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【和風ファンタジー】2話 (3)【あらすじ動画あり】

ご閲覧、ありがとうございます!

お忙しい方のための、あらすじ動画↓

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◆忙しい方のためのショート版(1分)

https://youtu.be/AE5HQr2mx94


◆完全版(3分)

https://youtu.be/dJ6__uR1REU

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【あらすじ】



時は大正と昭和の境目、帝都一の歓楽街・浅草。

少年・銀次は、口先ひとつで芸を売る香具師しょうにんとして生きていた。

震災で家族を失い、浅草の裏町〈幻燈町げんとうちょう〉に通いながら、人々が失った「大切なもの」を探し出す——それが彼のもう一つの仕事、「探しモノ屋」だ。


ある日、浅草紅団の頭領・紅子が失踪する。

銀次は、幼なじみで黒団団長の辰政とともに、紅子を探すことに。


銀次は果たして紅子を見つけ出せるのか。

そして、自らが探し続ける「失ったもの」は、どこにあるのか——。



「お前、よくこんなところに住んでいられるよな。迷ったりしないのか?」


巡査が追ってきていないか、壁際からそっと覗きながら辰政が言った。


「う〜ん。今は迷うことはないかな。抜け道も知ってるし——」


銀次は、慌ててその先の言葉を呑み込む。

このことは、誰にも言ったことはないのだ。


慌てて話題を変えようとした時、


「お前たちぃ〜そこにいるのはわかってるんだぞ!」


牛島の怒声が、魔窟に木霊した。


「ゲッ! 犬かよ、あいつは!」

通りの向こうからやってくる牛島を見て、辰政が体を引っ込めた。


「よし、こうなったら力づくで——」


辰政は袖をまくり上げ、路地から飛び出そうとする。

銀次は、慌ててその腕を掴んで止めた。


「ちょ、ちょっと待って! 辰っあん!」


どうやら、辰政の悪い癖が出たようだ。

「火事と喧嘩は江戸の華」とはよく言ったもの。

辰政は喧嘩と聞けば、すぐにでも飛び出して行ってしまう性質なのだ。


——けれど、今だけは止めなければ。

警官相手に喧嘩なんて仕掛けたら、それこそ豚箱行きだ。


(……しょうがないか)


銀次は一瞬だけ躊躇い、すぐに覚悟を決めた。

辰政の肩を軽くトントンと叩き、路地の奥を指さす。


「辰っあん、こっち」


指さした先には〈この先、抜けられます〉と書かれた看板があった。

辰政が、それを見て眉をひそめる。


「おい、銀。あれは——」


そう言いかけたとき、牛島の荒々しい足音がすぐ近くまで迫っていた。


「隠れても無駄だぞ! 今すぐ出てこい、悪ガキども!」

「くそっ! ほら、辰っあん! 急いで!」


銀次は辰政の腕をぐいと引いたが、辰政は踏みとどまったまま動かない。


「待てよ、銀。この先は抜けられないぞ。ここらじゃ〈抜けられます〉だの〈近道〉だのって看板があっても、たいていは行き止まりか、元の道に戻るだけだ。女たちが客を追い込む仕掛けだよ。ここは、俺が——」


辰政は拳に息を吹きかけ、喜々として来た道を戻ろうとする。

けれど銀次も、今度ばかりは譲らない。ここまできたら意地だ。


「大丈夫。この先に道はある。いいから、ついてきて!」


サッサと歩きだした銀次を見て、辰政は渋々ながら付いて行く。


案の定、先は行き止まりだった。


「ほら、やっぱり——って、うわっ!」


突然、袋小路の壁が、凹凸レンズを覗いたようにグニャリと歪んだ。


そこに現れたのは——細い一本の道だった。


細路の両脇では、鬼灯(ホオズキ)の提灯が並び、チラチラと誘うように揺れている。


「な、なんだ……これは……」


覗きカラクリのように急に現れた光景を見て、辰政は一歩下がった。


「おい、銀次。ここは? こんな道、前からあったか?」


戸惑いを隠せずにいる辰政をよそに、銀次は歩き始める。


「うーん。あるにはあるけど、誰にでも行けるような道じゃないんだ。——そら、ついた」


提灯が導くその先を、銀次は手で示す。そこからはガヤガヤした人の喧噪と、土砂の大通りが漏れ見えていた。


「ここは、浅草の知る人ぞしる裏町(うらまち)幻燈町(げんとうちょう)なぁりぃ」


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