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【和風ファンタジー】9話【あらすじ動画あり】

ご閲覧、ありがとうございます!

お忙しい方のための、あらすじ動画↓


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◆忙しい方のためのショート版(1分)

https://youtu.be/AE5HQr2mx94


◆完全版(3分)

https://youtu.be/dJ6__uR1REU

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【あらすじ】


時は大正と昭和の境目、帝都一の歓楽街・浅草。

少年・銀次は、口先ひとつで芸を売る香具師しょうにんとして生きていた。

震災で家族を失い、浅草の裏町〈幻燈町げんとうちょう〉に通いながら、人々が失った「大切なもの」を探し出す——それが彼のもう一つの仕事、「探しモノ屋」だ。


ある日、浅草紅団の頭領・紅子が失踪する。

銀次は、幼なじみで黒団団長の辰政とともに、紅子を探すことに。


銀次は果たして紅子を見つけ出せるのか。

そして、自らが探し続ける「失ったもの」は、どこにあるのか——。


「おいっ! 銀次、大丈夫か!?」


気がつくと、地面に横たわっていた。

目の前には、心配そうに覗き込む辰政と紅子。


「よぉ、お帰り」


目を覚ました銀次に、辰政がニカッと笑いかける。


銀次はホッと息をついた。

同時に、こみ上げてくるものがあって、顔を横に伏せた。


「大丈夫? 怪我したの?」

傍らの紅子が、唐突に銀次の顎を鷲づかみにする。


一瞬ぎょっとした銀次だったが、すぐにプッと吹き出しそうになった。

「な、なに?」と紅子が戸惑う。


「いや、ごめん……でもさ、なんかおかしくって……」


銀次は目元を拭いながら、笑みをこぼした。


「紅子って、自分がどこで生まれたのか分からないって言ってたけど、絶対、浅草だよ。さっきの啖呵、あれは——」

「あぁ」と辰政も笑い始める。


「確かに、さっきの啖呵は山の手のお嬢さんには出せない迫力だったな。普段どんなにすましていても、いざという時に伝法——勇み肌になるのが浅草の女だ。そういう意味じゃ、紅子も立派な浅草姐さんだ」


笑い合う二人の男を前に、紅子は居心地悪そうにしていた。

気のせいか、顔も少し赤い。


さすがにからかいすぎたかと思った銀次は、身を起こして彼女と向き合った。


「なあ、紅子。自分のことを人形だなんて言ってたけど、そんなことないよ。確かに記憶や感情は少ないかもしれない。でも、それってこれから創っていけばいいことじゃない?」

「……創っていく?」

「うん。誰かが言ってたんだ。なくしたものも、再生することがあるって。だから紅子も、新しい自分をこれから創っていけばいいんだよ。そうすれば、きっとその中に、昔の紅子がまた生まれてくるはず——って、誰が言ってたんだっけ、今の言葉……」


「おいおい、しっかりしてくれよ」


頭を掻く銀次を、辰政が小突く。


「でもまあ、俺も銀の案には賛成だな。エンコにいれば毎日いろんなことが起きるから、自分のことなんて気にしてる暇もないぞ」


うんうんと頷く銀次。その横で、呆然としていた紅子が、ふとふわりと笑った。


「確かに……そうかもね……」


初めて見る紅子の笑顔に、今度は銀次の頬が赤くなった。


「い、今の見た……? 辰っあん」

「あぁ、バッチリ——ってか、銀次」


辰政がハッとしたように右目に手を当てる。


「俺……見えるみたいなんだけど……」

「え!?」


銀次は慌てて手の中を見た。

握っていたはずの瓶は傍らで割れ、中にあった光の球もすでになくなっていた。


(もしかして、辰っあんが受け止めてくれた時に?)


「何で急に? 信じられねぇ」


喜びをにじませる辰政を見ていたら、銀次の頬も自然とゆるんでいく。


「辰政さん。きっとそれは、乙女の笑顔の効果ってやつじゃないですかねぇ」


その言い方がおかしかったのか、辰政は「なんじゃそりゃ」と呆れたように笑った。

横にいた紅子も、小さく肩をすくめたあと、ふっと笑い出す。


銀次は、自分でも気づかないうちに顔いっぱいに笑みが広がっていくのを感じた。


「——あぁ、青いのぅ」


雅やかな声に振り返ると、腕を組んだ陵蘭が立っていた。


「まったく、恩を売ろうとここまで来たのに出番なしとは。これだから友情だの愛だの、無償の何とかとやらは——」

「混ざりたいの?」


冗談で問いかけると、陵蘭は大げさに眉をひそめた。


「阿呆。代価の得られぬものなど、貰う気も、くれてやる気もないよ。ということで、わては帰らせてもらう——っと、その前に。銀坊」


陵蘭は銀次を見たあと、辰政と紅子を指さす。


「聞けば、あの二人は何とかいう組の頭領だそうじゃないか。それで思いついた。銀坊も表町にいる妖怪たちを集めて、ひとつ組を作ってみてはどうだ? そうすれば、奴らに何かあった時には、銀坊が動いてくれるだろう」

「……それって、また俺に使いっ走りをしろってことか?」

「まぁ、そういうことになるかのぅ。ほほほ」


高笑いを残して、陵蘭は颯爽と立ち去っていった。


彼の命令は絶対だ。

それが骨の髄まで染みている銀次は、ため息をつくしかなかった。


「……はぁ」


ふと気づけば、辰政がニヤニヤとこっちを見ている。


「なぁ、今の話。お前が本当に妖怪団つくるんなら、やっぱ名前は“浅草銀団”か? プッ、あんまカッコ良くねぇな」

「あら、そんなことないわよ。銀団、いいんじゃない?」


そう言いながらも、紅子は辰政と一緒にクスクス笑っている。


「くそっ、二人とも人ごとだと思って……」


ぶつぶつ言いながらも、銀次はふっと軽く息を吐いた。


——まぁ、何とかなるだろう。


辰政や紅子、共に生きていく大切な人たちがいれば、何があっても大丈夫。


それに——。

銀次は、ふっと空を仰いだ。


浅草の空は、どこまでも突き抜けるような澄んだ青色だった。


あの向こうには、きっと誰かが自分を見守ってくれている。

なぜか、そう思えた。


でも、それだけで十分に勇気が湧いてくる。


銀次は、まだ笑い続けている辰政と紅子に向かって言った。


「さぁて、帰ろうか。俺たちのエンコに」



〈完〉

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