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根暗な僕のスマホ履歴が、女神の神託を呪詛に変える  作者: 輝久実


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2/12

脳筋重戦士ガストン登場

騎士たちが「魂を叩き割り」に戦場へ消えていった後、神殿には静寂が訪れた。


……はずだったのだが。


「勇者様! お見事です! 先遣隊の魔物ども、貴方様の神託に怯え、自ら首を差し出して絶命いたしました!」


戻ってきた騎士団長は、返り血で真っ赤になりながら爽やかな笑顔を見せた。


阿久津は、彼らの後ろで引きずられている魔物の死体を見て、そっと目を逸らした。


(……ただの予測変換なのに、みんな目が怖すぎる。これが『解釈違い』がもたらす地獄か……)


「さて、勇者様。次は魔王軍の本隊を……」


「……いや、無理。【じ】……」


阿久津はスマホを操作し、今の心境を打ち込もうとした。


(**【じ】時間じかんおいてからにしてくれ。俺、【じ】持病じびょう**のしゃくがあるから……)


だが、女神ルミナスがその画面を覗き込み、キラキラとした瞳で叫ぶ。


「神託! 『**【じ】地獄じごくを見せろ。【じ】自業自得じごうじとくの【じ】実写化じっしゃか**よ!』」


「実写化ぁぁ!?」


騎士たちが再び色めき立った。


「なんと恐ろしい……! 本人の人生を最悪の形で再構成し、衆目に晒せということか!」


「地獄の実写化! 勇者様は死より惨い羞恥を望んでおられるぞ!」


「いや、違うんだ。今のは、さっき嫌いなアニメの実写化ニュースを見た時の履歴で……」


阿久津のボソボソとした声は、またしても無視された。


そんな狂乱の神殿に、一人の巨漢が足音を荒らげて入ってきた。


重戦士、ガストンである。


「俺を呼んだか! 『地獄の実写化』担当は俺だな!?」


ガストンは阿久津の前に膝をつき、その猫背の背中を見上げて感動に震えた。


「その陰気な佇まい……溢れ出る負のオーラ! 貴方様こそ、俺が求めていた『根に持つタイプ』の指導者だ! 俺は今まで、敵をただ叩き潰すことしか知らなかった。だが、これからは貴方様の予測変換に従い、ネットリと追い詰める術を学びたい!」


「……え、あ、はい……」


阿久津は引いた。完全に引いた。


だが、執念深い阿久津の指は、無意識にスマホを動かしていた。


(こいつ、声がデカくて暑苦しいな。【う】……【うざい(うざい)】。……でも、ガードとしては**……有用ゆうよう**かもな)


女神ルミナスが、またしても空気を読まずに宣言する。


「神託! 『【う】初陣ういじんを飾りなさい。【う】埋め尽くせ(うめつくせ)。【う】ウケる(うける)!』」


「初陣を埋め尽くして……ウケる……だと……?」


ガストンが目を見開いた。


「そうか! 敵を殲滅するだけでなく、戦場を笑い物(ウケる状態)にして、魔王軍のプライドを粉砕しろということか! 天才だ! 貴方は天才だ、阿久津殿!」


「……もう、どうにでもなれ」


阿久津は諦めて、スマホの「低電力モード」をオンにした。


電池残量、92%。


魔王を倒すのが先か、バッテリーが切れて「予言」が消えるのが先か。


あるいは、自分の「SNSの黒歴史」を女神に全部読み上げられるのが先か。


阿久津執の、ネットリとした異世界攻略が、今ここに幕を開けたのである。


(阿久津の心境:さっきガストンに足踏まれた。忘れない。絶対に予測変換で『足踏み拷問』を出してやる……)

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