デスゲームの朝。
今朝の朝食時のことだった。
父と母の様子がおかしい。
ひそひそというか、こそこそというか、どうするべきかわからず悩みに悩んでいるような。
普段、滅多にどころか絶対みることができない姿を見れて、なぜか僕まで不安になってきてしまう。
一緒になって悩んでるのをみるに、険悪ムードからの離婚とかじゃなさそうなので、そこは安心できるのだが……。
「えっとね、お母さん今日は学校行かないほうがいいと思うな……」
母が突然そんなことを言い出した。
前触れなんて何もない。本当に突然過ぎて、一瞬何を言っているのか理解できなかったが、ほんの少しの時間で何とか理解する。
意味がわからないことが理解できた事を理解した。
「えっ、何で?」
さすがに僕は聞き返した。
学校行かなくていいのなら、実質休みが一日増えるようなもので、親公認だから後ろめたさも感じない。
まさに、天国のような気分になれるはずなのに、どうしてか納得できない。
「え……えっと……実はね……?」
「母さん!」
何かを言い出そうとした母を止めるように、家中に響き渡る大きな声で、父が叫ぶ。
まるで、それだけは絶対に言わせないというばかりの気迫で、少し驚いてしまう。
「そうね……言っちゃだめなのよね……ごめんなさい。だけど、あなただって同じ気持ちのはずよ」
二人揃ってうつむき出した。
なぜだろう。何のことだが全然わからない。
僕の誕生日はとっくに終わってるから、サプライズというわけじゃない。
真理の誕生日はまだまだ先だから、今から話し合うことでもない。
父と母の誕生日の線も考えたが、自分たちの誕生日のことをこんなにも深刻そうに、学校を休ませてまで聞こうとするなんて普通に考えておかしい。
いや、そもそもなんで誕生日の線でしか考えられなくなってるのさ。
他にもなんかあっただろ。
「えっと、よくわかんないけど、とりあえず学校には行くよ。もともと今日は、真理と図書室で本読む約束してたし」
その言葉を聞いてか、なぜだかわからないけど二人は泣き出した!?
なんで!?
「そうか……行くのか……行ってしまうのか……」
「泣かないであなた……私達がマリンを信じなくて、誰が信じてあげられるのよ……」
学校行って来るだけなんですけど!?
なんだかわからないけど、大げさすぎない!?
なにこれ、ドッキリ!? カメラ仕掛けられてる!?
「えっと……ごちそうさま。じゃあ……行って……くるね?」
あまりの急展開ぶりに、ついていけないまま、僕は学校に向かうことになってしまった。
「お兄。私もついてく」
隣で平然と朝飯を平らげていた真理が、後ろからテトテトとついてくる。
この異常すぎる空間で、癒やしは何かと聞かれたら、僕は迷わず真理だと答えるだろう。
「やっぱり行くな!戻ってこーい!」
「嫌ー!行かないでマリンッ!行かないでーッ!」
家を出ても聞こえてくる二人の叫び声。
僕は今まで、朝はいつも平穏那ものだと思っていたが、どうやら間違っていたかもしれない。
以後、認識を改めることにしよう。
寝るということは、眠るということです。