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異世界の観測者 ~今度こそ、大切に生きていく~  作者: WE/9
新たな一歩 ——

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55/60

証明

講壇に立つゲンリは、主照明が復旧していないにもかかわらず、その卓越した弁舌と幻術理論への深い造詣によって、暗闇の中に魅惑的な魔力構成を紡ぎ出していた。しかし、講演が最高潮に達したその時、審査員席から突き刺すような嘲笑が響き渡った。

深灰色の長袍ローブを纏った男が突如として立ち上がった。その顔は影に隠れていたが、俺の「観測者」にははっきりと見えていた。彼の周囲には、先ほどの停電箇所と同じ、病的で歪んだ緑色の魔力が渦巻いている。

「ゲンリさん。一つ伺いたい。計画を失敗させた人間に、この場で幻術の未来を語る資格などあるのですか?」

その言葉は重錘のように、会場の静寂を叩き潰した。ゲンリの声が止まり、講壇に置かれた彼女の手が激しく握り締められた。

「失敗? 私のどこが失敗だと言うの?」ゲンリは冷たく返したが、その語気には隠しきれない微かな震えが混じっていた。

「貴女の魂は、とっくに半分欠けているのではないか? 自分自身さえ修復できない幻術師に、我々を説教する権利などあるのか!」男の声は次第に鋭さを増していく。「それに、十年前の実験で犠牲になったあの白髪の少年……。その血塗られた過去について、ここにいる皆様にどう説明するつもりだ?」

「それは……」微かな魔力の光に照らされたゲンリの顔は蒼白で、普段は不敵な光を宿すその瞳には、今や動揺と苦痛が満ちていた。

最前列に座るクレドの顔は鉄青てっせいに変わり、座席の肘掛けを激しく握り締めた。指の関節が白く浮き出るほどに。彼の瞳からは怒りの炎が噴き出そうとしていたが、各国の使節が揃うこの博覽会で、「勇者」である彼が手を出せば外交問題に発展しかねない。彼はただ、歯を食いしばりながらその男を睨みつけるしかなかった。

俺は舞台裏の影からゲンリの無力な姿を見つめ、心に溜まっていた怒りが一瞬で燃え上がった。あの女は普段こそ毒舌で、傲慢で、少し暴力的だが、俺たちを導いてくれる導師であり、深夜にネックレスを握りしめて静かに誰かを想う、一人の血の通った人間なんだ。

「アウグストゥス、細工を頼む」俺は低く命じた。声が自分でも驚くほど冷えていた。

「……了解、ギルドかいちょう」アウグストゥスは眼鏡を押し上げ、魔導中枢を高速で叩いた。「全スポットライトの操作権を強制的に貴方に移します。それと、あの男のマイクの周波数をカットします」

俺は作業台の上にあったワイヤレスマイクを掴み取ると、スタッフとしての身分など構わず、目の前の暗幕を押し開けた。そして、全会場の驚愕の視線が注がれる中、権威の象徴である講壇へと一歩ずつ踏み出した。

会場内の消えていた照明が、アウグストゥスの操作によって、あたかも強力な意志で強制的に呼び覚まされたかのように一斉に点灯した。数十の鋭いスポットライトが同時に旋回し、暗闇に隠れていた講壇を真昼のように照らし出す。

俺は光の中心に立った。左目の銀色の輝きは強光の中でも鮮明で、神性を帯びた威圧感に、会場のざわめきが瞬時に静まり返った。

「ゲンリさん」俺はマイクを握り、隣で驚きと不安を浮かべるゲンリを無視して、あえて冷酷で挑発的な口調で大声で問いかけた。

「皆様もお聞きになった通り、先ほど貴女を敗北者と罵る声がありました。そこで伺いたい。貴女がかつて自らの魂の半分を代償にしてまで手に入れたものは、一体何だったのですか? それとも、彼の言う通り、ただ命を浪費しただけなのですか?」

