結果と後悔
その抜け道は、狭い洞窟に繋がっていた。壁にかけられた燭台に、蝋燭が置かれている。ジゼルが壁に近づいて、燭台を調べた。
「燭台が錆びているな。蝋燭も、全く溶けていない。この道は、一度も使われたことがないようだ」
そう呟いて、ジゼルは壁から離れた。その手に持っていた光の剣が解けて、光の渦に変わる。渦が周囲を包んで、4人がいる場所だけが明るくなった。蓮の寂しそうな横顔に、光が当たる。蓮はジゼルを見つめて、話し始めた。
「……ジゼルさん。ルナちゃん……ナターナエルくんは、最期に笑っていたんです」
「そうでしたか。であれば、彼はこの結末を望んでいたのでしょう」
「本当に、そうだったんでしょうか。私は、彼もお兄さんも、救うことができなかったんです。……ナターナエルくんがお兄さんを殺そうとしていたことにも、気づけなくて。こうして、最悪の結果を招いてしまった」
「レン様。最悪の結果とは、己の望まぬ場所で、望まぬ形で死ぬことを言うのです。ナターナエルは、そうではなかった。そして、貴女は生きていらっしゃる。であれば、これは最悪ではない。最善の結果だと、思うべきです」
「そうね」
ジゼルの言葉に、同意する声があった。ウィリだ。彼女は橡蝠守を肩に乗せて、微笑んだ。
「あの子のことも、皇帝のことも。アタシは、何も知らないわ。だから、これでいいの。全てを知っていた、あの子が選択した。その結果なんだから。レンさんとカナには力があるから、気にしちゃうのかもしれないけど……。強い力で解決できることって、案外、少ないものなんだからね」
俯いていた華が顔を上げて、蓮と目を合わせた。
「友達、だったの」
「……そうね」
「助けられたら、何か変わったのかな」
「分からない。でも、きっと……きっと、ナターナエルくんは、諦めないと思う。助けて、逃げたとしても。何度でも、ここに戻ろうとした。きっと、1人でも」
思考が同じ。行動も同じ。好きなものだって、おんなじだった。見た目は全く似ていなくても、ずっと一緒に生きてきたから。
「……行こう、お姉ちゃん。前を向いて、歩かなきゃ。そうじゃないと、きっと、ナターナエルくんが悲しむから」
華はそう言って、蓮と手を繋いだ。そうして、4人は無言で洞窟を進んだ。洞窟の出口から、光が差しているのが見える。4人は走って、洞窟から出た。どこまでも広がる青空。強い日差しに、目を細める。
「ねえ、あれって……」
ウィリが驚いた様子で、言葉を発した。目の前に広がるのは、一面の荒れ地。その向こうに、崩れた建物の跡がある。人の手で壊されて、瓦礫しか残っていない。だから、確信は持てなかったけれど。それはエピナル湖で見た神殿に、似ている気がした。




