面接
新本部はバスリン通りの裏通りに位置していた。深藍色の外壁が特徴的な、威容を誇る三層建ての建築物だ。正門にはギルドの紋章が刻まれた金箔押しの看板が掲げられ、早朝から噂を聞きつけた冒険者たちが長い列を作り、その最後尾は街角の向こうまで伸びていた。
広々とした本部の地下訓練場には、冷徹で張り詰めた空気が漂っていた。
良奈と賽希爾が並んで立っている。リナは整った黒い校服に身を包み、鞘に収まったままの武士刀を手にしていた。ただそこに佇んでいるだけで、彼女から放たれる冷たい剣圧は、数多の投機家や実力不足の者たちを冷汗に溺れさせた。
「抜刀、さもなくば魔法を」リナの声は氷のように冷ややかだ。彼女は近接戦闘者の器量を検分する役割を担っていた。
その傍ら、セシルは高所の梁の上に腰掛けていた。相変わらず眠たげな様子ではあったが、魔術師が魔力等級を隠そうとするたびに、彼女が指先を軽く弾くと、正確な水流や雷光が瞬時に相手の退路を封鎖した。「実力が足りない人は、入っても死ぬだけだよ」セシルは欠伸をしながら、凡庸な応募者たちを的確に排除していった。
地上ロビーでは、艾琳が戦場を支配していた。
「一組から三組は左側の休憩スペースへ! 臨時職員一号、そこの水跡を早く拭いて! 四組、地下訓練場へ入場準備!」
アイリンの長い青髪は人混みの中でも一際目立っていた。彼女は特製のスケジュール表を手に、淀みなく指示を飛ばす。並んでいる者たちの焦燥感をなだめるだけでなく、ウィル行長から派遣された数名の臨時雇員たちを完璧に動かしていた。彼女の指揮の下、数百人の混乱した場面は流れるような動線へと整理され、ギルドは油を差した精密機械のように機能していた。
そして最終関門は、陽光が差し込む二階のオフィス。
俺、奧古斯都、そしてゲンリが長テーブルの後ろに座っていた。俺は初めて「ギルド長」としての権威と重圧を感じていた。
「次」アウグストゥスはリナたちから送られてきた実力評価に目を通す。その瞳には商人特有の抜け目なさが宿っていた。
ゲンリは優雅に魔導ペンを回しながら、俺の左眼「観測者」と交互に応募者の魂の強度をスキャンしていく。
「すでに出来上がった、連携の取れた小隊であれば、実力が基準に達し次第、即座に採用し下請け契約を締結する」アウグストゥスは書類にギルドの印章を捺した。
一方、単独で活動する個人に対しては、俺はより慎重に接した。
「君の剣術は確かに素晴らしい。だが、スウィヤの高階級依頼において、単独作戦のリスクは大きすぎる」俺は一人の放浪剣士の目を見つめ、穏やかながらも断固とした口調で告げた。
「君にリナのような『一騎当千』の実力があれば別だが、そうでなければ、隣のマッチングエリアで仲間を探すことを勧める。パーティーを組んでから、再度試験に来てくれ」
この「団体を核とする」募集戦略により、「幻光」はわずか数日で戦闘力の高い精鋭たちを数十チームも吸収した。かつて空っぽだった建物が、様々な冒険者たちの笑い声で満たされていく。疲れを見せながらも活き活きとしたリナたちの姿を見て、俺は自分たちの冒険が、本当に新しいステージに入ったのだと実感した。
「午前の部は終了ね。シエン、少し休みましょう」
最後の応募者がオフィスを出ると、アイリンは手を叩き、安堵のため息をつきながらドアに寄りかかった。青い長髪が少し乱れている。しかし、アウグストゥスに弛緩した様子は一切なかった。彼は眼鏡を押し上げ、整理したばかりの分厚いファイルを持って、厳粛な面持ちで俺に歩み寄ってきた。
「シエン、午前の統計が出た。連携の取れた小隊を五組、実力のある個人を六名。我々を含め、現在動員可能な総人数は三十名に達した」
