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LUCK TiME  作者: 風快李吏


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6/7

第Ⅴ幕.運命は我等の手で……!

             

                 「5」


    *4人、中央側へ移動する。


    郷実(w)   ……私、自分の名も思い出せないので、呼ぶ時はこの方の下の名前とかで呼んでください。

    3人     (それぞれ適当に)違和感があるんだけど…。

    郷実(w)   では早速ですが、暗号の方、見せてもらえません?

            *森口、持っているカードを渡して見せる。

    郷実(w)   ・・・何だか見ただけでもハッキリとしない暗号ですね……。

           *3人、やっぱり、と言う感じの反応をする。その後、郷実(w)、暗号を全文読む。

    郷実(w)   ――この『(サソリ)』って漢字の音読みは『タイ』ですね。

    森口     そうなのですか?

    関元     やっぱ頼りない…。                                   

    武野     そう言えば、あなたは記憶をどの辺りから失くしたのですか?それと想いとは何です?

    郷実(w)   逝く直前と生前ここで何をしていたのかどういうふうに過ごしていたのか、と言っ

           た記憶です。あ、でも、ここで教師をしていたのは薄っすらと覚えています。でも、

           何を教えていたのかも判らない。そして想いとは本来皆が持っている何か大切なモノ

           なんです。何か重要な想いと言う記憶。何とかしてでもそれらの記憶と生命(いのち)

           を絶たなければならなかったのかと言うその動機と原因を。…思い出したい。

    関元     どうしても知りたいのですか?

    郷実(w)    ええ。

    関元     …想いと記憶を失った、か。

    武野     話を聞いてたら何だか早く成仏させてやりたい気になってきた。

    関元・森口  そうだな。

    森口     もう一コ良いですか?

    郷実(w)   なにです?

    森口     僕らが校歌を歌った後に、あなたが出てきましたが、それってこの学校に残る噂の原

           因はあなたって事ですか?

    郷実(w)   たぶん私です。校歌を聴いていると何だか悲しくなるんです。だから、つい。

    3人     そうだったのか?

    武野     と言うことは、一つクリアってことだ。

    関元     そうだな。残るは、この暗号だな。

    森口     郷実さん、もう少し協力して貰えますか?

    郷実(w)   分かっていますよ。 (笑顔で)

    武野     もう一度見せて。

            *武野、カードを手に取り暗号を見る。

    武野     て言うかさ、これやっぱり良く考えてみれば全体からの統一性感が全くないな。

           …もっとシンプルなモノじゃないかな・・・。

    関元     平仮名とか漢字変換とか、か?

    森口     そうかもしれませんね。クイズ番組でも良くありますし。

    郷実(w)   一度やってみましょうよ。

            *関元、カードをもらいボードに『わをたし』と書く。声に出しながら。

    郷実(w)   ・・・なんだか一人称を表す文字が見えてきたのですが・・・

    森口     僕も。『を』を抜くと、『私』って文字に。

    武野     単純な・・・。

    関元     じゃあ、次の『蠆~文雄を』までやりましょうか。

    郷実(w)   私書きます。(カードを受け取り、ボードにAll平仮名で書く)

    関元    『たい・せつな・もんのうを』…『もんのう』は『ん』と『う』を取って、『もの』だな。

    武野    『大切な物を』って成るな。

            *郷実(w)、続けて、『こくば、角』と書く。

    郷実(w)   『角』はこのままでは、おかしいので、そのまま残したのですが。変換でし

           ょうか…。

            *4人考える。

    武野     (郷実のケータイを見てふと思って)あっ、ちょっとイイですか?

            *武野、郷実のケータイを借りる。

    武野     (ケータイを弄りながら)『つの』って入力する時、『TSU・NO』だよ

           な。でも『の』だけだと『NO』だ。『つ』は小文字だと次の文字の初めの

           部分が来る。だから、『N・NO』だ。要するに『ん の』となる・・・。

    関元     どないやねん。

    武野     となると、繋げて読むと、『こくばんの』だな。

    森口     難しく書いている割りには大したこと、書いてませんねぇ・・・

    郷実(w)   次いきましょう、次。はいどうぞ。(森口にカードを渡す)次はあなたが解いて。

            *森口、ボードに『そーとも にかく した』と書く。

    森口     『にかく した』は『~に隠した』ってことですかね。……『そーとも』は

           『背面』や『外面』ってことですかね。

    関元     何でそうなるんです?

