結論
「なるほど、それは道理だ」
セルフォスの王は、優しそうなお爺さんだった。杖をつき、優しそうな笑顔をみせて、彼が話し始める。
「だけど、ここはあまりにも、寂しすぎるのではないかな?」
「お気遣い、ありがとうございます。ですが、ここがいいんです。私も妹も、大勢の人に囲まれて祀り上げられるより、大事な人と一緒に慎ましく暮らすことを望んでいますから」
蓮の回答に淀みはない。周囲から、声が聞こえてくる。
『聖女だなんて聞いたときは、半信半疑だったけど……意外と、それらしいじゃないか』
『だけど、まだ子供だろ? 言葉の意味を理解しているのかな。アルベルティの跳ねっ返りが、妙なことを吹き込んだのかもしれないぜ』
それは、セルフォスから来た者たちの疑念の声。
『何だよ、つれないな。元々はウチの聖女だろ』
『奴隷に感情移入してるのかも。ほら、あそこに立ってる』
『あの魔法は、救世主を喚ぶって話だったのにな。随分と、ひどい結果になったじゃないか。喚ばれたのは、俺たちのための救世主じゃないのか?』
『失敗したのかもしれない。それか、子供らしいワガママかも』
それは、オルテンデから来た者たちの非難の声。
(……お姉ちゃん)
蓮は前に立つことで、全ての声を引き受けてくれた。華はそれを感じ取って、息を詰めて見守った。蓮は、どんな声が聞こえても、動じなかった。
「ええい、面倒な……。もういい。時間の無駄だ。私たちはオルテンデに帰らせてもらう。お前たちがなんと言おうとも、オルテンデの繁栄のために召喚したことには変わりない。なんとしても、オルテンデの役に立ってもらう」
そう言って、オルテンデの王は部下を連れて去っていった。その姿が見えなくなってから、セルフォスの王が口を開く。
「変わらないね、彼は。あの様子では、近々ここに、部下を送りこんでくるだろう。どうかな、君が望むなら、私の部下を預けてもいいが」
蓮は真剣な表情になって、深呼吸する。提案の形を取っているが、きっとそれは決定事項なのだろう。どう答えたとしても、セルフォスは部下を派遣する。だとすれば。
「……でしたら、それは是非、テオバルトさんにお願いしたいです。妹も、彼と親しくなったようですので」
蓮はせめて、人を指定することにした。顔を見て、話したことがある男を。セルフォスの王は笑顔のまま、頷く。
「なるほど。テオバルト、頼めますか?」
テオバルトは王の前に立って、深々と頭を下げた。そうして、会談は終わる。セルフォスの王は、テオバルトをエピナル湖に残したまま、国に帰っていった。