ゲンリが俺を見た。震えていた彼女の指先が、俺の「観測者」と視線が合った瞬間に止まった。彼女は俺の目から、励ましと援護のシグナルを読み取ったのだ。抑え込まれていた誇りが、彼女の瞳の奥で再び燃え上がった。

「私は……『幻影領域げんえいえいき』の開発に成功したわ」彼女は背筋を伸ばし、声はいつもの清冽さを取り戻した。

「領域? 何ですかそれは。ここにいる頂点クラスの学者以外には、そんな空虚な言葉は理解できないでしょう」俺はさらに追い詰め、空気を極限まで煽り立てる。

「それは歴史上唯一、純粋な精神力を現実の情景へと完全に実体化させるスキルよ!」ゲンリは一歩踏み出し、その声は風之塔の中に幾重にも反響した。「その領域において、私は創世主となる。それこそが、人類が神の領域に触れる真の幻夢げんむなのよ!」

「それだけですか? そんな視覚効果のために魂の半分を犠牲にするとは、あまり割に合わない取引ですね」俺は冷笑した。

「それだけだと?!」ゲンリは俺の「挑発」によって学者の狂気を完全に点火させた。彼女は数千人の観客とメディアのカメラに向かって、覇気と共に両手を広げた。

「私はこれを基礎として、『精神領域と現実空間の共鳴および映射えいしゃ』という革命的な学説を提唱・研究したわ! 聞きなさい、これは座標がもはや固定された物理的枷ではないことを意味する。遠くない未来、解析さえ完了すれば、人類は魔法陣すら必要とせず、一秒で瞬間移動を実現できる! これは私が半分の命を懸けて、人類文明に穿うがった希望の光なのよ!」

会場から抑えきれない驚嘆の声が上がった。先ほどの審査員の顔色は極めて悪くなり、再び口を開こうとしたが、俺が先んじてそれを遮った。

「ゲンリさん。学術がいかに偉大であろうと、実験の過程で無実の犠牲者を出したことは、決して正当化されません。貴女は、あの亡くなった白髮の少年にどう向き合うつもりですか?」

これは最も悪辣な罠であり、ゲンリの心に最も深く刺さっている棘だ。だが、俺は彼女にここで、全世界の前で自らその棘を抜かせなければならなかった。

「彼(あの子)は……」ゲンリは深く息を吸い、射抜くような眼差しで緑色の魔力を纏った審査員を凝視した。そして、一文字ずつはっきりと告げた。

「あの無実の若者は、私の研究チームにはいなかった! 彼は、私の概念を模倣しようとした劣悪な模倣品たちの犠牲になったのよ! 私の進捗に追いつこうとした実験室が、安全を顧みず強引に魔力炉を起動させ、エネルギーを暴走させた。彼はただ、付近で不運にも巻き込まれただけ。当時のスウィヤ最高裁判所はすでに結論を出しているわ。判決書は今でも閲覧可能よ。そして、貴方——」

ゲンリはその審査員を指差し、蔑みに満ちた口調で言い放った。

「その劣悪な実験室の偽証を持ってここで喚き散らすのは、真実を隠蔽したいから? それとも、私の研究した瞬間移動が、転送陣を独占している貴方たち権力者の利権を脅かすのが怖いの?」

スポットライトの焦点にあってもなお、その審査員は食い下がり、「学術」という名の亀裂に最後のわらをねじ込もうとした。

「だが、ゲンリさん。実験員が一人残らず魂を半分失うというなら、この世の誰もその技術の開発を望まないでしょう」彼は冷笑し、ゲンリを人命を顧みない狂人のように描き出そうとした。「貴女の成功は、無数の欠損した魂の上に築かれるというのですか?」

ゲンリの呼吸が一瞬重くなった。彼女は無意識に、衣服越しに胸元のムーンストーンのネックレスを握り締めた。その冷たい質感が彼女に最後の支えを与えたかのように、彼女の瞳はスポットライトの下で揺るぎない決意を宿した。

「それについては、貴方が心配することではないわ」ゲンリの声は拡聲魔法の加護を受け、荘厳で力強く響いた。「当時の実験主任が、土壇場で救済方法を開発してくれた。将来、私はその概念を元に最適化を行い、同様の悲劇を完全に回避してみせるわ」

