぞ、今日はフリーだからな」
「ちょっと引越しの荷物で片付いてないけど気にしないでね」
「なんなら手伝おうか?戸棚とかは一人じゃきついだろ?」
「ううん、自分でやるからいいよ」
「そうか?無理するなよ?」
「・・・・本当に無理そうなら頼もうかな?」
「ああ、任せろ!」
俺は、笑いながら言った。
そうこうしてると、綺道のアパートに着いた。
「そこの駐輪所に自転車置いてくれたらいいから」
綺道は、駐輪所らしきところを指差して言った。
「了解、あそこだな」
綺道の部屋は大きくて住もうと思えば三人で快適に過ごせそうな広さだった。さすがはお嬢様と言ったところか。
俺は荷物の無く整えられた机の上に腰を下ろした。
女性の部屋・・・初めて入った。妙にムズムズする。
部屋を挙動不審にキョロキョロ見渡してると紅茶を入れて綺道が戻ってきた。
「どう?私の部屋綺麗でしょ?」
「ああ、学生が住むには綺麗だし何より広い・・・・黒崎や徳山が見たら羨ましがるだろうな」
「パパが一人暮らしするならこれくらい広いほうがいいって、借りちゃったんだよね」
綺道は苦笑いをしながら言った。
「そうか・・・その割には荷物少ないな」
「うん、いる物といらない物で分けたらこれだけになっちゃって」
「一人暮らしをするならまぁそうだろうな」
「フフフ」
テーブルに向かい合って座ってる綺道が笑い出した。
「なんだよ急に?」
「ウフフフ、実はこっちに来てお客さん第一号なんだよ竜胆」
「そうなのか。で、何が嬉しいんだ?」
「そんなの好きな人が最初のお客さんだったら嬉しいに決まってるじゃない」
「ふむ」
俺は紅茶を飲みながら頷いた。
「しかし、綺道よ」
「何?」
「一応、俺は男だぞ?」
「そんなのわかってるよ?」
「男が最初のお客さんで喜んでるって俺がお前に何もしないと思ってるのか?」
「・・・んー、竜胆ならそれはないと信じてるから大丈夫」
本当にこいつは馬鹿なのか天然なのかわからなくなるな。そこがかわいいのだが
「信用されてるんだな」
「好きな人を信用しないで誰を信用するの?」
「ふむ」
「それに・・・竜胆なら・・・」
頬を染めて綺道が言った。誘っているのかな?
「・・・・そうか」
俺は立ち上がって綺道の前に行った。
「え?」
誘っといてこういうこと言われると恥ずかしいらしい。
「綺道・・・安心しろ。何もしないから」
俺は、綺道のでこを人差し指でツンと押して元の場所に戻った。
「それに、恋人でもないのにそんな関係になる気はないよ」
「・・・ちょっと残念」
顔を真っ赤にしながら綺道は言った。本当にしたらどんな反応をするのやら。
そこから俺と綺道は他愛もない会話をしていた。時間も午後十時これ以上長居するのはわるいと思い、俺は、帰ることにした。
「長居しちゃったな。綺道、今日は楽しかったよ」
「ううん、竜胆とたくさん話せて私も楽しかったよ」
「んじゃー、また明日」
「うん、また明日」
綺道は玄関の前まで送ってくれた。なんだか歯がゆい気分になったけど俺は嬉しかった。
その後、家に帰って母さんや吉城達に色々聞かれたけど、友達と遊んでたとだけ言っておいた。吉城や洋二は恋人のところでイチャイチャしてたんだろ?って言ってきたが「ねぇよ」と一言言って部屋に戻った。
今日は疲れた・・・けど、今でも心が暖かかった。今までの人生で一番暖かいかもしれない。
次の日
今日は昨日のはっちゃけすぎて起きるのがしんどかった。けど、授業は昼からだしそれも一限だけだからまだのんびりしていられる。授業が終わればその後はバイト・・・体を休ませておきたかった。そう思って二度寝しようと布団を潜った時ドアが開いた。
「真ちゃん、真ちゃん」
母さんが部屋に入ってきた。
「何?俺に何か用?」
俺は寝ぼけ眼で母さんを見た。
「昨日の子、今日も来てるわよ?」
「はい?」
「ほら、女の子を待たせるものじゃないわよ。早く着替えて迎えに行きなさい」
あれ?なんで?
