一休み
ジゼルは、見慣れない様式の家を観察した。床も扉も、見たこともない形だが、それでも分かることはある。
(同じ物を建てることは、出来ないだろうな)
技術の問題ではない。これは、蓮の記憶にある家の再現だ。材料も構造も、蓮が知らない物は再現できていない。この家を再び建てるためには、蓮の魔法が必要になるだろう。華も同じことができるかもしれないが、いずれにしても、姉妹の力は必要だ。
(異なる世界の人間だというが、ならば何故、この世界の加護を受けている?)
既に失われたはずの加護の力が、幼い子供に与えられた。それも、異世界から訪れた人間に。その理由は、何なのか。ジゼルがそんなことを考えている間に、どこかに行っていた華が戻ってきた。
「お風呂、沸かしたよ。……どうしよう、皆で入るわけには、いかないよね?」
「流石に狭すぎるかな。2人なら一緒に入れると思うけど」
姉妹の会話を聞いたルナが、首を傾げながら言った。
「何の話をなさっているの?」
「ええと……お風呂って、なんて説明したらいいのかな」
困ったような表情の華の代わりに、蓮が口を開いた。
「大きな桶に、お湯を張ったの。体を洗ったり、お湯に浸かったりできるようにしているんだけど、初めて使う場所だし……。私か華が一緒に入るから、安心して」
「お湯に……? 分かりました。よろしくお願いいたします」
ルナは戸惑いながらも、頭を下げた。華が部屋の隅にいたウィリに、声をかける。
「ウィリちゃんも、一緒に行こ?」
「……アタシは、いいわ。お湯が勿体ないし」
「大丈夫だよ、お湯はたっぷりあるから。ね?」
華が近づいて、ウィリの顔を覗きこむ。ウィリは抵抗していたが、華は全く気にしなかった。やがてウィリが、諦めたように息を吐く。
「そんなに言うなら、一緒に行ってもいいけど。でもアタシ、その子と行くのは嫌よ」
ウィリがルナを睨む。華は蓮の方を見た。
「じゃあ、2人で入ってくるといいわ。大丈夫よ。ルナちゃんは、私が見ておくから」
蓮の言葉に、華が頷く。ウィリの手を引いて、2人は開いたままの障子から出ていった。その後を追って、橡蝠守が飛んでいく。蓮は2人を見送ってから、ジゼルの方を見た。
「2人が出てきたら、次は私たちの番ですね。ジゼルさんは、ルナちゃんと一緒でも、いいですか?」
「構いません」
ジゼルは、端的に答えを返した。ルナが少し不安そうにしながら、蓮の手を取る。蓮はルナを安心させようと、笑顔でその手を握り返した。




