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根暗な僕のスマホ履歴が、女神の神託を呪詛に変える  作者: 輝久実


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6/12

低電力モードの黙示録

「……う、嘘だろ」


阿久津の顔が、かつてないほど真っ青になった。


スマホの画面右上に表示された数字。それは、どんな魔王の軍勢よりも彼を絶望させるに十分なものだった。


【バッテリー残量が20%以下です。低電力モードに切り替えますか?】


「二十パー……。もう、そんなに……っ!」


「勇者様!? 突然どうされたのです、その世の終わりを見たような顔は!」


ガストンが心配そうに覗き込むが、阿久津はそれどころではない。このスマホが消えることは、女神の神託が消えること。それはつまり、この「勘違い暴走集団」の制御不能な殺意を止める唯一の術を失うことを意味していた。


「(……まずい。節電せつでんしないと。画面の明るさを下げて、無駄なアプリを消して……【て】……【停止ていし】……【て】……【点灯てんとう】時間を短く……)」


女神ルミナスが、阿久津の焦りに同期して叫ぶ。


「緊急神託です! 『【て】天災てんさいを、 【て】停止ていしせよ! さもなくば世界は、 りつく!』」


「天災を停止!? 勇者様、天変地異の前触れを察知されたのですか!?」


「世界が凍りつく……。了解だ、不浄な熱源(敵)をすべて排除し、冷却(除菌)しろという意味だな」


シオンが物騒な薬剤を調合し始め、セレナは


「天災より目立つ魔法を撃てばいいのですわね!」


と杖を振り回す。


「(……やめろ、お前ら! 騒ぐな! 振動だけで電池が減るだろ! 【し】……【静かに(しずかに)】しろ! *し】……【消費しょうひ】を抑えろ!)」


「追加神託! 『【し】の、 沈黙ちんもくを! 【し】焦燥しょうそうを、 あおりなさい!』」


「死の沈黙……! つまり、一言でも発した者は即刻斬り捨てろと!?」


ガストンが自分の口を両手で塞ぎ、周囲の騎士たちにも「喋るな(物理)」と無言の圧力をかけ始める。戦場のような緊張感が漂い、誰一人として呼吸すら満足にできない「死の沈黙」空間が完成した。


阿久津は、静まり返った中で必死にスマホを操作する。


だが、焦れば焦るほど指が震え、意図しない予測変換が爆誕する。


「(……電池でんち。【で】……【電力でんりょく】が欲しい。……魔法で【で】……【電気でんき】とか作れないのか……。……【か】……【かみなり】とかさ……)」


「最終神託! 『【で】伝説でんせつの、 【で】デッドエンドを! 【か】かみの、 【か】かみなりで!!』」


「伝説のデッドエンド……! 私の最大奥義、『神の雷(神罰)』を放てというのですわね! おーっほっほ、望むところですわ!」


セレナが絶頂の笑みを浮かべ、空に向けて特大の雷撃魔法を放った。


バリバリと音を立てて落ちる雷。それは不運にも、近くの森に潜伏していた魔王軍の斥候部隊を直撃し、文字通りの「デッドエンド(全滅)」をプレゼントした。


「……あ。……あぁ……」


阿久津は、雷の光に照らされるスマホの画面を見つめた。


そこには、無慈悲な通知。


【バッテリー残量 10%】


「(……もうダメだ。……これ、充電器じゅうでんき……。誰か、【じ】……【寿命じゅみょう】と引き換えに……【じ】……【充電じゅうでん】させてくれ……)」


「女神の神託! 『【じ】慈悲じひなき、 【じ】蹂躙じゅうりんを! 【じ】地獄じごくへの、 【し】招待状しょうたいじょうよ!』」


「寿命を引き換えに蹂躙!? 勇者様、ついに禁忌の術をッ!」


仲間たちが勝手に盛り上がる中、阿久津は涙目で確信した。


魔王を倒す前に、自分の胃とスマホが「デッドエンド」を迎えることを。


阿久津は、震える手で「魔力を電気に変える魔道具」という単語を打ち込もうとしたが、無慈悲にも画面がさらに暗くなった。


(阿久津の心境:……セレナ。お前、さっきの雷で俺のスマホを少し帯電させただろ。おかげで一瞬だけ5%増えたけど、心臓に悪いから絶許。……次は魔王の心臓をバッテリーにする方法を検索してやる……)

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