「はいはい、今着替えるから綺道にもう少し待ってて伝えておいて」
「あの子、綺道ちゃんって言うのね」
そういえば母さんにあいつの名前教えてなかったな。洋二が騒いでた時、テレビ見てたから聞いてなかったのかな。
「そんなことより、早く着替えなさいよ」
「はいはい」
俺は、ボーッとした頭で起き上がるといつも通りの服に着替えて玄関に向かった。
「竜胆おそーい!」
「・・・あれ?今日はどうした?」
「早く行かないと一限目始まっちゃうよ!」
「ちょっと待て・・・今日は俺授業昼からだぞ?」
「あれ?同じ授業取ってなかったけ?」
「取ってないよ。それに全部お前と一緒なわけないだろ」
「そうだけどー」
どうしても俺と行きたいらしい。仕方ない。
「はぁー、そこで待ってろ。今準備してくる」
「え?行ってくれるの!」
「・・・・」
俺は無言で部屋に戻り勉強道具をカバンに入れて外に出た。
「ほら、行くぞ!」
俺は自転車に乗って綺道を後ろに乗るよう言った。
「うん、ありがとう竜胆」
「・・・今日は重いな」
「え?どういうこと?」
「今日はペダルが重い・・・何か重たいもの入れたか?」
「それはたぶん、英語の辞書と六法を入れてるからじゃないかな?」
「・・・おい、まさか。今日の朝の授業って」
「うん、英語の授業だよ」
俺が一番苦手としてる科目・・・すごく受けたくない・・・
「あ、前々!竜胆!車」
「え?あ!おっと!」
車をギリギリで避けた。荷物が重い性かフラフラしていたからぶつかりかけた。もっと筋肉つけたほうがいいかな?
「危ないなー、ちゃんと運転しないと大事なお弁当がこぼれちゃうよ!」
「え?お弁当?」
「うん、この前は食べてくれなかったから今日こそはって思って作ったんだけど」
「そうか・・・すまんな。この前は、みんながいて気恥ずかしくてな」
「だと思った。大丈夫、今日英語の授業は私しか取ってないし、それにみんな昼から来るだろうし」
「そうか。ならありがたく、その弁当いただこうかな?今日は朝飯食べてないし。弁当も持ってきてないからな」
「ほんと!やった!」
「楽しみにしてるよ」
今日の昼が楽しみだと思った。しかし、英語の授業か・・・あんまり得意じゃないんだけどな。まぁ、いいさ綺道が笑顔でいてくれるなら。
英語の授業はそこまで難しくは無かったけど、辞書が手元に無いと訳が大変だった。綺道の辞書を借りて何とかという感じだった。綺道は全然わからなかったようで俺がちょくちょく問題の訳し方を教えていた。徳山の言うとおり勉強は出来るほうではないらしい。
「うぅー・・・もうクラクラだよー」
授業が終わって机に綺道は伏せた。
「そうか?わかりやすかったぞ?あの先生の教え方」
「竜胆の頭いいだけだよー」
「単語を覚えろ綺道。そうすれば少しは楽になるから」
「覚えられないの!」
「なら今度、俺が教えてやるよ。あんまり得意じゃないから期待するなよ」
「え、本当!」
「ああ、家の近くに引っ越してきたんだから教えに行くのは簡単だだしな」
「なら今日来てよ!」
「今日はバイトだから・・・今度の日曜なら空いてるからその時にでも教えてやるよ。もうじき試験だしな」
「ありがとう!竜胆大好き!」
そういうと綺道が俺に抱きついてきた。
「お、おい、辞めろ恥ずかしい!」
「いいじゃない」
俺は、綺道の体を離す為に肩を持って押した。
「顔真っ赤にしちゃってかわいいー」
「早く離れないと怒るぞ!」
「そんなことで怒らないでよー」
そういうとしぶしぶ綺道は俺から離れた。
「たく、・・・はぁー、いつまでも教室にいてもあれだから行くぞ」
「あ、ほんとだ!みんな帰ちゃってる」
こいつが机に伏せた時点でもうほとんど帰ってたよ。
「ほら、片付けて。置いていくぞ」
「あ、待って今行くから!」
俺と綺道は、人気の無いところに来て座った。
「ねぇ、なんで人気の無いところに来たの?」
「お前の弁当をもらうのが恥ずかしいから」
「みんな見てないのに?」
「それでも恥ずかしいんだよ!」
「ウフフフ、かわいいー」
「そんなことより弁当」
「はいはい。今日は、から揚げ弁当だよ」
