結論
「分かりました」
蓮は一歩も引かずに言った。
「そこまで仰られるのであれば、協力します」
男が安堵の表情を浮かべた。渦巻いていた炎と雷が消えて、ジゼルと男が同時に剣を引く。男が、話を続けた。
「そうか。ならば、私たちと共に……」
「ただし」
蓮は男の話を遮って、声を張り上げた。
「オルテンデにも、セルフォスにも。私たちは、どちらにもつきません。水の神殿が失われないように、エピナル湖に新たな街を築きます」
「子供だけで、何ができると――」
周囲から聞こえた嘲笑の声に、男が厳しい眼差しを向けた。それだけで、その声は聞こえなくなる。男は蓮に向き直って、頭を下げた。
「私の部下が失礼をした。エピナル湖の神殿は、管理する者もなく、荒廃していると聞く。何か必要な物があれば、遠慮なく申し出てほしい。世界を救うという大役を担ってもらうのであれば、こちらもそれに相応しい扱いをするべきだ」
蓮はその言葉に頷いて、ジゼルに手を伸ばした。
「ジゼルさん。……私たちのために、ここまでしてくださって、ありがとうございます。だけど私は、ジゼルさんにも、幸せになってほしいんです。エピナル湖に何があるのか、私は知りません。でも。セルフォスがジゼルさんにとっては居づらい場所で、オルテンデがウィリちゃんにとって居たくない場所だというのなら。どこか新しい場所に、新しい街を作りましょう。皆で、幸せに暮らせるように」
ジゼルがその手を取って、跪いた。
「承知しました。我が主」
華がウィリの手を引いて、駆け出した。
「お姉ちゃん!」
ジゼルが蓮の手を離す。蓮は振り返って、華とウィリを抱き止めた。
「華。ごめんね、勝手に決めちゃって」
「ううん。私も、お姉ちゃんとおんなじ気持ちだったもん。だから、いいよ」
「そっか。ありがとね、華」
姉妹は抱き合って、笑い合う。ジゼルが立ち上がって、声をかけた。
「エピナル湖に行くのなら、ここから真っ直ぐ西に進むのが近道です。途中、カルグランテという名の大河を越える必要はありますが、私たちであれば問題は無いかと」
姉妹のじゃれ合いに巻き込まれていたウィリが抜け出して、息を吐いた。
「……2人とも。行くなら、早く行こ」
姉妹が抱き合うのをやめて、体を離す。男が周囲の人間に告げた。
「皆は先に王宮に戻って、この事を報告してくれ。責任は全て私が取る」
周囲に集まっていた人々が、戸惑った様子で、ゆっくりと離れていく。最後までその場に残った男は、道の端に移動して、4人に向かって深々と頭を下げた。