「ほう? つまり……それも貴女が開発したものではないと?」審査員は揚げ足を取ったように、軽蔑を含んだ口調になった。「核心的な防護技術は、他人の手によるものだったわけだ」

「その主任は、昼夜を問わず私の論文を読み込み、私の理論を根底に据えて逆算(逆コンパイル)して導き出したのよ!」ゲンリは一歩踏み出し、疑いようのない覇気と誇りを込めて言った。

「あえて言うなら、『幻影領域』のすべては、起源から終点まで、すべて私が開発したものよ! 彼は……ただこの真理を守るために、私のパズルの最後のピースを埋めてくれただけなの!」

この言葉は最後の一撃チェックメイトとなり、相手の疑念を完全に粉砕した。会場は一瞬の静寂に包まれた後、海嘯かいしょうのような拍手と歓声が沸き起こった。中には立ち上がってゲンリの名を叫ぶ者もいた。それは技術への承認だけでなく、彼女の執念と覇気に対する敬意でもあった。

俺はゲンリに頷いて見せ、混乱と歓喜の中で鮮やかに壇上を降りた。この彼女の栄光の瞬間を、彼女自身に預けるために。

「アウグストゥス、照明の制限を解除。セシル、出口を見張れ」俺は即座にギルド長のモードに切り替え、冷静に命令を下した。

続いて、通信魔法に低く語りかけた。

良奈リナ。あの審査員の緑色の魔力が霧散し始めた。バックもあいつを切り捨てるつもりらしい。お前と他のメンバーで動いてくれ。あの『審査員』を拘束しろ。急げよ、こんな神聖な場所で自爆や逃走を許すな」

「……了解」

良奈の冷徹な声が返ってきた。

沸き立つ観客席の一角で、三つの黒い影が幽霊のように現れた。良奈が先頭を切り、審査員の関節を逆手に取って押さえ込む。銀色の武士刀の鞘を相手の脊椎に正確に突き立て、もう片方の手で特製の封魔手錠を取り出した。

幻光げんこうギルド、公務執行中。……同行願います」

恐怖と絶望に満ちた審査員の目の前で、アイリンとアウグストゥスも左右から包囲した。ゲンリに向けられたはずの処刑台は、この瞬間、正式にギルド「幻光」が世界にその存在を告げる処女作へと変わったのだ。

会場の雰囲気は最高潮に達したが、俺は分かっていた。ゲンリの冤罪を晴らすだけでは足りない。俺たちの未来のために、道を切り開かなければならない。

俺は再びマイクを手に取った。金属の質感が手のひらで熱を帯びる。俺は振り返り、まだ衝撃に浸っている政財界の名士たちに向けて、プロのデザイナーらしい、自信に満ちた微笑を浮かべた。

「さて、これほど素晴らしい発表を聞いた皆様のことですから、一刻も早くスポンサー契約や技術提携を申し出たいとお考えでしょう。では、ゲンリさんを支援したい場合、どこへ連絡すればよいのでしょうか?」

俺はあえて言葉を宙に浮かせて、全員の視線をゲンリへと戻させた。

ゲンリは一瞬呆気に取られたが、俺の銀色に光る左目を見て、即座に意図を察した。彼女は優雅に長袍を整え、少しいたずらっぽく、それでいて無比の覇気を纏った笑みを浮かべた。俺たちはスポットライトの下で視線を交わし、笑い合った。それは導師と学生、パートナーと戦友という枠を超えた、魂の黙契もっけいだった。

「私はスウィヤの**『幻光げんこうギルド』**で学術顧問の一人を務めるわ」ゲンリの声は清らかで力強く、風之塔の隅々にまで響き渡った。

「本日の警備はすべて彼らが担当した。そして今しがた、技術を盗もうとした三人の泥棒を、皆様に気づかれることなく静かに制圧したところよ。今後、幻術理論の議論や、いかなる依頼であっても、スウィヤの『幻光ギルド』を訪ねなさい」

彼女のこの言葉は極めて巧妙だった。自身の学術的地位を確立しただけでなく、俺たちのギルドに「一流の刺客を容易く仕留める」という強力な保証(お墨付き)を直接与えてくれたのだ。

「講演は以上よ。ご清聴ありがとう!」

ゲンリは優雅に腰を折り、壇下に向けて深く一礼した。

——ドォォォォン!