    郷実(w)   二つとも熟語では『そとも』っていうんですよ。

    関元・武野  へぇー。

    森口     2人はもう少し勉強してください・・・。まあ、さて置き、とすると、『背面

           (はいめん)に隠した』ですか。

    郷実(w)   一回、通して読みましょうよ。

    武野     そうだな。

    4人     (合わせる感じで口々に)『わたし、大切なものを 黒板の 背面(はいめん)に隠した』…。       

            *4人、静まり返る。

    関元     結構苦労したのに……

    武野     味気ねぇ……

    森口     書いてあること子供っぽい……

    郷実(w)   何だかがっかり……

    4人     はぁ……。

    森口     一応、黒板の裏見てみます?

    関元・武野  (バラバラに)そうですね。

    郷実(w)    ええ。

            *森口、黒板の裏に手を伸ばす。封筒が貼ってあるのを見つけ、取る。皆に見せる。

    森口     こんなのがありました、けど。

    関元     中に何が入ってます?

            *森口、封筒を開封して、中身を取り出す。その後、紙を開き、内容に目を通す。

    森口     ……遺書、ですね・・・。

    3人     遺書!? (郷w、一番大きく反応する)

    森口     ええ。

           *森口、遺書を読み出す。

    森口     『拝啓 親族・友人・教員・その他、お世話になった方々へ。今日に至るまで、皆様

           には多くの感謝と御詫びを申し上げます私はもう生きる気力と意義を感じなくなりま

           した。もう疲れたのです。そして、今や、あの時の憧れや希望を見失い無気力になっ

           て生きる目的を失い、生きて行くのに――…』

    郷実(w)   (途中で割り込み、何も持たずに続きを言い出す)『―― 心身ともに疲れ果ててしまっ

           たのです。私はもはや何を見出せば良いか分からないのです。――誠に御迷惑をお掛け

           して申し訳ありません。重ね重ね御詫びを申し上げます。十ニ月十四日    敬具 』

           ……これ、私が書いたのです。

    3人     えっ!?

    郷実(w)   …思い出しました。向こうに行った途端に記憶は、ほとんど飛んでしまいましたがこのおかげ

           で思い出しました。私は、ここで働いていた。そして、児童達に音楽を教えていたのです。

    森口     音楽の先生だったのですか。

    郷実(w)   はい。だからでしょうか。校歌が歌われた時に出てしまったのは。きっと思い出深いモノ

           だったからしょうか。そして、この学校で私は学年担当もやっていました。

    関元     大変だったでしょうね…。

    郷実(w)   いいえ。児童達の事を見るのは、それなりに楽しいものでした。初めの方は、ね。

    武野     どういうことですか?

    郷実(w)   児童達は関係ないんです。ですが、その保護者達からのクレームに耐え難かったのです。

    関元     理不尽で勝手な要求だったのですか。…今でいう、アレ。

    郷実(w)   そうです。各クラスからの恐ろしいクレームと、音楽の、私の授業に対する、有り得な

           いクレーム。そして、私自身に対するプライバシーにも関わる批判や注文に嫌がらせ。

           全て耐えれなかったのです。

    森口     …例えばどんな事があったのです? (訊きにくそうに)

    郷実(w)    例えば…自分の子は音楽が嫌いだ、それに音楽のためにわざわざ値が張っているリ

           コーダー何か買いたくない。だから音楽は受けない。あと将来に必要ない。だから

           音楽の授業項目なくして欲しい、だとか、私が学活の時、クラスでお楽しみ会の

           一環としてドッヂボールをしたのですが……その時クラスの子がその子にボール

           を間違って顔にぶつけてしまったのです。そしたらその日の夜、保護者から電話

           があって「怪我をさせたのはちゃんと見ていなかった担任が悪い。だから私の子

           のために責任を取って教員をやめろ!」と電話があったのです。それからという

           もの、毎日最低20回もの電話がありました。…こういったクレームが沢山ありま

           した。それで私は……。

    武野     それは本当に耐えられないものですよ。

    関元     おれも、もしそうだったら恐らく、あなたと同じ事をしてるだろうな。

    森口     僕は、耐えることも立ち向かうことも出来ずに居てしまうでしょうね……。

    郷実(w)   つらかった。本当に辛かった。原因はそれだけではないんです。上からのストレ

           ス、寝る暇も惜しまずに働いた・・・。様々な積み重ねが私を、いいえ、教師を疲れ

           させていたのです。私だけが、完全に耐えることが出来ず、自ら生命(いのち)を絶っ

           て、逃げてしまったのです。―――この教室で。

    3人     !?(驚く)

    関元     でも、音楽科だったのでは・・・?

