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最強姉妹は異世界でも無双する。シスコン上等、家族仲が良くて何が悪い!  作者: 文字書きA
第二章 湖の国

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暗雲

水の神殿は、島の中央にある。修理された神殿の真新しい柱に背を預けて、その男は立っていた。日が完全に沈んで、(かな)とウィリを見つけた(れん)が、ジゼルを連れて神殿の奥から出てくる。蓮は男を見つけて、目を細めた。


「こんな夜更けに、お散歩ですか?」


「ええ。目が覚めてしまったので」


彼は暗がりにいて、顔がよく見えなかった。ジゼルが呪文を唱えて、周囲を照らす。白い光の中に、柔らかな笑みを浮かべた青年の顔が浮かび上がる。


「ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません。今日も、良い夜で何よりですね」


「ええ、本当に。でも、ごめんなさい。私たちは、もう家に帰らなくてはならないの」


「おや、それは残念だ。明日も、この神殿にいらっしゃいますか? よろしければ、ぜひ一度、お話をしてください」


「お話できるようなことがあるかしら。世間知らずの娘よりも、王子様のほうがよほど、物事について知っていらっしゃると思いますけれど」


蓮もメレディスも、一歩も引かない。(かな)は意を決して、口を開いた。


「お姉ちゃん」


全員の視線が、華に集まる。彼女は一瞬怯えたが、気を取り直して言葉を続けた。


「もう、帰らなきゃ。王子様も、何かご用がお有りなら、明日にしてはいただけませんか?」


姉が話していたことと、華が言葉にしたこと。内容自体は同じだが、1つだけ違いがある。華は、あの会見で、祭壇の前に立たなかった。蓮の言葉は聖女としてのものだが、華の言葉は、ただの子供のワガママだ。メレディスがどんなに高い位の人でも、子供のワガママには勝てない。少しして、彼は困ったような笑みを浮かべながら言った。


「……分かりました」


メレディスが蓮に向かって頭を下げる。それから、彼は1人で、夜闇の中に消えていった。


「ねえ、明かり、見えないんだけど」


彼が見えなくなってから、ウィリが小さな声で呟いた。島に街灯はない。夜になれば、足元が見えないほどに、暗くなる。にも関わらず、メレディスは明かりをつけずに歩いていった。


「明日は直接、家まで来るでしょうね」


穏やかで紳士的な、理想の王子様。だけどけっして、それだけではない。彼は、何のためにここに来たのか。真夜中の神殿で、何をしていたのか。蓮に、何を話そうとしているのか。それは全く分からない。


「大丈夫よ、ウィリちゃん。どんなことが起こっても、必ず私が解決するわ」


蓮の声は明るくて、前向きだ。悩んでも迷っても、大事な場所では腹を決めて、困難に立ち向かう。そんな蓮を見て、ジゼルが少しだけ、嬉しそうにした。

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