この前、持って来た弁当より少し大きめの弁当箱だった。
「今日のは大きいんだな」
「竜胆はたくさん食べるって徳山君に聞いたから」
「そうか」
俺はそういうと弁当箱を開けた。中は弁当箱に半分のご飯に一口くらいのから揚げが四個にコーンサラダ、里芋の煮っ転がしとという感じの弁当だった。
「ふむ、美味そうだな」
「フフーン、今日は自信作だからご堪能あれー」
笑顔で言った。本当に自信作らしい。
「どれどれ・・・ふむ」
美味しかった。橘が絶品と言ったのが頷けた。母さんが作る唐揚げの何倍も美味かった。
「どう?」
「ああ、美味い・・・これだけうまいの初めて食べた」
「やった!頑張ったかいがあるよ」
「綺道っていい嫁になりそうだな」
「え?そっそんなことないよ」
綺道が顔を真っ赤にしてうつむいた。こういう姿もかわいいもんだな。
弁当はすぐに空になった。本当に美味しかった。こういう嫁をもらうと食事が楽しみになりそうだ。
「綺道、ご馳走様。あれ?」
綺道は箸が進んでなかった。半分も食べてない。それにボーッとしてる。
「おーい、綺道?」
俺が綺道の肩を触ると「わっ!」と言ってこっちを見た。
「大丈夫か?ボーッとして」
「だっ大丈夫!ちょっとボーッとしてただけだから」
変な奴だな。ボーッとして
「・・・熱もあるみたいだな」
おでこに手を当てると熱かった。
「だっ大丈夫だから!気にしないで!」
「それならいいけど、しんどかったら言えよ」
「うん・・・鈍感」
「何が?」
「もういい!」
今日は、特に変だな?何かあったのかな?
「しかし、英語の授業とは、俺二回の時に全部終わらせたのに」
「だって、英語苦手なんだもん」
「俺も苦手だけど取ったぞ?」
「どうせ、私は頭悪いですよーだ!」
「そう怒るな。苦手だけどお前に教えてやるよ」
「ちゃんと教えてくれないと怒るからね!」
そう言うと頬を膨らませて拗ねた。
「大丈夫、付ききっりで教えるんだ。適当にはしないよ」
「約束だよ!」
「ああ」
そう言って俺は綺道の頭撫でた。
「さて、次の授業あるし移動するか」
「うん、そういえば竜胆は授業あるんだよね?」
「ああ、そうだけど綺道は何か授業あるのか?」
「うん、たぶん同じ授業じゃないと思うけど」
「そうか、ならここで一度解散だな」
「うん、またね」
「ああ、また」
そう言って俺は綺道と分かれた。
その後、教室に行った。少し来るのが早かったようで誰もいなかった。
「・・・まいったな。誰も来てないのか。どうしよう?」
そんなことを考えていたら苗村が来た。
こいつはいつもメンバーの中で一番早く授業に来る。俺はどうしてもゆっくりしすぎていつも時間ギリギリに来るのに
「よう、苗村」
「おや?真、今日はかなり早いみたいだけどどうしたんだ?」
「んー、ちょっとな」
「ほう・・・どうせ綺道さんに連れてこられたんだろ?」
「さぁーて、どうでしょう?」
「お前が気まぐれで早く来るわけないだろ?」
ちょっと反論できなかった。大学三年間で苗村より早く来たことなんて指で数えれるぐらいだったからだ。
「まぁ、正解だよ。いきなり朝来られてな」
「だろうと思ったよ。で、その綺道さんは?」
「別の授業があるらしくそっちの方に行ったよ」
「へぇー、しかし、最初はうっとしがってたのに今では仲いいんだな」
「そりゃーあいつはいい奴だからな」
「それだけか?」
「ん?それだけだけど?」
「まぁ、真がそう言うならそれでいいけど」
それだけ言って苗村は授業の準備をした。
その後、徳山や黒崎が来て俺が早く来てるのを見て明日は猛吹雪だなと言って俺をからかった。その後普通に授業を受けて綺道達と合流した。軽く雑談をしてバイトに向かった。
日曜日
なんだかんだで日曜日はあっという間に来た。俺は綺道の家に向かうべく準備をして家を出た。なんだろう?ワクワクして行くのが楽しみだった。
綺道の家にアパートに着くと怒鳴り声が聞こえた。聞き覚えのある声・・・だけど、思い出せない。それも綺道の部屋から聞こえる。
「なんで、僕がここまで愛してるのに君はそれに答えてくれないんだ!」
ん?なんだ?
