【和風ファンタジー】7話 (2)【あらすじ動画あり】
ご閲覧、ありがとうございます!
お忙しい方のための、あらすじ動画↓
=============
◆忙しい方のためのショート版(1分)
https://youtu.be/AE5HQr2mx94
◆完全版(3分)
https://youtu.be/dJ6__uR1REU
=============
【あらすじ】
時は大正と昭和の境目、帝都一の歓楽街・浅草。
少年・銀次は、口先ひとつで芸を売る香具師しょうにんとして生きていた。
震災で家族を失い、浅草の裏町〈幻燈町げんとうちょう〉に通いながら、人々が失った「大切なもの」を探し出す——それが彼のもう一つの仕事、「探しモノ屋」だ。
ある日、浅草紅団の頭領・紅子が失踪する。
銀次は、幼なじみで黒団団長の辰政とともに、紅子を探すことに。
銀次は果たして紅子を見つけ出せるのか。
そして、自らが探し続ける「失ったもの」は、どこにあるのか——。
「わかった。辰っあん、あとは頼んだ!」
「おう、任せとけ! ——おい、お前ら!」
辰政は片腕を振り上げ、黒団員に呼びかけた。
その腕で黒数珠が鈍く光る。
「女の尻を追っかけている軟派野郎どもに、浅草男の心意気を見せてやれっ!」
ワァァァ!
辰政の鬨の声とともに、黒団員が一斉に親衛隊へ突っ込んだ。
親衛隊も負けじと「紅子ちゃんのためにっー!」と迎え撃つ。
両者は、派手な音をたてて激突した。
銀次はその喧噪の中を身をかがめ、ひらひらとすり抜けた。
時折、飛んでくる腕を交わし、足払いをかけながら前進する。
無我夢中だった。
ようやく混戦を抜けた時、銀次は一度だけ後ろを振り返る。
通りでは紅黒が入り乱れ、殴る蹴るの大騒ぎだった。
その中心で、辰政が神輿頭のように暴れ回っている。
銀次はそれを確認すると、紅子を追って再び走り出した。
向かう先は——わかっていた。
この先に行くところがあるとすれば、あそこしかない。
紅子は、花屋敷を少し行った先の空き地に立っていた。
十二階跡。
震災後、十二階の残骸は爆破され、今はただの空き地になっていた。
かつて「西洋由来の最高峰の建築」と謳われた建物の影は、ひとかけらも残っていない。
銀次は静かに歩み寄る。
「紅子……だよな?」
声をかけると、少女は感情のない瞳でこちらを見た。
「えぇ、この姿の時はね」
「この姿……? どうゆうことだ?」
「気づいているでしょう?」
紅子は小首を傾げる。その仕草は、カラクリ仕掛けの人形そっくりだった。
「紅子も変装の一つなの。ただ私の場合、魂ごと変えるから、姿や性格も入れた魂によって変化する」
「魂……?」
銀次は彼女が何を言っているのか、さっぱりわからなかった。
「——人形なのさ、その女子は」
そのとき、銀次の袖から白い蛇がするりと這い出る。
陵蘭だった。
「この女子には、魂がない。普通、この状態になった者は気が狂って、やがて死ぬ。だが、そうはなっていないということは、大方、他人の魂を喰って生き延びているのだろう」
「他人の魂…⁈ じゃぁ、紅子も妖怪ってこと⁈」
銀次は信じられない思いで紅子を見た。
目の前の少女は可憐そのもので、魂をとって喰らう化け物には見えない。
銀次の動揺を感じたのか、紅子はふっと笑った。
「残念だけど、私は人間よ。一応ね」
紅子の声は、どこまでも乾いていた。
「確かに他人の魂をもらってる。でも、ほんの欠片だけ。小さな記憶や感情。それだけで充分なの。……けれど、欠片だから消耗も早い。そのたびに、私は魂を入れ替えなきゃいけない。姿や性格が変わるのは、その副作用よ」
ふと銀次は、あることに気がついた。
「じゃぁ、紅団員は——」
「そう、紅団員なんていない。全部、私の変装なの」
紅子は自らの胸にそっと手を置いた。
「浅草紅団の頭領・紅子という人格は、私が初めてもらった魂。でもこれは本物の人間の魂じゃない。紙の上に創られた、架空の人物の魂なの」
「紙の上……?」
「そう。だからこそ、長く持っている。……そして、私自身、この紅子が一番しっくりきてる」
銀次は、ごくりと息を呑んだ。
「長く……? じゃぁ、君はずっとこんな…?」
無表情のまま、紅子は首を振る。
「いいえ。私も以前は普通の娘だった気がする。こんな風になったのは、あの震災から——」