「三十人か……」俺は考え込んだ。短期間では十分な成果だが、未知と危機に満ちたこのスウィヤにおいて、大型ギルドの運営を支えるにはまだ人手が足りないかもしれない。
「皆、お疲れ様。午後はもっと人が増えるだろう。この調子で頑張ろう。皆、頼むぞ!」
俺はソファーでぐったりしているセシルと、地下から上がってきて優雅に刀の鞘を拭いているリナに声をかけた。それから立ち上がり、固まった肩を回して、昼飯を済ませるためにバスリン通りの適当な店へ行こうとした。
「へっ! ま、待って! 待ってください!」
突然、燃えるような赤い影が、慌ただしい足音と共に廊下の向こうから転がるように走ってきた。
それは、まだ十一、二歳ほどに見える少年だった。明らかにワンサイズ大きい赤色の魔導師の長ローブを纏い、裾には土汚れがついている。彼は大汗をかきながら、かすかな紅石が嵌め込まれた短い杖を握りしめ、言葉にならないほど息を切らしていた。
「あ……あの……ギルド長……僕は……僕は……僕は……!」彼は膝を突き、幼い顔を真っ赤にして、緊張と焦燥、そして泣き出しそうな悔しさを瞳に宿していた。
その姿を見ていると、この世界に来たばかりの自分を思い出し、俺の警戒心は瞬時に消えた。
「落ち着いて、深呼吸だ。ゆっくり話してごらん」俺は腰を落として彼と目線を合わせ、細い肩を軽く叩いた。「面接に来たのか?」
「え……あ……はい! 面接です! 僕も『幻光』に入りたいんです!」少年は命綱を掴んだかのように必死に頷いたが、声はまだ震えていた。
俺は誰もいなくなった廊下を一度見やり、それから彼の、簡素ながらも極限まで磨き上げられた杖を見つめた。皆が拡張を急ぐ今だからこそ、アウグストゥスの計算式には現れない何かが、この子にはあるのかもしれない。
俺はそっと彼の背を支えて立ち上がらせ、消灯したばかりのオフィスへと彼を招き入れた。
「アウグストゥス、ゲンリ。予定変更だ」俺は片付けを始めていた二人に苦笑いを向けた。「悪いが、残業をお願いする。この子の面接が、午前最後の仕事だ」
ゲンリは優雅に一つ溜息をつき、魔導ペンを回しながらも長テーブルの後ろに戻った。紫の瞳は興味深げに目の前の少年を観察している。アウグストゥスも黙って新しい記録表を開き、ペン先を紙に当てた。
「名前、得意な属性、そして……なぜ我がギルドを志望した?」アウグストゥスのかすれた声が静かな部屋に響く。
「僕は……僕は……スア(斯爾)と言います。火属性です」
少年は居心地悪そうに杖を握り、指先が白くなっていた。彼は俯き、消え入りそうな声で答えた。
「へぇ、スアかぁ……」後方のソファーに倒れ込んでいたセシルが、片目を薄ら開けて気だるそうに口を挟んだ。
「このガキなら覚えてる。魔法の潜在能力は高いけど……コントロールが救いようがないくらい下手くそだよ」セシルに名指しされ、スアはますます顔を赤らめ、ぶかぶかの帽子をゆっくりと脱いだ。すると、炎のように鮮やかで乱れた、生命力に満ちた赤い短髪が現れた。
その特有の色合い、そして少し跳ねた髪質。どこかで見たことがあるどころではない。
俺は眉を上げ、常に信頼を寄せていた勇者、克雷德の姿を思い出した。俺は笑いをこらえ、おどけて尋ねた。
「スア……正直に言ってくれ。クレドを知っているか?」
「もう、シエン。子供をからかわないでよ」アイリンは泣き出しそうなスアを見て、忍びなく思って俺を止めようとした。
しかし、スアは深く息を吸い、腹を決めたように大声で答えた。
「あ……あいつは、僕の親父です!」
その瞬間、空気が凍りついた。
「……」
「……」
書類をめくっていたアウグストゥスの手が止まり、俺もその場に固まった。
「バンッ!」
静寂を破る大きな音が響いた。ゲンリが猛然とテーブルを叩いて立ち上がったのだ。その勢いにテーブルの紅茶がひっくり返りそうになる。彼女の紫の瞳には「拒絶」という名の怒りが燃え盛り、入り口を指差して叫んだ。