「なんで僕の思い通りになってくれない!僕といれば幸せになれるというのに!あんなろくでもない男と付き合うなんてどういうことだ!」
何を言ってる?
「どうしても僕の物になる気にはないんだな!」
綺道が何か危ない目にあってる気がして俺は綺道の部屋に入った。そこで俺は綺道の首を絞めている斉藤を見た。
「君が悪いんだ・・・全部全部・・・」
「あ・・・が・・・うう・・・」
必死に斉藤の腕から逃れようと腕に爪を立てていた。
俺はその姿を見て、言葉より先に斉藤の頭を蹴り飛ばしていた。
斉藤は不意に蹴られて壁のほうに転がって行った。
「・・・おい、斉藤・・・綺道に何をしている?」
「痛い・・・痛い・・・」
斉藤は頭を抑えて痛みに耐えていた。
「おい・・・聞いてるのか?・・・おい斉藤・・・」
俺の中で斉藤に対する殺意で一杯だった。
「庶民が・・・僕を・・・僕を・・・」
「・・・そんなこと、どうでもいい!何をしていると聞いてる」
「僕を・・・僕を・・・」
「どうでもいいと言ってるだろうが!」
俺は斉藤の腹を蹴り、頭を踏んづけた。
「聞いてるのか?おい・・・」
俺は何をしてるのだろうか?わからない、けど今のこいつを許しておくことは出来なかった。
「痛い痛い・・・」
「竜胆辞めて!」
綺道が俺を止めようと掴みかかって来た。
「綺道?・・・」
俺は綺道の言葉に我に返った。
「え?あ、綺道・・・すまん」
俺は斉藤の頭から足をどけた。
「私は大丈夫だから・・・これ以上はしないで・・・」
綺道の目に涙が溜まってるのがわかった。なんでこいつを庇うのだろうか?自分を殺そうとしたのに・・・。
「ハァハァ・・・斉藤・・・出て行け」
「ゲホゴホ・・・庶民が・・・つっ・・・僕に・・・はぁ・・・指図・・・」
「早く出て行け!今度は殺すぞ!」
俺は斉藤を睨みつけながら怒鳴った。
「ひぃ!」
少し、悲鳴を上げると部屋をダッシュで出て行った。
「綺道、大丈夫か?」
俺は綺道の体を見ながら言った。
「私は大丈夫・・・竜胆が助けてくれたから」
「そうか・・・よかった・・・・」
俺はそう言うと綺道を抱きしめていた。
「りっ竜胆?」
いきなりのことで動揺を隠せない綺道を俺は強く抱きしめた。
「よかった・・・お前が無事で・・・」
「竜胆・・・」
綺道も抱き返してきた。
俺は、なんでこんな行動をしてるのかわからず綺道を抱きしめていた。今ここに綺道がいてくれることが幸せで、ただいてくれることが嬉しくて・・・
「ごめんね、折角来てくれたのにあんな場面で」
俺が綺道を抱きしめて二分後、ようやく俺も落ち着いて綺道を離した。
「いや、俺こそすまん。もう少し早く来れたら綺道にあんな思いをさせなかったのに」
本当に後悔をしながら俺は綺道に謝った。
「ううん、来てくれて嬉しかったよ」
「次は、あんな奴が来ても俺が追い返すから、安心しろ」
「うん、竜胆頼りにしてるよ」
「ああ、任せろ」
そういって笑顔を見せた。俺にとってこいつはかけがえの無い存在になっていた。
「そうだ、綺道」
「何?」
「竜胆じゃなくて真でいいよ」
「ほんと!なら私も恵でいいよ」
「ああ、恵。それじゃあ、気分を変えて勉強しようか」
「もう!今はそういう空気じゃないでしょ!勉強とか後回しでしょ!」
「それもそうだけど、お前試験近いの知ってるんだぞ?」
「うっ!それはそうだけどー」
図星のようだ。確かに今日の出来事は勉強する雰因気じゃないけど、それでもさっきの空気を変えたくて俺は勉強をすることにした。
でも、そんなに手が進まずほとんど恵と話していた。気がついたらもう午後十一時・・・時間があっという間に過ぎた気がした。
「さて、恵、俺は帰るよ」
「え?もう、もう少しいない?」
「もう遅いからな」
「そう・・・でももう少しだけ」
「大丈夫、あいつはもう来ないだろうし。それにこれ以上いると泊まる事になるしな」
「真・・・」
なんだろう?
