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【和風ファンタジー】1話 (2)【あらすじ動画あり】

ご閲覧、ありがとうございます!

お忙しい方のための、あらすじ動画↓

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◆忙しい方のためのショート版(1分)

https://youtu.be/AE5HQr2mx94


◆完全版(3分)

https://youtu.be/dJ6__uR1REU

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【あらすじ】



時は大正と昭和の境目、帝都一の歓楽街・浅草。

少年・銀次は、口先ひとつで芸を売る香具師しょうにんとして生きていた。

震災で家族を失い、浅草の裏町〈幻燈町げんとうちょう〉に通いながら、人々が失った「大切なもの」を探し出す——それが彼のもう一つの仕事、「探しモノ屋」だ。


ある日、浅草紅団の頭領・紅子が失踪する。

銀次は、幼なじみで黒団団長の辰政とともに、紅子を探すことに。


銀次は果たして紅子を見つけ出せるのか。

そして、自らが探し続ける「失ったもの」は、どこにあるのか——。



下町の流儀は、「子ども(ガキ)の始末はガキで付ける」。

だから大人たちも子どもの喧嘩には無駄な介入はせず、本人たちが自分でケリをつけるまで放っておく。


だが、そううまくいかない時もある。

そんな時に頼りになるのが、辰政だった。


あの頃の辰政は、いわばガキ大将的な存在だった。

血の気の多い下町育ちのイタズラ小僧やおてんば娘たちの喧嘩をさらりと捌き、仲直りまでさせている。


銀次も、小さい頃から辰政にはずいぶん世話になっている。

——特に、あんなことがあってからは。


大正十二年九月一日、大震災が帝都を襲った。


地震そのものも凄まじかったが、その後に広がった火災はさらに深刻で、帝都は数日間、火の海と化した。


浅草も九割方が焼け、銀次たちが暮らしていた花川戸通りも全焼。


たまたま外で遊んでいた辰政と銀次は無事だったものの、二人の家族も、家も、灰燼(かいじん)に帰してしまった。


帰る場所を失った二人は、しばらく浅草を放浪し、最終的に浅草公園(エンコ)に辿り着いた。


当時、エンコには同じように震災で家を失った少年少女たちが溢れていた。

彼らはユスリタカリ——違法すれすれのインチキ商売で日銭を稼ぐ不良少年グレと呼ばれていた。


しかし不良といえど、大半は震災孤児。

生き延びるために、やむなくそうするしかなかった者も多い。


警視庁統計によると、震災後の浮浪性不良少年は帝都に四、五万人。その大部分がエンコに集まっていたという。


震災後、浅草は銀座などに先んじて復興を成し遂げた都市だ。


そのため、全国から不良少年(グレ)だけではなく、浮浪者(ルンペン)や乞食までが流れ込み、エンコは帝都一の娯楽場であると同時に、帝都一の貧民の溜まり場ともなった。


——光が強ければ、闇もまた深い。


闇の中に跳梁するのは人買いや女衒(ぜげん)、犯罪者や汚職警官……。弱い者を頭から喰らうような魑魅魍魎(おとな)ばかりだ。


だからこそ不良少年たちは、そんな大人たちから自分の身を守るため、それぞれの色を掲げた徒党を組んでいた。


——浅草黒団(あさくさこくだん)

エンコで二番目の規模を誇る少年団。その頭領こそが、辰政だった。


黒団は、地元浅草の孤児たちを集めて作られたチームだ。

エンコの少年団の中でも一番結束力が強く、頭領の人柄もあって、今の世には珍しい「弱きを助け、強きをくじく」義理人情派だ。


ただし、ひとつだけ欠点があるとすれば——

短気で一本気な浅草ッ子が集まっているせいで、やたらと喧嘩っ早い。ほとんど毎日のように、どこかしらで他のグループと小競り合いを起こしている。


平和主義——というより面倒くさがり屋な銀次は、人と群れるのが性に合わず、黒団のみならず、どこのグループにも属していなかった。


辰政は、そのことをとやかく言わない。

けれど時折、こうして何気ない顔をして、様子を見に来てくれる。


親も兄弟もいない今、辰政だけが唯一の昔なじみ。

だからこそ、その顔を見るだけで、どこかほっとする。


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