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異世界の観測者 ~今度こそ、大切に生きていく~  作者: WE/9
スウィヤ編

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17/60

再度の旅立ち

早朝の最初の一筋の曙光がカーテンの隙間を貫き、大理石の床に鋭い光のを落としていた。


俺は時間通りに目を開け、意識を一瞬で覚醒させる。この世界に来てから、寄宿舎のベッドで目覚めるのは、これが最後になる。


身支度を終え、俺は姿見の前に立った。今回は、毛玉の立ち始めた見慣れた制服には手を伸ばさず、スウィヤ中央軍から支給された新しい制服に袖を通した。その制服は強靭かつ軽量な質感を持ち、深い色調の中には落ち着いた暗い光が微かに流れている。


俺は「墨淵ぼくえん」を手に取り、慣れた手つきで胸元に紐を回し、背中にしっかりと固定した。


襟元を整える。鏡の中の少年の瞳からは軽薄さが消え、代わりに堅毅けんきな光が宿っていた。昨夜の良奈りなの言葉がまだ耳に残り、未来の悪意や未知の挑戦に対するプレッシャーはある。けれど今、この瞬間の俺は、かつてないほどの確かな手応えを感じていた。


この漆黒の長刀、この強大な仲間たち、そして世界の流れを見通すこの左眼。


俺はドアを押し開き、部屋を後にした。


廊下の突き当たりでは、アイリン、良奈、そしてアウグストゥスがすでに待っていた。背後の窓から差し込む陽光が、彼女たちのシルエットに金色の縁取りを与えている。アイリンは相変わらず元気な笑顔を浮かべ、良奈は黙って白いおもてを装着していた。三人はそれぞれ独自の方法で、俺と共に新たな征途せいとへ踏み出す瞬間を待っていたのだ。


「おはよう」


俺は彼らに微笑みかけた。


アイリンは寄宿舎のドアにだらしなく寄りかかっていた。深い紺色の新制服が彼女の白い肌を引き立てているが、手に持った大小さまざまな包みの多さは、寄宿舎の菓子の在庫をすべて空にしたのではないかと疑いたくなるほどだ。


「ふえぇ……シエン、助けて。このクッキーの袋、落ちそう!」


アイリンが情けない声を上げている。その手には今にも弾けそうな抱き枕まで押し込まれていた。


一方、アウグストゥスは「優雅」という二文字を極限まで体現していた。目の下のクマはまだ完全には消えていないが、彼の荷物――三つの巨大な金の皮箱は、手押し車の上に整然と積み上げられ、朝日の下で目に刺さるような成金趣味の輝きを放っている。


俺と良奈は目を合わせた。良奈は背中の銀刀以外、身軽な黒いリュック一つ。俺も「墨淵」を背負っているほかは、着替えと設計ノートを詰めただけの荷物だ。二人とも、引っ越しというよりは遠足にでも行くような身軽さだった。


「お前ら……一体何を持ってきたんだ?」


俺は目の前の「荷物の山」を呆然と見つめた。


「シエン、君は分かっていないな」


アウグストゥスは、実際には存在しない眼鏡を押し上げる仕草をしながら、優雅かつ傲慢な口調で言った。


「スウィヤは繁華だが、あそこの酒杯や羽根ペン、そして僕専用の『日の民の香料フレグランス』は、どこにでもある代用品で済ませられるものではない。優雅な生活こそが、実力の基石なのだよ」


「私だって! 私だって!」


アイリンは落ちそうな袋を必死に持ち上げ、理路整然(?)と言い放つ。


「あっちって戦場の予備軍みたいなところでしょ! 学校の裏にある店の特製ジャーキーが買えなかったら、私、戦うモチベーションがなくなっちゃう! これは私の『戦備食糧』なんだから!」


