山の中
「今更だけど、森人って、どんな人たちなの?」
華に聞かれて、ウィリが戸惑う。
「どんなって……アタシは、よく知らないんだ。アタシは、街で生まれた森人だから。だから、アイツに聞いて」
そう言って、ウィリはジゼルに視線を向けた。ジゼルは歩みを止めずに、話し始めた。
「そうだな。森人は、大樹の上に木製の家を建てて暮らしている。基本はその森に住んでいる生き物と共生し、生まれた森からは出ないものだ。奴隷となった森人の子どもは、幼い頃に親から引き離されて、地の精霊使いとして育てられる。才能を発揮できれば良し、できなければ捨てられる。橡蝠守を連れているところから考えて、ウィリは前者だったのだろう」
ジゼルの言葉を聞いた華が、ウィリの側を飛んでいる橡蝠守を見る。ウィリは笑って言った。
「この子には、アートっていう名前をつけたんだ。偵察にしか使えない、弱い生き物だからって、アイツらは嘲笑っていたけど。アートは、私の友達なんだ」
「そっか。確かに、可愛いかも。私ども、友達になってくれるかな」
「ん……そうね、怖がりだから、慣れないうちはアタシ以外には寄り付かないかもだけど。カナなら、多分、大丈夫」
橡蝠守は素知らぬ顔で、ウィリの頭上を旋回した後に、彼女の肩に止まった。華はウィリと目を合わせて、互いに笑う。強い日差しから隠れるように、木陰を通って4人は進む。細い水流に沿って、山を下る。風の音と、生き物の声が聞こえてくる。4人はやがて、少し傾斜が強い斜面に行き当たった。ジゼルとウィリが先に下りて、連がジゼルに、華がウィリに手を貸してもらって下りる。山道を下っていくうちに、小さな川が別の川と合わさって、大きな流れになっていく。斜面の傾斜が緩やかになってきて、ようやく山を下りることができると思ったところで。ジゼルが、蓮に声をかけた。
「少し、お待ち下さい」
蓮が足を止める。その少し後ろで、華とウィリが同じように立ち止まった。
「マクデブルクの正規軍が行軍しています。念のために、遠回りをすべきかと」
木々の向こうに、広い平原が見える。風になびく草を踏みつけて、甲冑を身に纏って大剣を背負った男たちが、一糸乱れぬ動きで進んでいる。赤い、大きな旗が、はためいていた。
「あら、ホントね。帝国の旗を掲げてる。近くに帝国の首都があるから、そこから来たのかしら。にしても、アンタよくあれが正規軍だって分かるわね」
ウィリの言葉を聞いたジゼルは、苦笑しながら言った。
「私は、マクデブルクの軍属だったこともあるからな」
そんな話をしている前で、マクデブルクの軍隊は北上する。ジゼルが目を細めた。
「向かう方向は、同じか。厄介なことになりそうだ。」




