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言っておくけど、やりたいわけじゃないんだかんな!

「私が力をためている間、君は私を死んでも守れ。作戦は以上だ。悪いが、わからないことに答えている時間はない。では始めるぞ」


マンションの屋上に不法侵入をはたしてすぐに言うことですかそれ!?


「はーい質問!質問!答えろー!」


「黙れ気が散る口を紡げ。武器ならこれだ、しっかり受け取れ」


ゴミを捨てるみたいに適当に放り投げられた武器をキャッチする。

別に武器のこと聞きたいわけじゃないんですけど……。

というか、平気に簡単に死んでもなんて言わないでほしいんですけど!?

僕死にたくないからね!?

とりあえず受け取った武器を確認してみる。


「いや殺す気かぁああああああ!」


なんとそれは、まごうことなきピコピコハンマーだった。


「こんな武器でどうあれと戦えと!?あの怪物の顔これでひっぱたいて倒せるとでも!?無理でしょ絶対!!それよりこんな武器で戦ってるの妖◯ウォッチでしか見たことないんですけど!?そっちでも唐辛子塗ってある程度の強化はなされていたんですけど!?ちょっと聞いてよ答えてよ!生きるか死ぬかがかかってるんだからさぁ!」


だーめだ全然こっち向いてくんない。

自分の世界ってやつに入ってるじゃんこれ。

なんか凄いオーラ的な何が出てるし。

紫色のオーラだし。

紫色ってなーんか強キャラ感あるんだよなー、ほんとよくわかんないけど。


まあそんな見た目強キャラな幼女が出したピコピコハンマーなんだから、きっと何かすごい力を持って……るなんて思えるわけ無いでしょーが!

所詮ピコハンなんだぞ!


そんなこんなしてるうちに、ドスンドスンと足音が……屋上で聞こえるくらいなんだから、やっぱり地響きの方がいいかな?

まあ、聞こえてきたんだ。凄い走ってる感じに。

走ってる感じって……まさかとは思うけど、本当に走ってきてるわけじゃないよね?

複数の怪物オブジェが向かってきてるから、それで奇跡的にそんな絶妙な地響きが聞こえてきてるとか絶対そんなんでしょ!


そんなわけがなかった。


ギュゲオオオオオオオオオオ!


この世のものとは思えない、つい最近まであるのが普通だと思っていたものから出ているとはお前ないほど恐ろしい鳴き声。

その声の主は怪物オブジェで、やっぱり走っていた。

何が嫌かってその怪物オブジェが人形で、走って体が揺れるたびに、全身から生えてる羽がパタパタ動くことで、口にしたくないけど気色悪いって叫びたい気分にさせてくること。

なんなら走り方はトンボ走りで、今まさに飛び立ちそうで恐怖をそそる。


「キショすぎんだろ!しかもあれ駅前のカップルの待ち合わせ場所にされてた怪物オブジェ!動かなきゃ芸術品みたいなのに、動くだけでここまで不快にさせてくるのなんなのさ!?」


刻一刻と迫ってくる鳥人間型の怪物オブジェ。

あれやれるの?このピコハンで本当にやれるの?

待っててもアイツはこっちに来るし、ユニバースコアは何も答えてくれないし、やれるかどうかじゃなくてやらなきゃ死ぬ!


「ええい!こうなったらヤケクソだ!あんしんしろ僕!失敗すりゃ死ぬだけだって笑えないって!あーもうとりあえずなんとかなれぇええええ!」


うだうだした考えを吹き飛ばすかのように、僕はピコハンで、迫る怪物オブジェの顔面をぶっ叩いた。


次の瞬間、バキョオオオオンっと変な音が鳴り響き、叩いた怪物オブジェは跡形もなく、細切れになった後に消し飛んだ。


「……え?」


比喩じゃない。

本当に、一叩きで細切れからの完全消滅が起こったのだ。

そんな、意味不明すぎるありえない光景をみた僕は、一瞬思考が停止した。

なにも考えられなくなった。


「……こ……こ……こ……怖すぎるでしょこれぇええええ!?」


思考が戻って最初の一言がこれである。

まあ正直しかたないってやつかもしれない。

なんせ、今自分が手にしているものは、この世のどんな兵器よりも強力な武器。

それを自覚したってだけで恐ろしいし、なんなら今まさに怪物オブジェが迫っていて、まさに恐怖の板挟み状態になっているのだから、意識を保ってられるだけえらいというものだ。


