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異世界の観測者 ~今度こそ、大切に生きていく~  作者: WE/9
新たな一歩 ——

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54/60

治安維持

「スタッフ専用入り口はあっちよ。私はこの後、いくつか学術講演があるから、先に『発表者エリア』で準備してくるわ。というわけで、後は自分たちで何とかしなさい。頑張ってね、ギルドかいちょうさん。バイバイ!」

ゲンリはそう言い残すと、黒い旋風のように貴賓専用の側廊へと駆け去ってしまい、大廳ロビーの中央には俺たち五人が呆然と取り残された。

「俺たちも行くぞ」俺は視線を戻し、パンと手を叩いて皆の注意を引いた。

重厚な金属の扉を抜け、スタッフ専用のバックヤードエリアへと足を踏み入れる。空気中には機械油と高濃度魔力冷却材の匂いが充満し、作業員たちが計器を積んだカートを押し、忙しなく行き交っている。身分確認を終えると、無表情な助手が「特約安全維持」と書かれた五枚のスタッフ証を渡してきた。

事前の計画通り、会場の動向を全方位から観測するため、俺たちはそれぞれの重要地点へと分散した。

● 会場後方・高所:俺とセシル

俺はセシルを連れて、会場の正後方、地上約三十メートルの位置にあるメンテナンスプラットフォームに登った。ここは非常に見晴らしが良く、円形の大ホールを一望できる。左目の「観測者かんそくしゃ」が微かに疼く。この高さなら、会場全体を流れる魔力の脈動が手に取るように見えた。

「シエン……ここは風が強くて、昼寝にぴったりだね」セシルは手すりに寄りかかり、相変わらず怠惰なことを口にしていたが、その琥珀色の瞳は鷹のように鋭く、下の死角を一つ一つ冷徹に掃射していた。

● 会場内・巡回:アイリンと良奈リナ

アイリンの顔にはまだ緊張の色が浮かんでいたが、良奈の冷静なオーラに導かれるように、二人は密集した展示棚と人混みの間を縫うように移動していた。アイリンは異常な雷元素の波動を感知し、良奈は銀色の武士刀をゆったりとした衣服の下に隠し、いつでも抜刀できる影となって、あらゆる突発事態に警戒を光らせている。

● ステージ周辺:アウグストゥス

俺たちの中で最も魔導理論に精通しているアウグストゥスは、最前線へと送り込まれた。彼は巨大な投影スクリーンと演台の脇に立ち、計器を点検するふりをしながら、その鋭い直感で登壇する政治家や学者たちを監視している。この学術の祭典を汚す者が現れないように。

俺は高所に立ち、風之塔の規則的な振動を感じていた。左目の灼熱感は、列車の中にいた時よりも一層強まっていた。

会場裏の控え室は、表の喧騒とはカーテン一枚隔てただけだが、針が落ちる音さえ聞こえそうなほど静まり返っていた。壁の魔導時計が「チ、チ」と規則的な音を刻み、その一振りごとに、空気中の息詰まるような緊張感が増していく。

「ゲン……ゲンリ?」

沈黙を破ったのは、激しく動揺し、震えさえ含んだ男の声だった。クレドは姿見の前でパリッとした正装を整えていたが、鏡越しに部屋に入ってきた人物を見た瞬間、まるで石化の魔法をかけられたように固まった。冷静沈着なはずの彼の顔が、一瞬で崩れる。

今回の博覧会で最も重要な審査員ゲストである彼は、数々の大舞台には慣れていたが、この女性の前では、どうしても平静を保てなくなる。

ゲンリの足がピタリと止まり、手に持っていた講演の原稿がギュッと握りつぶされて皺が寄った。彼女は目の前の男を見つめた。普段はいたずらっぽさと自信に満ちているその瞳に、珍しく狼狽の色が走る。

「クレド……貴方がゲストなの?」ゲンリは乾いた声で切り出した。その声は硬く、普段シエンを説教する時の勢いは微塵もなかった。

「ああ……そうだ」クレドはぎこちなく向き直り、彼女の瞳を直視できず、視線は彼女の胸元で微かな光を放つネックレスに落ちた。「……君は?幻術関連の講演を……するのか?」

「ええ……そうよ。それ以外に、私に披露できるものなんてないもの」ゲンリは口角を引き上げ、いつもの微笑を作ろうとしたが、それはどう見ても無理をしているようにしか見えなかった。

控え室に死のような静寂が訪れる。

共に過ごした日々の感情、そして卒業式での告白。それらが今は目に見えない壁となり、二人の間に横たわっている。クレドの視線は長い間そのネックレスに留まっていた。それが誰の形見であるかを知っているからこそ、歩み寄ろうとした彼の手は、また静かに下ろされた。