「それじゃあな、また明日」
「・・・また明日」
恵が最後に会うみたいな顔をしていたのが少し気になったけど俺は恵の家を後にした。
帰り道それほど長くは無いけど今日は長く感じた。心があったかくて恵のことを思うと不思議と笑みがこぼれる・・・これが好きってことなのかな?俺は自分の友達こと好きだけどこういう感情にはならない・・・不思議な感覚・・・これが恋なのかな?明日、恵に会ったら俺も好きだと伝えよう。
家のすぐ手前のT字の道路を通りかかった時、ライトも点けてない車が猛スピードで走ってきた。
ドン!
頭に大きな衝突音が聞こえた。俺はその音と共に宙を舞った。
ガシャン
自転車が落ちる音がした。俺は何があったか把握できず起き上がろうとした。
「・・・?」
腕に力が入らない?それに声がでない。
「・・・・?」
自分の体を見た。
「・・・ぁ?」
右腕と右足は変な方向に曲がっていた。気づいた時、全身に強烈な痛みが出てきた。
「ァ~~~」
俺は声にならない声で叫んだ。痛い・・・痛い・・・呼吸も出来ない。肺に何かあったかのように呼吸が出来ない。できてもヒューヒューと言う音しかしなかった。
車から誰か出てきたようだ。俺は痛みに耐えるしか出来ずその人が助けてくれることを願った。
「ああーーもう!なんでここに人がいるんだよ!」
怒鳴ってる・・・よくわからない・・・それ以上に体が熱くて痛い・・・
「何もかもあいつのせいだ!全部あいつの!」
怒鳴りながら運転席から倒れてる俺の方に来た。
「・・・お前は・・・そうか・・・お前か」
俺はこの喋っている男の顔を見ようと頭をそいつに向けた。
「さっきはどうも・・・この竜胆君」
最悪が・・・斉藤だ・・・
「さっき僕を痛めつけてくれた天罰が下ったんだ」
「ヒュー・・・」
何か言おうとしたけど声がでない。
「そうだ・・・こいつさえいなければ恵は僕の物・・」
そう言うと車の中から整備用のスパナを持って来た。それで何を?
「これで僕の物・・・フフフフ」
こいつ!
「じゃあね。庶民で凡人な竜胆君」
そう言って俺の頭をスパナで殴った。
「・・・ガッ!」
声が出なかったのに出た・・・痛みがドンドン引いていく・・・これが死ぬってことなのかな?・・・視界が真っ赤に・・・
「あ、そうだ。死体をどこかに埋めておこう。誰もいない山の中に」
何か喋ってるけど、今の俺には理解できない・・・
俺の体を車の後部座席に乗せると運転席に戻って動かした。
視界が赤い・・・世界が赤い・・・音も聞こえない・・・
「真・・・真・・・」
誰か呼んでる?
「真!」
『恵?・・・なんでここに?』
俺の目の前に恵がいる?
