会談
それからは、何事もなく日々を過ごした。そうして、会談の日がおとずれる。セルフォスとオルテンデの王が、護衛を引き連れて、水の神殿に現れた。
「人が多いね……。お姉ちゃんは、セルフォスにもオルテンデにも頼らないって言ったけど。本当に、そんな宣言をしてもいいのかな。怒られたり、しないかな」
「大丈夫でしょ、レンさんのことだもの。カナは信じて、見守っていればいいのよ」
神殿の隅で、ウィリと華が話している。お互いにしか聞こえないように、声を潜めて。
「でも、お姉ちゃんだけが聖女として、前に立つって……私も、同じ力があるのに」
「カナは、目立つことが好きじゃないでしょ? それに、2人に同じ力があるなんて言ったら、絶対に引き離されるわ。セルフォスとオルテンデ、どっちも力を欲しがっているんだから」
「……オルテンデはわからないけど、セルフォスも? だって、テオバルトさんは優しそうだったし……。ジゼルさんの生まれた国なのに」
「そうね。オルテンデと比べたら、いい国だって言えるかも。でもね、カナ。いい国ほど、長く生きるための方法を、よく知っているものなのよ。他の国と同じだけの力を持つのは、争うためじゃない。より長く、国を保たせるため。だから、聖女が1人なら、セルフォスは私たちの味方になってくれる。1人を2つに分けるわけにはいかないもの」
華は、心配そうな様子で、祭壇の前に立つ姉を見る。小柄な少女の隣には、背の高い騎士が立っていた。
「まずは、皆様にお知らせしなければならないことがあります。聖女などと呼ばれていますが、私はただ平穏に生きていきたいと願っている、普通の娘です。どうか、私のことは、放っておいてくださいませ」
神殿に集まった人々の前で、蓮が声を張り上げる。人々が動揺したような声を上げる中で、オルテンデの王らしき人が、疑念を顔に浮かべて言った。
「だが、あの時呼んだ聖女は、2人だったはずだ。もう1人の娘にも、同じ力があるのではないか?」
「どうして、そうだと言いきれるのですか? 奇跡の力を持つ人間が2人も呼ばれたことが、今までにあったのですか?」
「それは……」
オルテンデの王が言いよどむ。蓮は背筋を伸ばして、堂々としている。
「ないのですね。これは、私の推測ですが、私と妹は双子なのです。1人だけを招くと、もう1人が悲しみに暮れてしまうから、神様が気を使ってくれたのでしょう。妹は私の大切な家族であるというだけで、私のような力はありません」
その言葉に反論できる人間はいない。そのことを確認して、蓮は内心安堵した。オルテンデで行われた召喚術がどんなものなのか、実際に召喚を行ったオルテンデの王ですら、正しく理解していない。それは、今の姉妹にとっては、とても助かることだった。




