計画の全貌
「お、お姉ちゃん……私……」
華が震えた声を出す。
「ごめんなさい、私のせいだ……!」
華は目に涙を溜めている。ウィリが、その背をゆっくりと擦った。蓮は顔色を変えないで、首を横に振った、
「華のせいじゃないわ。悪いのは、メレディスさんなんだから」
「これは手厳しい。ですが、まあ、その通りです」
メレディスが笑い含みに、華に話しかける。
「お嬢さん。あなたは、何も悪くありません。悪巧みをしているのは、僕だけです」
メレディスの雰囲気が一変する。穏やかそうな様子は消えて、鋭い光がその目に宿る。
「あんたもあんたの姉さんも、何も失っちゃいない。損をしたのは俺の方さ。小娘だと侮っていたが、大したものだぜ、あんたの姉さんは」
口調が変化して、声も低くなる。蓮は呆れたように息を吐いた。
「それがあなたの本性ですか? あまり妹をからかわないでくださいね」
華は目を見開いて、蓮とメレディスを交互に見る。
「ねえ、どういうことなの……? 何が起こってるの?」
「……オルテンデの王族は、こんな人間ばかりよ。驚くようなことじゃないわ」
華の疑問に答えたのは、蓮ではなくウィリだった。
「何が起こってるかについては……アタシより、そっちの2人に聞いた方が早いんじゃない?」
ウィリはそう言って、ウィリと蓮がいる方を見た。
「私は、別に……ただ、警戒してただけ。メレディスさんとの取引も、何の条件もなしに受けるのは危険だって思って……。それで、魔法で絶対に破られない約束をしようとしたの。それだけよ」
蓮の言葉の後に、メレディスが続けて話す。
「俺は、王位を継ぎたかっただけだ。何もしなければ、オルテンデは滅びる。国も民もどうでもいいが、王子として生まれたのであれば、滅びだけは回避しなければならなかった。得体のしれない古文書に頼るのは、最後の手段だったんだが……。子供が2人来たときは、俺の運もついに尽きたかと思ったものさ。だが、水の神殿は修復され、帝国は崩壊した。その上、オルテンデとセルフォスの王を相手取って、一歩も引かずに自分の意思を伝えたというじゃないか。顔を見てみたくなって、ここに来たんだ。そうしたら、思ったよりも使えそうだったんで、弱みにつけこんで取引を持ちかけた。妙な魔法で縛られることは、計算外だったが……まあいいさ。俺の計画が成功すれば、ひとまずはそれでいい。お前の姉と約束したのは、お前たちに人を殺させないことと、奇跡の力を秘密にすること。制約がそれだけなら、俺はオルテンデの王になれる」
メレディスの言葉が、静かになった室内に響く。華は怖くなって、ウィリに抱きついた。




