先へ先へと
赤茶けた土の道を歩く。街の人が遠巻きに、4人を見ていた。4人はできるだけ早足で歩いて、セルフォスを囲む炎の輪を通った。雲が晴れて、陽の光が差し込む。雷雲域を抜けたからだと、少女たちは理解した。目の前には、薄茶色の大地が広がっている。華は植物が生えていない地面を見て、とても寂しい気持ちになった。
「これも、世界のバランスが崩れたから、ですか?」
「セルフォスの人間は、そう教わる。それが真実かは、分からない。私が生まれた時には既に、セルフォスの民は風と火の両方の恩恵を受けていた。いつからそうなったのかは、伝わっていないが」
華に聞かれて、ジゼルは眼前の光景を見つめながら言った。
「私が生まれた家……アルベルティでは、こう伝えられている。『かつて、世界には4つの神殿があった。水と火、大地と風。水の神殿にはエピナル、火の神殿にはフェウス、地の神殿にはオルヴァ、風の神殿にはセイル。4柱の神の加護を受けた世界は、それはそれは美しかった。ある時、セイルの神殿が焼け落ちた。フェウスはセイルを憐れんで、自らの神殿に招いた。これが、今もセルフォスに残る、風と火の神殿である』と」
「だから、なんですか? ジゼルさんが、不思議な魔法を使えるのは」
「……そうらしいな。あれは、神聖魔法と呼ばれている。特定の血筋の人間が持つ、特別な力だ。アルベルティは風の神と火の神の血を引いている、神官の末裔なのだそうだ。それが真実かどうかは、私にはどうでも良いことだがな」
「あの……ジゼルさんは、その力が、嫌いなんですか?」
ジゼルが目を細めて、息を吐いた。
「そうだな。昔は、あまり好きではなかった」
「今は……?」
「今の私にとっては、レン様を守ることが最優先だ。それを可能にするというだけで、この力にも……アルベルティの血にも、価値はある」
下を向いていた蓮が顔を上げた。華が笑って、その手を取る。
「お姉ちゃん、良かったね。きっとジゼルさんは、何があっても守ってくれると思う。それに、私も。お姉ちゃんのことが大好きだから、一緒に居られるのなら、それでいいの」
蓮は無言で頷いた。ウィリがそっと呟く。
「……アタシも」
ジゼルと蓮、そして華。3人が同時に、ウィリを見た。
「街で生まれ育った森人なんて、ネストウェズ山脈の集落でだって、きっと受け入れてはもらえない。アタシは、要らない子だったんだ。レンさんとカナに、出会うまでは。アタシに、一緒に行こうって言ってくれた。アタシは、それだけで良かった。だから、レンさんが決めたことなら、アタシは着いていく。……何より、アタシ自身が。一緒に行きたいって、思ったから」