良奈は山積みの金の箱と床に散らばる菓子の袋を冷ややかに見つめ、面の下から深い無力感を漏らした。


「……これが、これから共に仕事をする戦友なの? 急に、龍の国の怪物のほうが戦いやすかった気がしてきたわ」


俺はその混乱しながらも生気に満ちた光景を見て、思わず笑って首を振った。これが俺のチームだ。優雅すぎる男、食いしん坊の雷法師、そして素直になれないツンデレ剣客。


「よし、文句を言うなよ」


俺は歩み寄り、自然な動作でアイリンの手から一番重そうな袋を受け取ると、みんなに手招きをした。


「行こう、馬車が待ってる。スウィヤでの生活は……おそらく、この荷物を運ぶよりずっと過酷だろうからな」


校門の前では、幻理げんり先生の夜のような黒髪が朝風に揺れていた。すべてを見透かすような彼女の瞳は、今、珍しく温かさに満ちている。


「それじゃ、さよならね。シエン、アウグストゥス、アイリン、『いん』……いいえ、良奈」


先生が人前で、面の下に隠された本名を自然に呼ぶのを聞き、良奈の背筋が明らかに震えた。面から覗く耳の付け根が、一瞬にして淡い緋色に染まる。


「さよ……さよなら、幻理先生」


良奈の声は蚊の鳴くように細く、きまり悪そうに俯いた。


「幻理先生、ありがとうございました! さようなら!」


俺たち三人は精一杯の力で手を振り、静かな早朝の空にその声を響かせた。


馬車がゆっくりと動き出し、見慣れた学校の赤レンガの壁を置き去りにしていく。


しかし、感傷的な雰囲気は、馬車に入ってから三分と持たなかった。アウグストゥスの金の巨大な箱が場所を取りすぎて、本来広いはずの車内がひどく窮屈になっていたからだ。


「よいしょ……」


左隣に座るアイリンは、昨夜興奮しすぎて眠れなかったのだろう。馬車が出発して間もなく、その小さな頭がコクリ、コクリと揺れ始めた。ほどなくして、甘い香りの混じった小さな寝息が聞こえ、彼女は俺の肩に寄りかかるようにして、無防備な眠りに落ちた。口角には満足げな笑みすら浮かんでいる。


そして右隣の良奈は、面をつけているため表情は分からないが、手持ち無沙汰な細い指が制服の裾をいじり続けている。退屈そうに辺りを見回しては、俺と目が合うと素早く逸らす。空間が狭いため、彼女の体温が伝わってくる。冷ややかな少女の香りがアイリンの甘い香りと混ざり合い、俺の心は少しばかり落ち着かなくなっていた。


アウグストゥスといえば、この男は非常に「空気が読める」奴だった。彼はあえて俺たちの向かいの隅に座り、腕を組んで、まるで観劇でもしているような揶揄やゆを含んだ笑みを浮かべている。もっとゆったり座れるスペースがあるはずなのに、わざとそこに縮こまり、視線で「兄弟、これが君の望みだろ。じっくり楽しみなよ」というメッセージを送ってくる。


左肩のアイリンの重み、そして右側の良奈の少し硬直した気配を感じながら、俺は心の中でアウグストゥスの薄情さを呪い、けれど同時にこう思わずにはいられなかった。


――「スウィヤ」へと続くこの旅は、それほど長くはないのかもしれない。


車内では、アイリンの規則正しい寝息が馬車の揺れと相まって、守守歌のように響いていた。この狭く、どこか曖昧な空気の中で、ずっと冷静さを保っていた良奈が、不意に俺の服の裾をそっと引いた。


「シエン……」


面の下から漏れる彼女の声は柔らかく、これまでに聞いたことのないような艶を含んでいた。そこには、少しだけ甘えたような、拗ねたような響きがある。


「……私も、私も寄りかかりたい」


言い終えるやいなや、彼女は温もりを求める仔猫のように、珍しく自分から俺に身を寄せた。彼女は冷たい面を外し、羞恥で真っ赤に染まった、息を呑むほど美しい素顔を晒した。そして、そのまま俺の懐に飛び込んできたのだ。


俺は硬直した。心臓が胸から飛び出しそうなほど激しく打つ。見下ろすと、彼女の瞳は秋の夜空を閉じ込めたように輝き、じっと俺を見つめている。少女特有の幽香と柔らかさが一瞬にして俺を包み込んだ。この「神級の報酬」を前に、脳内は真っ白になり、本能のままに彼女の肩を抱き寄せ、静かに答えるしかなかった。


「ああ……いいよ……」


二人の鼻先が触れ合いそうなほど近づき、空気が極限まで甘く煮詰まった、その時――。


「うわぁっ!」


俺の体が跳ねるようにビクッと動き、重心を崩して座席から滑り落ちそうになった。


驚いて目を開けると、そこには俺の胸に飛び込んでくる良奈の姿なんてなかった。左肩には、相変わらず幸せそうに眠り、あまつさえ紺色の制服に少しよだれを垂らしているアイリンがいるだけだ。


右を向く。良奈は背筋を伸ばして座り、銀色の武士刀を車壁に立てかけていた。彼女は退屈そうに外の景色を眺めており、その横顔はいつものように冷徹で清らかだ。甘えるどころか、こちらを一瞥もしていない。


「……ふぅ。やっぱり夢か」


額の冷汗を拭いながら、俺は「大事にならなくてよかった」という安堵と、「やっぱり俺の考えすぎか」という淡い落胆を抱いた。夢の中の良奈の優しい声を思い出し、俺は首を振った。近頃の能力停滞への焦りと、この狭い環境が、俺の脳内に妙な「幻覚」を作り出させたらしい。


「ヴォォォォ――ッ!」


その時、高く、それでいて重厚な角笛の音が朝霧を貫き、車内の静寂を打ち破った。


窓の外に目を向けると、遠い地平線に、巨獣のように壮大な白い都市がゆっくりとその姿を現し始めていた。雲を突く尖塔、密集する防御魔法陣が、陽光を受けて七色の輝きを放っている。それこそが、スクウィタン大陸の心臓――。


繁華なるスウィヤが、俺たちの視界に飛び込んできた。



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