少女たちの談話
橙色の壁と床に囲まれた室内には、大きなベッドが1つきり。
「後で、家具をお持ちいたしますね」
そう言い残して、カミラは部屋から出ていった。
「……いや、どう見ても1人で使う大きさじゃないでしょ」
ウィリが呟く。蓮と華も、同じ気持ちだった。3人はなんとなく、椅子に座る。椅子は動物の革が張ってあって、体が当たるところには、柔らかい物が詰められていた。
「はー……ほんと、お貴族様だったのね。まあ、家名を聞いた時からそんな気はしてたけど」
ウィリの言葉を聞いて、華が首を傾げた。
「家名を聞いたこと、あるの?」
「アタシが直接聞いたわけじゃないけどね。言ったでしょ、アタシはアンタたちが召喚された場所に居たんだって。カナとレンさんが王宮から逃げて、アタシは連れ出されたんだ。アタシのこと、要らないって言ってた奴らがさ。カナのことは、絶対に必要だから連れ戻せって、命令してくんの。だから気になって、アートと一緒に追いかけたんだけど。ジゼルに追い返されちゃったから、アートに残ってもらって、アタシは逃げたの」
そう言って、ウィリは肩に止まっている橡蝠守の羽を軽く撫でた。華が問いかける。
「それって……ねえ、ウィリちゃんはその時、黒い服を着てた?」
「着てたけど、それが何?」
ウィリの答えを聞いて、華が目を見開いた。蓮も驚く。あの時、2人を追いかけてきていた人影。同い年の少女だなんて、思いもしなかった。
「じゃあ、ウィリちゃんだったんだ。ずっと追いかけてきてたのって。声を掛けてくれたら良かったのに」
華に言われて、ウィリが笑う。
「あの時は、アタシもアンタたちのことをよく知らなかったから。ジゼルがアンタたちから離れることもなかったしね」
「そっか……」
華が下を向く。ウィリは慌てた。
「ちょっと、そんなに落ち込まないでよ。なんにも言わずに追いかけてたんだから、怖がられるのなんて当たり前だって」
「でも、その間、ずっと1人だったんだよね?」
「1人じゃないよ。アートが居てくれたから」
橡蝠守がその場で旋回して、机に下りる。橡蝠守は、小さな足で這うように歩いて、華の前に来た。目の前で止まって羽を広げた橡蝠守に、華は手を伸ばす。橡蝠守は華に触れられても動かず、机に張り付いていた。
「大人しいね」
「まあね。橡蝠守ってさ、危険な生き物じゃないんだ。人間に危害を加えることもなくて、アタシと関わらなければ、穏やかに暮らせてたと思う。アタシが、アートを巻き込んじゃったんだ」
ウィリは寂しそうに言った。橡蝠守が飛んで、ウィリの頭に移動する。華と蓮は何も言わずに、ウィリの頭の上にいる橡蝠守を見つめていた。