「採用拒否よ!」
「ゲンリ、落ち着け。この子に罪はないだろう」
ゲンリに怯えてテーブルの下に潜り込みそうなスアを見て、俺は溜息をつき、ゲンリの昂ぶりを抑えるように手をかざした。
「スア。君の父親とゲンリには……いろいろ因縁があるが、『幻光』が見るのは個人の実力だ」俺は顔を向け、左眼の「観測者」を微かに発光させ、少年の体を透視した。
俺の視界の中で、この子の体内の魔力は静かに流れているのではなく、狂暴で灼熱、そして驚異的な規模の溶岩の塊のように、導き手を欠いてあちこちへ衝突していた。この魔力量は、確かにクレドの血筋に恥じない。いや、青は藍より出でてと言わんばかりの勢いだ。
「ゲンリ、冷静に考えてみろ。もしこの子がその力を制御できるようになったら、うちのギルドは歩く時限……いや、最強の遠距離砲台を手に入れたも同然だぞ」俺はゲンリに目配せをした。
「それに、あのクレドの息子を俺たちの下で『教育』するっていうのも、なかなか面白い復讐だと思わないか?」
それを聞いたゲンリの表情が固まり、すぐに沈思黙考に入った。
「……そう言われると、あいつの息子にギルドの力仕事や雑用をさせるのは、確かにスカッとするわね」ゲンリは席に戻り、腕を組んで相変わらずツンとした態度を崩さない。
「でも、あらかじめ言っておくわ。もし私の髪の毛一本でも焦がそうものなら、スウィヤ川に投げ込んで魚の餌にしてやるから!」
「……父親の看板技能である『瞬獄』は使えるのか?」アウグストゥスの追及により、室内の空気が再び冷え込んだ。ギルドの「頭脳」である彼の基準は、常に数値と効率のみだ。彼は眼鏡を押し上げ、レンズが光を鋭く反射させた。
「い……いえ、使えません」スアは項垂れ、消え入りそうな声で答え、不安そうに杖をいじった。
「勇者クレドの息子だ。血脈の中に何らかの覚醒技能や、特殊な魔法構造が隠されているのではないか?」アウグストゥスは容赦なく畳みかける。「魔力総量が多い以外に、特殊な技能はあるのか?」
「……ありません」スアの頭はさらに下がり、その赤髪は今はすっかり元気を失っていた。
「ならば……君を採用する価値はどこにある?」アウグストゥスの瞳が鋭くなり、隠しきれない冷酷さが滲んだ。
スアの大きな瞳に涙が溜まり始め、ローブの中に引きこもりそうになっているのを見て、俺は慌てて口の悪いアウグストゥスを押し除け、「いい加減にしろ」という視線を送った。
それから俺はゆっくりとスアの傍へ歩み寄り、膝をついて目線を合わせた。
「スア、俺を見てくれ」穏やかに声をかけ、彼の赤い瞳が俺の視線と重なるのを待ってから、ゆっくりと言葉を繋いだ。
「今の君のコントロール力では、すぐに正式な依頼任務に投入することはできない。それは依頼主への不誠実であるだけでなく、君自身の命を粗末にすることになる。だから、『雇われ冒険者』という立場では、今は採用できない」
スアの肩が激しく震えた。彼がオフィスを飛び出そうとした瞬間、俺はその肩をしっかりと押さえた。
「……だが」俺は言葉を継ぎ、微笑みを浮かべた。
「父親のクレドには以前いろいろと助けてもらったし、俺やゲンリにとっては先輩でもある。そこで、君に『ギルド見習い(見習い生)』の枠をあげよう。その強大な魔力をどう制御するか、俺たちが直接指導する。合格すれば、君は『幻光』の最初の直系メンバーだ。……どうかな?」
スアは呆然とし、溢れそうだった涙を必死に堪えた。彼は信じられないという顔で俺を見つめ、それから後ろで爪に息を吹きかけながら「気にしていない」ふりをしているゲンリを盗み見た。
「ぼ……僕、ここにいてもいいんですか?」スアはおずおずと尋ねた。