雷鳴のような拍手と歓声が、赤き塔の屋根を吹き飛ばさんばかりに響いた。第一列のクレドは冷静な姿勢を保っていたが、口角がわずかに上がるのを抑えきれていない。ウィル行長に至っては、数えきれないほどの投資計画が手招きしているのが見えるかのように、満面の笑みを浮かべていた。

俺はマイクを切り、静かに影の中へと退いた。壇上のゲンリが万衆の注目を浴びて輝くのを見つめる。

「幻光……」俺はギルドの名を低く呟いた。

風砂と金の匂いが漂うこの風城に、この瞬間、銀色の光が刻まれたのだ。

会場内の海嘯のような歓声が大理石の壁に余韻を残す中、俺たちはバックヤードの合流地点に集まった。

「シエン! さっきの、めちゃくちゃ格好良かったよ!」アイリンが興奮気味に小走りで駆け寄ってきた。青い長髪を揺らしながら、遠慮なしに俺の肩を力いっぱい叩く。瞳はキラキラと輝いている。「さすが私の彼氏! あの審査員、顔が真っ青になってたもん!」

「さすがは私の教え子ね」

もう一つの、少し気怠げだが笑みを含んだ声が同時に響いた。ゲンリが優雅な足取りで側門から出てきた。壇上でのあの鋭いオーラは消え、瞳には疲労の色があったが、それ以上に晴れやかな解放感があった。

彼女は俺たちの前に来ると、アイリンと俺の姿をしばらく見つめ、それから感傷を表現し慣れていないのか、ふいっと顔を背けて、声を潜めて言った。「……さっきは、ありがとう」

「いえ。ゲンリ、こっちこそ『幻光』の宣伝をありがとう。学術顧問の肩書きなんて、大金を出しても買えないからね」俺はニヤリと笑い、あえて利益に目ざとい商人のような態度を取ることで、しんみりとした空気をユーモアへと変えた。

「このガキ、相変わらずこういう時だけ反応が早いわね」ゲンリは呆れたように俺を睨んだが、口角は自然と上がっていた。

「今日は実に見事だった」そこへ、ウィル行長の落ち着いた、磁気のある声が聞こえてきた。彼は相変わらずパリッとしたスーツを着こなし、背後で手を組んで、賛辞に満ちた目を向けていた。彼は歩み寄り、俺の肩をどっしりと叩いた。「シエン、感謝するよ。今日の芝居は……本当に素晴らしかった。スウィヤ銀行は君たちに大きな借りができたな」

「皆の連携が良かっただけですよ」俺は謙遜して答えた。

その時、力強い腕が背後から俺の首に回された。アウグストゥスの活力に満ちた(そして少し恨めしそうな)声が耳元で響く。

「おいおい、いいところを全部一人で持っていきやがって! さっき機材室で汗だくになってライトを操り、マイクを絞ったのが誰だか分かってるのかい? 会長、技術部の昇給を真剣に検討してくれないかな?」

俺はアウグストゥスのからかうような姿を見、そして傍らで任務を終えて黙々と鞘を拭く良奈、相変わらず「眠い」という顔をしたセシルを見た。

「分かった分かった。今日の晩飯は豪華にする。俺の奢りだ!」俺は太っ腹に手を振った。

夕陽の残光が風之塔の高い窓から俺たちに降り注ぐ。この博覽会の裏にはまだ無数の謎が残されている——あの緑色の魔力、謎の審査員、そしてゲンリの失われた半分の魂。だが少なくとも今この瞬間、この赤い巨塔の中で、俺たち「幻光」ギルドは、確かな第一歩を刻んだのだ。

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