「たった一撃であれって出来ちゃだめでしょ!?えっじゃあもしかして、地球叩いたら地球爆散すんの!?ヤバいって!ヤバすぎるって!……落とさないように両手で持たないと」


もしこれが不注意で落下したら……なんてことを想像して、僕は両手でピコハンを持つことにした。

ただし、その肝心な両手はぷるぷる震えているのだから、いつ落ちてもおかしくない状況なので、地球のピンチは今だ継続中だ。


僕は震える手で、迫りくる怪物オブジェを何体も破壊した。


「なんで高く跳ねるのさ!?着地する前に壊さなきゃ、絶対ヤバいでしょあれ!!」


バッタみたいなやつとか。


「ランニングフォームは普通なんだから、変な被り物しながらヘドバンするの止めなさいよ!」


キツツキみたいにヘドバンしながら走ってくるやつとか。


「いやなに空とんでんの!?このピコハンに対空性能は無いって見てわかるでしょ!不平等!不平等!」


ナチュラルに空飛んでるやつとか。


「いや普通のライオンもあるんかい!」


あとシンプルに肉食獣なライオンとか。


「なんで怪物オブジェって、あんな生命への冒涜みたいな見た目が多いのやら……。もしかして、それがイレギュラーって呼ばれる原因なのかな……」


しかし、全員狙いはあくまでユニバースコアちゃん。

どんな怪物オブジェでも、必ず近づいてきてくれるところは、ゲームとしてはかなり良心的な設計だった。

じゃなきゃ空飛んでるやつとか壊せんて。


「よくやったカスカベ。イレギュラーを完全に消滅させる準備が整った!」


そしてなんやかんやで、ユニバースコアちゃんの力が溜まった!

端折りたくはないが、めんどくさいから端折りたい。

だから、ここまでダイジェスト。

まあ……あれだ。仕方がなかったってやつだ。


「やっと!?やっと終ったの!?でもこのタイミング!?もう流石にこれ以上は無理なんだけど!?もったいぶらずにさっさとお願い!」


時間を稼ぎきったとはいえ、現在マンションの四方八方を怪物オブジェに囲われ、僕の一人では本当にどうしようもない状況に陥っていた。

正直、ここから何しても勝てる気しない。

しかしユニバースコアちゃんの、余裕な表情は崩れない。


「いくぞ!真理開放!絶対イレギュラー抹消波動!」


ユニバースコアちゃんが溜めていた力が、一気に開放される!

ユニバースコアちゃんを中心に、オーラの海が溢れ出す!

そしてオーラを街を飲み込み、都道府県を飲み込み、海を飲み込み、ついに世界を飲み込んだ。

オーラに飲み込まれた怪物オブジェは、跡形もなく消し炭になった。

地面を歩く怪物オブジェはもちろん、空を飛ぶ怪物オブジェは一体も残らず全て高波に飲まれ、地中に潜んでいた出番のない怪物オブジェも、地面に染み込んだオーラに触れて、跡形もなく消し飛んだ。

つまり全滅。

30分のチャージを要しただけの必殺技が、まさかの終わりをもたらしたのだ。


なんかすごかった。

僕がモグラ叩きのように一体一体叩いて倒していた怪物オブジェが、流れ作業のようにどんどん消えていく。

それをみた人たちは、きっと奇跡だとか、神業だとか、魔法だとかって思うんだろうけど、僕は違った。


クソ。


そう、まるで自分が苦労して倒した敵が、インフレの波に飲まれただのクソザコと化してしまったかのように、消失感に苛まれていた。

そんな何もかもどうでも良くなった僕が絞り出した感想なのだ。

つまりクソ。

僕の心はただただクソで埋め尽くされていった……。



ははは。もうしんねぇや。ヘケ

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