帰還、行いの結末
ウィリが開いた地の道を通って、エピナル湖に帰る。湖も家も、出ていったときから変わっていない。ウィリが玄関の扉を開ける。家の中も、変化はない。華がウィリを連れて、お風呂場に向かう。蓮は常備していた包帯と薬を取り出して、ジゼルの傷の手当をした。そうして、その日の夜は、何事もなく過ぎていった。
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それから、穏やかに日常が過ぎていく。ある日、外に出ていた橡蝠守が、人を連れて戻ってきた。見覚えがある、男の人だ。ジゼルが警戒するような様子で、口を開く。
「……何故、お父様がここにいらっしゃるのですか?」
ジゼルの父は、軍服を着て立っている。その姿は、以前にも見たが、その表情は以前とは違っていた。穏やかな笑みを浮かべて、彼が言葉を発する。
「お前ならば分かるだろう、ジゼル。お前たちがやったことの意味が」
ジゼルはため息をついて言った。
「……何のことです?」
「隠さなくていい。マクデブルク帝国の皇帝が行方不明になり、帝国は崩壊した。そんなことができるのは、私が知る限りでは、1人だけだ」
彼は、蓮に目を向けている。華にも同じ力があることは、気づかれていないのだろう。あの日、あの時。彼が目にしたのは、蓮の力だけだった。他に同じような力を持つ者がいることなど、普通は考えない。
「私たちは、何もしていません」
「ああ、私はその言葉を信じるとも。だが、世の中はそれでは回らない。帝国の力が弱まったことで、オルテンデが勢いづいた。国王が『オルテンデには、聖女がいる。これは、その聖女の力である』と発信し、セルフォスの王との会談も行われたが、聖女は会談の場には同席しなかった。この理由が何故か、お前たちなら分かるのだろう?」
男は、確信を持って話している。既に、ある程度は調べがついているのだろう。
「セルフォスとしては、オルテンデに後れをとるわけにはいかなくてな。帝国が力を失った後も、こうして動いているわけだ。セルフォスに協力してほしいとは言わない。お前たちにも、そのつもりはないだろう。だが、このまま何もせず、オルテンデに好き勝手に動かれるのも避けたいはずだ」
「……何を言うかと思えば、そんなことですか。世界がどうなろうと、国がどうなろうと、私たちは……」
「ジゼル。私は、お前たちのために言っているのだよ。このままでは、世界に無用な混乱が起きる。セルフォスとオルテンデの間にあるエピナル湖も、確実に巻き込まれるだろう。それが嫌なら、その少女が前に立ち、聖女として宣言しなければならない。セルフォスともオルテンデとも関わらず、穏やかに暮らしたいのだと」