    郷実(w)   (頷いてから)このクラスの担任でもあったのです。実行したのは、大体この時期

           でした。皆さんにはとても迷惑をかけてしまいました。でも、忘れたかった。この

           苦しみと辛さと悲しみから。だから……

    武野     それで自殺して逃げたのですか?立ち向かおうともせずに。

    郷実(w)   そうするしか私には道はなかった。もう全てが嫌だった。

    関元     命を絶たなくても出来ことはたくさんあったのではないんですか?

    森口     何故諦めたのです?死ねば何もかも終わりなんですよ!この世には楽しいことが一杯にあり

           ます!何でもっと楽しもうと思わなかったのです!?

    郷実(w)   貴方たちは何もわかっていない。私の気持ちなんて誰もわかりやしない!

    森口     いいえ、わかります。でも――

    郷実(w)    でもってなによ?仕方なかったんですよ!苦しみから抜け出すにはこうするしか無かった。

           …私だってしたいことはたくさんあった。だけど!

    森口     それはただの言い訳です。たやすく『死』を選ぶなんて人としてあるまじき行為です。僕も

           教師です。子供たちの手本になる為の職務なのに一番やってはならないことをあなたはした

           のですよ!

    郷実(w)  ……他に…他に何が私にはあったと思うのです。貴方たちはそれを言えるのですか?

           *3人、黙り込む。

    郷実(w)   ほら、何も無いではありませんか。やはり、『死』を選ぶ以外には何も無かっ――

    武野     違います!それは絶対に間違ってます。

    森口     少なくてもあなたは、児童たちを見捨てたんですよ。

           * 郷実(w)、黙る。

    森口    …誰にだってツライことはある。でも、皆それを堪え、乗り越えて生きているんです。

    関元    そうやって、強くなって行くのです。一つづつ考えていけば道は開けるのです!

    森口    自分自身で真にその道を心から望めばいつかは叶うモノなんです。

    関元    あなただってそれを気付き望めていたのであれば、新たな未来が存在していたのです!

    郷実(w)  …私は…希望と言う光が欲しかった…の、でしょうか…??

    武野    本当は心の底から後悔しているのでは?自分に嘘をついているんじゃあないんですか!?

    郷実(w)  ……いきたかった。ホントは生きたかった!成し遂げたいことはあった。誇りを持って堂々

          と歩んでいきたかった。

           *3人、頷く。

    郷実(w)  私はもうやり直しが出来ない。したくてもそれは叶わない…。でも、省みることはできる。

    森口    ええ。

    郷実(w)  哀しいのは私自身だったのですね。私に与えられた罰は『夢を諦めず純粋に生きる』

          という大切を思い出させるためだった のでは…?そして生き行く人に教え――

   

    案内人(off) (いきなり声がする)『吉希ヨシキ カオリさん、やっと思い出しましたか』

    4人     !! (一斉に跳ねる様な勢いでビクッとする)

    案内人(off)  『ワタシ、本当はこの方の案内人なのです。』

    4人     はい? 

    案内人(off)  『元々この催しにお呼びしたのは貴方方だけです。郷実さんがケータイサイ

           トを調べていた時ワタシはその方のケータイに今回の情報を送り込んだの

           です。あの時の郷実さんなら必ず来て下さると思いまして。ワタシには

           貴方方が必要だったのです。』

    関元     どういう・・・

    案内人(off)   『ワタシはこの世の者ではありません。黄泉の世界の案内人なのです。』

   

    3人          はぁ!?

    郷実(w)         えっ?


    案内人(off)   『香さん、貴方をお迎えするためにこの方達を呼んだのです。ワタシは姿が

           ありません。要するに彼女と同じなのです。』

    武野     ということは、おれ達は・・・

    関・武・森  2人の幽霊と話していたのか!?(愕然とする)

    案内人(off)   『はい。暗号に手間を掛けさせたのは、楽しんで頂く為と、彼女がこっちへ

           現れる前に解かれては困りますからね。なので、ああした訳です。遺書を

           仕掛けたのもワタシです。彼女には簡単に人生を諦めてしまったその償い

           として、この世に留めさせた訳です。』

    武野     何故です?

