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セレモニースーツ

作者: 嶋野 さくら

3月の足音が聞こえてきた今日この頃。

子どもの進学準備はしたものの、自分のことはすっかり忘れていた…という話。

この春、子どもの卒業式やら入学式が予定されているので、セレモニースーツなるものを出してみた。

入る…しかし、パツパツである。


このスーツを買ったのは、産休後仕事に復帰する時のことだ。

ちょうど仕事でちょっとした場に出る時にちょうどいい、品の良いスーツを買って、あっちこっちで着まわそうと思ったのである。


私の体形はとにかくころころ変わり、思春期には太り、病んでいる時にはガリガリ、ぱっと見やせてみえるけど体重はけっこうあるタイプ、そして産前産後は妊娠中毒症やらストレスやらでどんどん太っていった。


スーパーの催事場で買うべきか、とも思ったが仕事復帰で挨拶する時などに着ることも多いだろう、と思い、張り切って独身時代に好んで行った、デパート(いわゆる百貨店)内のブランドのお店に行った。


その頃はマタニティ服やら授乳服やらしか着ていなかったので、接客してくれる方(この後お姉さんと呼ぶ)の笑顔をまぶしく思いながら「ちょっとした場にも着られる上品に見えるスーツが欲しいのですが…」と言ったところ、「おまかせください」とおすすめを出してくれた。


子どもを預けて出かけているので、とにかくぱっと決めてしまわねば、と思い試着室に入ったのだが…

は…入らない。

そうそう。こういうお店ではあまり大きなサイズを扱っていない。

ショックを受けつつ、顔だけ出して「すみませんが、このお店で一番大きなサイズのスーツを出してもらえませんか」と言ったところ、お姉さんは笑い出し、「いや~そんな~!お客様のサイズですと…」と覗き込んできた。

チャックの閉まらないスカートを見て、助手的な若い店員さんに「一つ大きいのを持ってきて」とバックヤードに行かせる。

デパートのバックヤードがどんなふうになっているかわからないのだが、大抵時間がかかる(まず移動で時間がかかり、お姉さんたちは走ったりしない)し、それも入るかわからない。

「ちょっと待って!!入ったら買うから、一番大きいサイズのいろんな種類、あるだけ持ってきて!!」と言う私。

恥ずかしいけど、一つ大きいサイズじゃ入らないと思ったのだ。

そのたびにバックヤードに行かせるのは申し訳ない。


しかし、お姉さんたちはにこにこしながら、「お客様は痩せているので~…」なんて言う。


いいから、そういうの。


「本当、入らなかったら買えないので、お願いします。一番大きいの…何号かわからないけど。」

と言ったら、微妙な顔をしながら向かってくれる助手の子。

その間に中に着るブラウスも見る。

とにかく独身時代の服が入らないのだ。とりあえず仕事着だけでもなんとかしなければ。


助手の子が両手に抱えてきたスーツの中から体系カバーできそうなものを着る。

ぴったりだった。

号数は書けないが、このブランドでは一番大きいのだろう。

「やっぱり大きかったのでは…?」と言いながらカーテンを開けたお姉さんが固まる。


「うーん、ぴったりですね。組み合わせられるものがあればもう一着と、ブラウスもこのサイズでお願いしたいのですが…。」テキパキと言う私。

バックヤードに向かう助手。


お姉さんは申し訳ない、みたいな顔をしながらスーツとブラウスを選んでくれ、産休後に仕事に復帰するのだ、と言った私に「お仕事頑張ってくださいね」と素敵な笑顔を見せてくれた。


その後、仕事が始まると一気に体重が落ち、スーツはぶかぶかになったのだった…。




そんな、思い出のスーツ(達)

数年ぶりに袖を通したら、キツキツのパンパンなのである。

もう、あのお店では買えない。これ以上のサイズは無いのだから。


あと一か月弱。

痩せるか、新たに購入するか、二択を迫られている。

できれば痩せてもう一度この思い出のスーツを着たい。




































誤字報告、感想、☆など本当にありがとうございます。

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