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7.閃光

アイリス活躍回です。


「ど、どうしましょう!どこかに逃げ道は……」

「……残念ながら、迷路のカーテンは隣りどうし、上下左右にワイヤーで固定されていて簡単には動かせない。それに、さっきの迷路を通らなければ、ここからは出ることはできないんです……」


 迷路の出口を見つめたまま答える。この部屋の壁はコンクリートの打ちっ放し。扉のようなものはついておらず、迷路のみが唯一の帰り道だ。


「それって……」

「逃げ場はない……追い詰められましたね……」


(油断した。少し考えればこうなってしまうことは予測できたはずなのに)


 どうするべきか必死に考える。それでも、何もアイデアは思い浮かばない。迷路を淡々と進む赤警の足音が、迷路の中をさまよいながらも、徐々に徐々にこちらへと近づいてくる。その重たく鈍い音が、僕の思考の邪魔をする。


「謝れば許してもらえたり……しませんかね……」

「期待しないほうがいいでしょう。赤警は、一度対象として捕らえたものは、直ちに警吏アンドロイドとの連携のもと刑事施設へと送りこむことで有名です。……もしそうなってしまえば、ショウ君は……」


 その先を言うことはしなかったが、そうなってしまえば、危険動物として保健所へ連れていかれることになるだろう。僕は、今日出会ったばかりのこの二人、いや、一人と一匹に対して、悲しませるわけにはないと感じていた。


(でもどうする……時間はない……なにか……なにか──)




「ナギ、私に名案があります」







 ドスン──と、いよいよ迷路から現れた赤警に、僕たちは思わず固まってしまった。黒いブーツ、紺色の制服に、黒い帽子。その帽子に描かれた警棒のマークの赤色が、警備アンドロイドとしての最強を表している。


「あ、あれは……」


 僕たちが身じろぎもできずにいたのは、その赤警が手に持っているもののせいだ。


「イルカ?!」


 そう、一階ホールにあるはずの、イルカの電子模型。その2mほどの大きさの体の尻尾の付け根を両手で握り、まるで竹刀のように構えた姿で現れたのだった。


「あんなもの探してたのか……!」


 きっと、僕らに邪魔をされないように用意したのだろう。まったく、人工知能の頭が良すぎるってのも考え物だ。


「ナギ、あれで殴られたらショックで頭がもとに戻るかもしれませんよ」


 相変わらず辛辣だ。でも今はそんな彼女に期待するしかない。


「そうならないように頼むよ!アイリス!!」


 僕がそう言うと、アイリスは「了解しました」とだけ告げた。次の瞬間──


















 部屋全体が真っ白になった。


















「……今のうちです!さあ!」


 まだ視界が不確かなまま、僕は白河さんの手を引き走り出す。佇んだままの赤警の横をすり抜けて、迷路へと入った。


「アイリスさんの作戦、うまくいきましたね!」


 迷路の中を走りながら、白河さんは嬉しそうに言う。


「僕にとっては、横を通るときにイルカが振りかかってくるんじゃないかと、気が抜けなかったよ」


 アイリスが持ち出した名案とは、彼女がこの美術館の電気システムとスピーカーに介入して、いつもはほの暗いあの部屋に、爆発的に大量の閃光と大音量を発生させるというものだった。


 いわゆるフラッシュバン、つまり、簡易的な閃光手榴弾を、あの部屋でアイリスは発動させた。


「警備アンドロイドも、その頭部にあるレンズとマイクで視野の確保と音を拾っています。生身の人間ほど明順応は遅くないでしょうが、一瞬の隙を作ることは可能と推測されます。それに、タイミングを知っているこちらにとっては、目と耳をふさぐことはできるでしょうから、皆さんがダメージを受けることはないはずです」


 アイリスはそう言っていたが、実際に効果があるかはやってみないと分からなかった。もし効果が薄く、僕らが赤警の横を通るぬけることができなければ一巻の終わりだったのだ。


 僕は緊張からの解放で、思わず笑みがこぼれる。うまくいった。これで、あとは勝手口から外に出れば……。


 螺旋階段を上り、ホールの前のホワイエへと足を進める。勝手口は西廊下にある。開きっぱなしのホールの扉の前を走り抜け、廊下に出た瞬間。



「そんな!」



 僕より先に白河さんが声を上げた。


 勝手口への道が、封鎖されていた。ホールにあるはずの、オルゴールで。半径5mの円盤だったものが、四つ折りにされて、扉への通路の壁に突き刺さっていた。



対決まだ決着つかなかった!!


赤警頭良すぎる……!!()

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