    案内人(off) 『生きると言う重さと存在の意義を心から願い自ら思い出させようとするた

           めだったのです。でも、もう彼女はその重大さが分かったと思うので大丈

           夫です。』

    関元     命を捨てたその代償か。そしてそれはしっかりとした重みがあるって事か。      

    案内人(off) 『苦労かけてスイマセン。ご苦労様です。これで、彼女もこちらへ来て頂く

           ことが出来ます。』

    関元     これでやっと貴方の夢が果たせるのですね(郷実wに向けて)

*郷実(w)、頷く。     

    案内人(off)  『香さん、その遺書を破り捨てれば貴方は開放され、黄泉へ行くことが出来ます。

           関元さん・武野さん・郷実さん・森口先生、

           ご協力有り難うございました!……』  

    関元     結局はクイズが目的ではなかったようだな。

    武野     うん。

    森口     香さん、記憶取り戻せて良かったです。僕達、なんだか嬉しいです。

    関元・武野  (頷いて)本当に良かったです。

    郷実(w)   ありがとう。……向こうに逝く前に私がここにいた証と、私が今気付き

           あなた方に伝えたい事を言いたいのですが……

    3人     言って下さい!

    郷実(w)   私は、簡単に『死』を選び過ぎた。どんなに苦しくとも、どんなに悲しく

           とも他に道はいくらでもありました。でも、私は誤った選択をしてしまった

           のです。誰にも打ち明けることもなく一人で何もかも背負い込んでしまった

           のです。お願いです。私の様な間違った選択はもう誰にもしないで欲しい。

           その事を貴方方に覚えていて欲しいのです。

    関元     はい。勿論ですよ!

    森口     今を生きるって言うのはすごく大切なんだと理解しました!

    武野    (頷いて)どんな困難があろうと決して諦めて自ら命を絶とうとしてはいけな

           いこと。貴方から学びました。

    関元     貴方がもう出来ないこと、ボク達が貴方の意思を受け継ぎ守っていきます!

    森口     この想い忘れたりはしません!

    武野     生きることは尊いことだと教えて頂きました。

    3人     ありがとうございました。

    郷実(w)   (一礼して)―――ご迷惑をお掛けしました。・・・私はそろそろ逝きます。

            *郷実(w)、遺書を森口から取り、手に取る。

    郷実(w)   …この感謝の想い、忘れたりなどはしません。本当にありがとう。(涙と感謝を込めて)

            *郷実(w)、遺書を破り捨てる。その直後、倒れる。3人、郷実に駆け寄る。

    3人     (駆け寄りながら)おい、内田!大丈夫か!?(口々に)

            *スポットを。数秒後(内田、中央で仰向けに、3人は、その周りを囲んでいる、

            状態が出来たら)、次へ。

    関元     内田、大丈夫か?

    郷実     (ゆっくり起き上がって)あれ、うちは、どうなったんだっけ……確か、校歌を歌っ

           て、何か大変なことに遭って……ああっ!

    武野     思い出したか?

    郷実     そうそう、アレが出てきたんだ、アレが。その後、動けなくなって……。そし

           たら先生が助けてくれると思って期待してたんだけど、猛スピードでどっか行く

           し、うちは意識を失って・・・。そういやあ、暗号とアレ、どうなった?

    関元     全部、終わったよ。

    武野     『生きる』という意味も知れたし、やり応えはあったよな。

    森口     内田さんに誘われて良かったです。

    郷実     それどういうこと?ねぇねぇ、教えてってば!なあ!…

    森口     帰りに全て教えますよ。

    関元     じゃあ、帰ろうか。

    4人     うん!(返事はバラバラの言葉で)

        


    ナレーション  私達は不思議な出来事に巻き込まれた。けれど、今思えば、それは私達に

       (off)  『生きる』大切さを教えるために彼らが呼んだのだろう。もう、自分達に

            は出来ない、私達にしか出来ない事を伝えるために……。次はあなたがたいけ―――         

    

   内田     (ナレの「『あ』なた」の辺りからいきなり)ちょっとまて!何か忘れてない?賞金!!!         

    

    3人組+森口  あああ!!!!                     


                                  ―― 幕 ―― 



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