ゲンリは自分の爪先を見つめ、心の中で名簿の作成者を一万回ほど呪っていた。

「あの……この数ヶ月間……」クレドが沈黙を破ろうと口を開きかけた。

「元気にやっているわ。バカな生徒たちの隣で、静かにね」ゲンリは何かから逃げるように、弾丸のような速さで言葉を遮った。「貴方こそ、相変わらず世界平和を守っているそうじゃない。立派なことね」

「ゲンリ、そんなつもりで言ったんじゃ……」

気まずさは頂点に達していた。二人はまるで平行なレールのようで、これほど近くにいるのに、繋ぎ合う接点を見つけられずにいた。

控え室の空気からは酸素が奪われたかのように、重苦しく胸が詰まる。

クレドはうつむき、磨き上げられた革靴の先を見つめていた。彼は大きく息を吸い、深い決意を込めたように、低く掠れた声で沈黙を破った。「……すまなかった。あの日、あんなにはっきりと君を拒絶して」

その言葉は静かな湖面に投げ込まれた巨石のように、ゲンリの手を強張らせた。

「謝らないで。あれは私の問題よ……私の心の問題だわ」ゲンリは即座に答え、その口調には抑揚が全くなかった。彼女は側面のドアの陰を見つめた。その表情は薄暗い灯りの中で判然としない。

それが彼女の唯一の武装だった。心の奥底で当時の苦しみが呼び起こされても、かつて自分を拒絶した男の前で、少しでも「被害者」のような姿を見せることだけは許せなかった。

二人は再びどうしようもない気まずさに陥り、ただ壁の魔導装置が発する低い駆動音だけが冷ややかに響いていた。

その頃、俺は会場後方の高所にある手すりに跨り、両脚を空中でぶらぶらさせていた。

「お、始まるぞ」

俺は静かに呟いた。重厚な振動と共に、会場の煌びやかなシャンデリアが一斉に消灯し、赤き塔の内壁を囲む魔導導光条だけが幽玄な青い光を放ち始めた。暗闇の中で左目が微かに熱を帯び、「観測者」の視界が自動的に熱源と魔力の流れを捉えるモードに切り替わる。

スポットライトが舞台中央を射抜き、黒と金の正装に身を包んだウィル行長が、颯爽と登壇した。彼の成熟した落ち着いた声が拡声魔法を通じて、風之塔の広大な空間に響き渡る。

「紳士淑女の皆様、風城へようこそ。まずは、本博覧会の審査委員長——『勇者』の称号を持つ、クレド殿を歓迎しましょう!」

自分の名が呼ばれ、裏にいたクレドはゲンリに向かってぎこちなく手を振った。それは別れのようでもあり、挨拶のようでもあった。直後、彼は目を閉じ、わずか一秒でその纏うオーラを一変させた。

先ほどまでの挙動不審な男は消えた。そこにいたのは、戦場では冷静沈着、学術界では絶大な権威を持つ「勇者」だった。

彼は胸元の勲章を整え、胸を張り、有無を言わせぬ格好良さと強者の風格を漂わせながら、側門から大股で舞台へと上がっていった。会場から雷鳴のような拍手が沸き起こり、クレドはスポットライトの下で優雅に会釈した後、最高位の地位を象徴する審査員席へと悠然と腰を下ろした。

「……ギャップがありすぎるだろ」俺は眼下の光り輝く背中を見つめ、それからまだ裏の陰に残り、どこか孤独に見えるゲンリを振り返った。

「なあ、セシル」俺は後ろで欠伸をしている少女に、振り返らずに尋ねた。「先生が登壇した時、機嫌が悪すぎて会場をぶっ壊したりしないかな?」

「うーん……ゲンリ先生なら、」セシルは目をこすり、気怠げな口調で答えた。「たぶん幻術で全員をあの気持ち悪いワニに変えて、ステージの上で共食いさせるんじゃない?」

会場の光は演台のクレドに集中していたが、俺の「観測者」の視界では、風之塔の内部はすでに色とりどりのエネルギー線路で埋め尽くされていた。

「シエン、会場右側の暗がりに注意して。不明な魔力の流動を確認。今から確認に向かうわ」良奈の、冷徹で戦意を抑え込んだ声が、微弱な伝音魔法を通じて正確に耳元に届いた。

俺の表情が引き締まる。左目の瞳孔を絞り、視界をズームさせて余計な装飾をフィルタリングした。会場右側の巨大な石柱の影で、いくつか粘着質で不穏なエネルギーが蠢いている。

「了解。青い魔力の塊が見える。風属性だ、しかも流動速度が速い。普通の防御法陣じゃないな」俺は低く報告しながら、観測周波数を調整した。「良奈、あいつらは貴賓席の後方に回り込もうとしている。動きがプロだ」

