決意
「お姉ちゃん、おかえりなさい。怖くなかった?」
華が蓮に抱きついて、口を開く。
「大丈夫よ。華こそ、ずっと待っていてくれてありがとう。疲れたでしょ? 家に、帰りましょう」
蓮は華の頭を撫でながら、声をかけた。華はゆっくりと、首を横に振る。
「私のことはいいの。お姉ちゃんの方が大変なんだから、しっかり休んで」
華は蓮の手を引いて、帰途についた。その後ろから、ウィリとジゼルが歩いてくる。
「ねえ、レンさん。オルテンデに行くんでしょ? いつ出発するの?」
ウィリが蓮に近づいて、問いかける。蓮は目を見開いた。
「ウィリちゃんは、オルテンデに近づくのも嫌なんじゃないの?」
「そうね。あの国には、良い思い出なんて1つもないわ」
「だったら、無理して行かなくても……」
「気にしないで。あの男は嫌な奴だったけど、言ってることは正しかったから。地の底は、アタシの庭みたいなものよ。アタシに任せてくれれば、危険なことなんて何もないわ」
ウィリは笑って言った。とうの昔に、割り切っていたのだろう。蓮は迷いを顔に浮かべて、俯いた。華が蓮の手を握って、その顔を覗きこむ。
「あのね、お姉ちゃん。私は、お姉ちゃんが決断したことなら、支えたいと思ってるの。ジゼルさんも、そうなんじゃないかな。ウィリちゃんは、やりたくないことをやるって言うほど、“いい子”じゃないだろうし……。オルテンデが危険な場所だとしても、私たちはそこに行く覚悟ができてるの。だから、気にしないで」
華の言葉に反論する人は居ない。蓮は少し考えて、言葉を発した。
「オルテンデの人のこと、何も分からなくて。あの人は、自分の事しか考えていないけど、判断自体は合理的だし……。あの性格なら、私たちに頼りきりになることは、ないと思うから。協力してもいいかなって、思っているの。だけど、それは皆を巻き込んでまで、やるべきことなのかなって思って。だけど、ウィリちゃんと華がそう言ってくれるのなら、頼っていいかな」
「うん!」
華は嬉しさを表すように、その場で一回転した。
「レン様が何も仰らなくとも、私は同行するつもりでした」
ジゼルは、それが当たり前だというような顔をしている。蓮は、はにかむように笑って、呟いた。
「……皆、ありがとう。今日は家に帰って、明日の朝に、オルテンデに向けて出発しましょ。ウィリちゃんには負担をかけちゃうけど、念のために行きも帰りも、地の道を通っていった方がいいわ」
「そんなの、全然大したことじゃないわ。任せて」
ウィリが胸を張る。蓮は目を細めて、そんな彼女を見守った。