俺は、恵に近づこうと腕を前に出すけど近づけない・・・腕が重い・・・声を出して呼びたいけど声が出ない。
恵は、俺を笑顔で見てる。
『恵・・・俺・・・お前にまだ何も言ってないのに・・・好きだって・・・まだ、お前に何も言ってない』
恵は少し困った顔をしてその場から動かない。
『恵・・・大好きだ・・・お前ともっと一緒にいたい・・・生まれて初めて人を好きになったんだ・・・届いてくれ・・・恵のいる蒼い空の下に・・・こんな赤い世界は嫌だ・・・こんな・・・こんな・・・』
恵の顔が悲しい顔になった。俺との別れを感じたかのような悲しい目・・・
『恵・・・ゴメン・・・何も言えないまま・・・分かれる事になるなんて・・・』
恵の頬に涙が見えた。
『恵・・・ごめん・・・何もして上げれなくて・・・ごめん・・・そしてありがとう・・・黒崎・・・徳山・・・苗村・・・お前たちと一緒にいた三年間楽しかったよ・・・橘・・・前原・・・金井・・・あんまり話せなかったけど楽しかったよ・・・金井・・・俺はお前の性格そこまで嫌いじゃなかったよ・・・母さん・・・吉城・・・洋二・・・ごめん帰れそうにないや・・・恵・・・幸せだったよ・・・お前といれた少しの間だけど』
俺の視界は真っ暗になった。
後日
斉藤は、竜胆を車で捨てに行く途中警察に捕まり逮捕された。竜胆は後部座席で死体として発見。斉藤は殺人罪で逮捕された。
キャラ紹介
竜胆 真
今回の主人公で最初から死ぬことが決まってたキャラです。性格は真面目でツッコミ気質、そして、鈍感。どこにでもいる平凡な学生。成績も中の上といった感じ。少しずつ綺道を好きになって言ったけど、結局伝えることが出来ず一生を終えてしまった。話には出てこなかったけどちゃんと父親はいます。
綺道 恵 (きどう めぐみ)
そんでヒロイン。竜胆一筋!性格は元気で何事にも一直線な女性。成績は下の中、勉強は出来るほうではないです。この大学も親の推薦で入ったようなもの。今回は竜胆が死んだことにどう描いていこうかと考えたけどあえて書かずに行こうと思います。
苗村 真二 (なえむら しんじ)
名前を記入してなかった一人目ー!出番もそこそこしかなかったけどまぁ重要人物です。性格は生真面目で空気を読むタイプ。成績は上の上で竜胆グループの頭。うん、本当はもう少し出番あったんだけどページが冗談抜きに百ページ超えそうだったから辞めておいた。前原のこと気になってるけど相手にされてないと思ってる。
黒崎 圭吾 (くろさき けいご)
名前出してない二人目!こいつも話しにあんまり出てこなかったけど重要人物。性格は面白いことが大好きで徳山のボケによく乗る漫才師みたいなやつ。成績は上の下。勉強は出来る方ではないけど、暗記力は人一倍高いからいつものこの成績。作内ではでなかったけど彼女持ちです。
徳山 涼 (とくやま りょう)
名前を出してなかった三人目!竜胆グループ最後の一人。性格はお調子者で何かあると竜胆をいじって笑いの中心になっている。成績は中の上。竜胆より成績は上、メンバーの中で一番成績悪いのは竜胆。橘のこと気になってるけど相手にされてない。
前原 良子 (まえはら りょうこ)
綺道のメンバーの中でおっとりした性格で綺道のグループのまとめ役的存在。しっかりさんだが身長は百五十くらい胸は大きいから子供でないことがわかる。成績は中の中。苗村のことを気にはなっているけどお互いに気づいていない。内気な性格が災いして苗村にはきづいてもらえてない。
橘 冴 (たちばな さえ)
綺道グループの体育会系女子。性格は大雑把で男勝り。口調だけ聞けば男と変わらない、そんな女性。成績は上の下、中では頭がいいように見えなかったのは作者が外国語学部が法学部の勉強できるわけない!という偏見からこうなりました。恋愛に関しては興味なし、他人の恋沙汰は大好きだけど自分になると興味がない感じ。徳山のことは全くなんとも思っていない。
金井 理未 (かない りみ)
綺道グループ一の辛口。性格は言葉遣いはきついけど友達思いのいい奴、しかし友達以外は結構きつく当たる。竜胆のことも幸せにできないと思ってずっと強く当たっていた。
成績はトップ5に入るくらいの天才。普段の服装からは創造できないくらい頭がいい。図書館での課題は金井一人で終わらせたほどのつわもの。言うまでもなく彼氏持ち。
斉藤 真
竜胆を殺すために考えたキャラ、最初から殺す気で書いてたので名前のアイディアがなくちょっと困って適当に名前をつけました。京都の議員の息子でエリートコース一直線の人生。他人に自分を否定されるとすぐに切れる。性格は、我侭で傲慢。そして思い上がりが激しい。庶民のことをゴミの様にしか思っていない。綺道に一目惚れして無理やり婚約させた。
斉藤は、竜胆を車で捨てに行く途中警察に捕まり逮捕されている。竜胆は後部座席で死体として発見。