「アウグストゥス、演台の脇に気をつけてくれ。あそこのエネルギー回路に干渉の予兆がある」続いて通信チャンネルで指示を出す。

「了解。演台下の加圧周波数を再計算中だ」アウグストゥスの落ち着いた声が返ってくる。背後で猛烈な勢いでノートをめくる音が聞こえた。

手すりでうたた寝をしていたセシルも、ゆっくりと体を起こした。普段は半分閉じている気怠げな琥珀色の瞳が今は大きく見開かれ、その瞳孔には階下の複雑な魔力の流れが映っている。彼女がこれほど「狩猟者」のような目をするのを、俺は初めて見た。空気中の魔力が、彼女の「覚醒」によって微かに震えている。

下を見れば、良奈の黒い衣服は暗闇の中で完璧な保護色となっていた。彼女の姿は豹のようにしなやかで、展示棚と影の間を高速で駆け抜け、青い魔力の源流へと肉薄していく。銀色の武士刀はまだ鞘の中だが、そこから放たれる冷気は観測者を通じて俺の感覚にまで伝わってきた。

そして反対側では、アイリンが合流地点で待機している。緊張で指先が震えてはいるものの、彼女の周囲で明滅する白い電弧は、俺の号令一つで会場の半分を覆う「キュウ」をいつでも解放できることを示していた。

「この博覧会……やはり単なる学術交流じゃなさそうだな」

会場内部で光と影が交錯する中、金属と大理石で構成された細長い通路を、三つの歪な影が隠密に前進していた。彼らは全身を光を吸収する特殊な黒装束で包み、強欲な光を宿した瞳だけを覗かせている。その手に握られた短刀は、微かな光の中で不気味な青色を帯びていた。

「一号、標的まであとどれくらいだ?」二号が声を潜め、興奮の混じった口調で尋ねる。

「もうすぐだ」リーダーの一号は、控え室へと続く角を凝視した。「情報によれば、講演が終わった直後に発表者が文献を持って授賞に向かう。その混乱に乗じて仕留める。あの価値千金の古代文献は俺たちのものだ!」

「人の物を盗むのは……あまり良い習慣とは言えませんね」

氷の砕けるような冷ややかな声が、何の前触れもなく彼らの背後で響いた。三人の黒衣の男たちが猛然と振り返ると、そこには黒い衣服を纏い、純白の仮面をつけた少女が静かに立っていた。良奈の右手は銀色の武士刀の柄にしっかりと添えられ、彼女から放たれる圧倒的な威圧感に、周囲の風元素さえも流動を止めたかのようだった。

「チッ、どこのガキだ?俺たちより泥棒らしい格好しやがって……」一号の目に凶光が宿り、短刀が狂暴な気流に包まれる。「構わん、邪魔な奴は殺せ。行け!」

三人の黒衣の男たちが三筋の青い流光となり、三つの死角から同時に襲いかかった。

「右方にて戦闘開始。支援は不要」良奈の冷静な声が、激しい金属音と共に伝音魔法で耳に届く。「ですが、全体警戒を強めてください。彼らの狙いが控え室の文献であることを確認。これが囮である可能性が高いです」

同時に、通信チャンネルからアウグストゥスの緊迫した声が聞こえてきた。

「ステージで異常発生!主照明を支える魔導回路が強制遮断されました。クレド殿が降り、ゲンリ先生が登壇する交替の瞬間に大規模な混乱を引き起こすつもりのようです!シエン、回線の損傷がひどすぎて物理的な断点が見つからない。『観測者』で核心の干渉源を特定してくれ!」

「了解!」俺の心臓が跳ね上がる。左目の灼熱が激痛へと変わっていく。「アイリン、左側の全非常口を注視しろ!混乱の中で最も突破されやすい場所だ!セシル、最大警戒。必要なら遠距離魔法でステージ下の異動を直接制圧してくれ!俺は今からアウグストゥスの援護に回る!」

俺は身を翻し、プラットフォームの鉄扉を蹴開けて、螺旋階段を猛スピードで駆け下りた。

「観測者」を暗闇の中で全開にする。視界の中、本来安定していた金色の魔力線路が、怯えた蛇の群れのように四散していた。そして演台の真下、その深淵に、ウイルスのごとく急速に広がり、風之塔のエネルギー供給を蝕む濁った緑色の魔力の塊を見つけた。

「こんな時に仕掛けてくるなんて……俺の『目』を通すとでも思ったか?」俺は奥歯を噛み締め、稲妻のような速さでバックヤードの廊下を駆け抜け、演台の基部へと突進した。

右側の廊下を通り過ぎる際、俺は手早く小型の防音結界を展開した。あちら側で爆発しようとしている殺戮の音を、完全に影の中に封じ込めるためだ。息を殺し、影のようにパニックになりかけた観客席の縁を掠め、舞台裏の機材センターへと飛び込む。

