セルフォス
街の外壁が見えてくる。遠くからはただの壁にしか見えなかったが、近づいて分かった。それは、燃え盛る炎、そのものだった。橙色の炎が、街の周囲を囲んでいる。炎の向こうに、赤い家が見えた。ウィリが恐る恐る、口を開く。
「まさか、ここを通り抜けるつもり?」
「そうだ。心配するな。風の精霊たちに認められたのなら、火の精霊も通してくれるはずだ」
ジゼルの言葉に勇気づけられて、蓮は風に揺らめいている炎に手を伸ばした。熱が伝わってくるが、火傷することはない。
「本当ね。大丈夫よ、ウィリちゃん」
蓮はそう言って、炎の中に入った。熱い空気に包まれる。視界がオレンジ色に染まる。足を止めずに、真っ直ぐ進んで。蓮は炎の壁を通り抜けた。赤茶けた地面と、赤い煉瓦造りの建物が、目の前にある。すぐ隣に、ジゼルが居た。後ろを振り向けば、華とウィリが手を繋いで、炎の中を進んでいる。2人が炎の壁を抜けるまで待って、ジゼルは告げた。
「ひとまず、休める所に行く。着いてきてくれ」
蓮と華とウィリの3人は、ジゼルの後に着いて、赤土の道を進んでいった。煉瓦造りの家の中でも、一際大きな広い家。家というよりも邸宅と言う方が相応しいような、そんな建物の前で、ジゼルが足を止める。大きな扉に、透明な赤い器が取り付けられている。彼女がその器に触れた瞬間に、光が器の中に生まれた。光が動く度、高く澄んだ鈴の音のような音が響く。しばらくして、音が止んだ頃。邸宅の扉が開いて、給仕服を着た女性が顔を出した。女性はジゼルの顔を見て、目を見開いた。
「…………お嬢様?」
「ただいま、カミラ」
ジゼルは、笑って言った。女性が、蓮たちの方を見る。
「後ろの方は、お友達ですか?」
「……まあね」
「そうですか」
女性が、穏やかな笑みを浮かべた。
「お嬢様がお帰りになられるなんて。旦那様も奥様も、きっとお喜びになられますわ」
ジゼルは何も言わずに女性の横をすり抜けて、邸宅の中に入っていった。残された3人も、女性に招き入れられて、邸宅に入る。暖色で統一された内装は、この街に入る時に通ってきた炎の中で見た光景と、よく似ていた。
「レン様。私は、父母と話をしてきます。先に、お部屋でお待ちください」
ジゼルが、蓮にだけ聞こえるように小声で言う。蓮は迷いながらも頷いた。それを見たジゼルが、邸宅の奥へと姿を消す。カミラと呼ばれた女性が、3人に声をかけた。
「お部屋は、ご一緒ですか?」
「はい。同じお部屋だと、助かります」
蓮の答えを聞いたカミラが、3人を広い客室に案内した。