「ああ。でも訓練は厳しいぞ」俺は立ち上がり、その赤髪をくしゃくしゃと撫でてから、リナとアイリンを振り返った。「何しろ、うちには『鬼教官』がたくさんいるからな」
リナは頷いた。瞳は冷ややかだが、拒絶の色はない。アイリンは嬉しそうに駆け寄り、スアの手を取った。
「やったー! これでスケジュール表の整理を手伝ってくれる弟分ができたわ!」
「……チッ、ギルド長が決めたことなら異存はないわよ」ゲンリは再び分厚いデータの山を手に取ったが、口元にはかすかな含み笑いが浮かんでいた。
「ただし、この子の訓練費用は、後できっちりクレドに請求させてもらうからね」
夜の帳が下り、一日の過密なスケジュールがようやく終わりを告げた。
アウグストゥスの最終的な統計によれば、この一日だけで約六十名の動員可能な冒険者を確保することに成功した。これは「幻光」にとって、精鋭チームから規模を備えた武装組織へと正式に脱皮したことを意味していた。
俺たちはギルドロビーの後片付けに追われ、書類をファイルに収め、椅子を元の場所に戻し、久しぶりの安らぎを求めて帰路に就こうとしていた。
「スア、もう暗いわよ。いつまで残っているの? 家族が心配するでしょう?」アイリンは箒を置き、隅っこで小さくなっている赤い影に歩み寄り、優しく声をかけた。
「え……あ……その……」スアは杖を握りしめ、顔を真っ赤にして口ごもっていたが、最後には決心したように一言漏らした。「……道に、迷いました」
「迷子? 家はこの街にあるんじゃないの? あんたって子は……面接から今まで、呆れさせる天才ね!」ゲンリは一日の感情の起伏で限界に達しており、今にもスアに怒鳴り散らしそうだった。
その時——。
「パァンッ!」
鋭い空間の裂断音がロビーの中央で炸裂し、歪んだ魔力の乱気流が床の紙屑を吹き飛ばした。
高大で薄汚れた人影が、虚空からよろめきながら飛び出してきた。クレドだ。普段は豪放不敵な勇者として知られる彼の甲冑は歪み、整えられているはずの赤髪も無残に乱れていた。
彼は周囲の者を見る余裕すらなく、着地するなり俺の肩を掴み、かすれた震える声で叫んだ。
「シ……シエン! 息子がいなくなったんだ! 昼過ぎに出かけると言ったきり、今になっても戻ってこない! 見てないか!? 俺にそっくりな、赤い髪で丸顔の、これくらいの背の奴だ!」
戦場で千軍万馬を蹴散らす勇者が、これほどまでに狼狽し、恐怖すら浮かべた表情を見せるのを俺は初めて見た。
「クレド、落ち着け。あそこにいる」俺は苦笑しながら、アイリンの後ろで気まずそうに小さくなっているスアを指差した。
クレドが指の先を見ると、彼はまず三秒間呆然とした。それから脱走した野牛のような勢いで突っ込み、スアをこれでもかというほど抱きしめた。息子を鎧の中にめり込ませようとしているかのような力強さだ。
「スア! 父さんを死ぬほど心配させやがって! なんでこんなところにいるんだ? 街中をひっくり返すところだったぞ!」
「父さん……い……痛いよ……」スアは父親の腕の中で弱々しくもがき、顔色を赤から青に変えていた。
息子が無事であることを確認し、クレドは安堵のため息をついて俺たちを見た。そこでようやくゲンリの冷ややかな視線に気づき、その表情に複雑な罪悪感と気まずさがよぎる。彼は空咳をして、失態を演じた自分を律した。
「……すまない、迷惑をかけた。シエン、ゲンリ、それに皆も……感謝する。この坊主は連れて帰るよ」
クレドはスアの頭を叩き、ゲンリと目を合わせることすら避けるようにして、スアを連れて立ち去った。
空間が再び閉じ、ロビーに静寂が戻った。
「……本当に出自の知れた馬鹿親子ね」ゲンリは鼻を鳴らし、入り口へと歩き出した。だが、一日中強張っていた彼女の肩が、クレドが消えた瞬間にようやく解けたのを、俺は見逃さなかった。