「シエン!早く!」アウグストゥスは巨大な魔導中枢の前で中腰になり、複雑な歯車に汗を滴らせていた。普段整えられている髪は乱れ、その声にはかつてない焦燥が滲んでいた。

「電力回路が外部エネルギーに強制乗っ取りされた!僕の感覚じゃこのホッピング速度に追いつけない……ソースを見つけてくれ!位置さえ特定できれば、一瞬で修復できる!」

「任せろ」

俺は深く息を吸い、左目の「観測者」を高負荷モードへと切り替えた。

視界の中、金色の魔導線路は墨をぶちまけたように真っ黒に染まっている。だが、その膠着した闇の中で、不自然な光を鋭く捉えた。俺たちの後方約五メートル、支柱の内側に隠された予備ケーブルの接点に、病的な緑色の魔力が寄生虫のようにエネルギー核を蝕んでいた。

「あそこだ!柱の後ろ、三番目の接点!」俺は猛然と指を指した。

一方、防音結界に包まれた狭い通路内。

ギャリィィィン——!

暗闇に火花が散り、良奈の冷徹な白い仮面を照らし出した。

風魔法を纏い、残像のような速さで動く三人の刺客を前に、良奈の姿は岩のように揺るぎなかった。銀色の武士刀が空中に完璧な円を描き、三方向から振り下ろされた短刀を正確に受け流す。

「……その程度?」仮面の下から、良奈の冷ややかな声が響く。

「なめるなァ!」リーダーの刺客が怒号を上げ、足元の風圧を爆発させた。その反動を利用して良奈の死角へ回り込もうとする。

だが、良奈の動きは風よりも速かった。腰をひねると、黒い裾が空中で蓮の花のように開く。彼女は退かず、逆に嵐の中へと踏み込んだ。手に持った鞘を生き物のように操り、一人の刺客の腹部を強打して壁へと叩きつける。

続いて、彼女の右手の力がわずかに緩み、刀身から眩い銀の輝きが漏れ出した。

それはただの刀光ではない。高度に圧縮され、空間さえも切り裂くほどの剣気だ。残された二人の刺客は、目の前が白光に包まれるのを感じた。彼らが誇る風のシールドは薄紙のように容易く引き裂かれ、刀を握る手首に激痛が走る。

「右方の脅威、残り二名」良奈が冷静に通信チャンネルで報告する。

彼女はゆっくりと重心を落とし、柄に手をかけた。その瞬間、三人の刺客が感じたのは、一人の少女ではなく、今まさに目を開こうとしている殺神の威圧感だった。

良奈の指が柄を軽く叩くと、カチリという澄んだ排莢音が刺客たちの耳に届いた最後の旋律となった。

「……ここで、終わらせます」

彼女が冷たく言い放つと、その姿は黒い稲妻と化した。もはや防御でも遊びでもない。抜刀した良奈は、その恐るべき実力を完全に解放した。銀色の武士刀が空中に二筋の平行な銀の弧を描く。正確、沈黙、そして致命。刺客たちは悲鳴を上げる暇もなく、短刀に纏っていた風魔法は霧散し、その体は力なく崩れ落ちた。

良奈は血の一滴も残さぬほど優雅に刀を鞘に納めると、背後の控え室の入り口へと向き直った。暗闇の中で門を守る死神のごとく。

同時に、会場前方のスピーカーから司会者の高らかな声が響き、薄暗いホールにこだました。

「それではお迎えしましょう。ストラトス・ヴィアが誇る最高の天才——ゲンリ殿です!」

予定されていた騒乱は、俺とアウグストゥスの介入によって爆発を免れた。主照明はまだ消えたままだが、全観客の視線は階段を上る黒い影へと注がれている。

俺は緑色の魔力を凝視し、アウグストゥスの指が空中で金色の導魔線路を編み上げ、濁った緑の光を少しずつ剥離し、浄化していくのを見守っていた。

「ふぅ……」俺は溜まっていた息を吐き出し、張り詰めていた神経をわずかに緩めた。「アイリン、左側に問題はないか?」

「ええ……順調だよ、シエン。みんなステージを見てるし、こっちには誰もいない」アイリンの声は緊張を含みつつも、落ち着きを取り戻していた。

「セシル?」俺は高所を仰ぎ見た。姿は見えないが、彼女がすべてを見下ろしていることは分かっている。

「会場全体、安全だよ」セシルの気怠げな声が通信で届く。そこには「嘘をつくのも面倒だ」というほどの自信が籠もっていた。「暗がりに隠れていたネズミたちは、さっきの良奈の技にビビったみたい。みんな引っ込んじゃったよ」

「了解」

俺は静かに答え、心拍数は次第に正常へと戻っていった。演台の縁を見れば、ゲンリがすでにマイクの前に立っている。照明はまだ戻っていないが、彼女から放たれる自信に満ちたオーラは、暗闇の中でスポットライトよりも眩しく輝いていた。

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