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根暗な僕のスマホ履歴が、女神の神託を呪詛に変える  作者: 輝久実


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5/12

潔癖の暗殺者

キャンプの翌日。阿久津たちは魔王軍が放った刺客、暗殺者シオンの標的となっていた。


シオンは木々の影から、音もなく一行を観察していた。


(……ターゲットを確認。だが、あの重戦士は脂ぎっている。あの女魔導師は香水がキツい。……不潔だ。近づきたくない……)


シオンは手袋をはめ直し、苦虫を噛み潰したような顔をした。彼は極度の潔癖症。直接手を下すことすら「汚れ」と感じるため、遠隔トラップを好む特異な暗殺者だった。


一方、阿久津は歩きながらスマホの画面を見て、暗い顔をしていた。


昨日の「バケモノ料理」のせいで胃もたれがひどいのだ。


「(……あー。胃がムカムカする。あいつらの声、鼓膜に**【き】……【きず】がつくレベルでうるさい。……【き】……【汚い(きたない)】。……【し】……【死滅しめつ】**してほしい……)」


女神ルミナスが、阿久津のスマホに流れる「負の感情」を聖なる福音として読み上げる。


「神託を授けます! 『【き】かがやける、 【き】機密きみつの、 【し】執行人しっこうにんよ!』」


「!?(輝ける機密の執行人……私のことか!?)」


シオンは息を呑んだ。存在を完全に消していたはずなのに、なぜバレた。


阿久津はさらに、スマホの画面をスワイプしながら呟く。


「(……さっきから視線を感じる。誰か**【と】……【特定とくてい】して、【た】……【たた】きたい。……【く】……【駆除くじょ】**しろ……)」


「追加の神託! 『【と】まされた、 【た】たましいを、 【く】口説くどとしなさい!』」


「私を……口説き落とすだと!?」


シオンは衝撃のあまり、持っていた毒針を落としそうになった。


これまで「陰気な暗殺者」としてしか見られなかった自分を、これほどまでに気高く、かつ情熱的に(予測変換で)評価してくれた者がいただろうか。


シオンはたまらず木陰から姿を現し、阿久津の前に跪いた。


ただし、地面に直接膝がつかないよう、マイ座布団を敷いてから。


「……お初にお目にかかる。輝ける機密の執行人、シオンだ。勇者殿……貴殿の放つ『不潔な世界を憎むオーラ』に、私の魂が共鳴した」


「(……うわ、また変なの来た。……座布団持ち歩いてるよ、この人……)」


「勇者殿。貴殿の命じられた『駆除』……理解した。この世の不潔なゴミ(魔王軍)を、一匹残らず消毒(暗殺)して差し上げよう。ただし、私の装備に触れないでいただきたい。菌が移る」


「(……あ、今の態度。俺をバイキン扱いしたな? 【ぜ】……【絶許ぜっきょ】。……【ふ】……【ふく】、**【は】……【】**ぐぞ……)」


「女神の神託! 『【ぜ】絶対ぜったいの、 【ふ】福音ふくいんを、 【は】はなちなさい!』」


「……福音。了解した。不浄なる者に、死という名の救済を」


シオンは無表情のまま、懐から強力な除菌スプレー(実は猛毒)を取り出し、周囲の茂みに向かって乱射し始めた。


「勇者様! 新しい仲間ですわね! これで私たちの『映え』がさらに加速しますわ!」


セレナが喜び、ガストンが「ハハハ! また一人根暗が増えたな!」と笑いながらシオンの肩を叩こうとする。


「触るな! アルコール消毒が間に合わん!」


シオンがガストンに毒スプレーを噴射し、キャンプ地は再びパニックになった。


阿久津は、スマホのバッテリー残量(65%)を確認し、深く深くため息をついた。


(シオン……お前の座布団、今度こっそり泥水に浸けてやるからな。……予測変換が『不法投棄』になるまで追い詰めてやる……)


パーティーが「脳筋」「承認欲求」「潔癖」で埋まり、阿久津の精神的ストレス(と予測変換の殺意)はピークに達しようとしていた。

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