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白い騎士と、黒い暗殺者

森は広く、明かりは枝の隙間から差し込む太陽光しかない。木々の隙間を通って、奥へ奥へと進んでいった、その先に。少し広くなっていて、中心に泉がある。そんな場所があった。


「ここまでは、誰も追いかけてこないと思うから……少し、休もうか」


(れん)の言葉に、(かな)(うなず)く。


「ねえ、お姉ちゃん。ステータスって、なあに?」


「それは……能力、かな。その人の持っている才能とか、そういうものだと思う。華も、私がやっていたゲームを見てたでしょ?」


「うん。よく分からなかったけど、お姉ちゃんと一緒に遊べたから、面白かったよ」


「それなら良かった。それで、ゲームだとボタンを押せば自分の状態を確認できるでしょ? さっき私がやったのは、それと同じこと。私たちには、きっと、特別な力がある。それも、私と華、どっちにも。だから……」


「私とお姉ちゃんは、すっごく強いってことでしょう? 知ってるわ」


華が、笑顔で断言した。蓮は、少し笑ってしまった。


「……うん、そう。そういうことだよ」


異世界に来たことも、未だに状況が掴めていないことも。不安だらけの状況でも、華がいるなら頑張れる。蓮は改めて、そう思った。


「ところでお姉ちゃんは、気づいてる?」


華に問いかけられて、蓮は目を丸くした。


「どうしたの、華」


「えっと……ほら、あそこ」


華が、泉の向こう側に視線を向ける。泉は大きなものではなかったから、目を凝らせば反対側の様子が見えた。そこに居るのは人間だ。壊れかけた白い鎧を纏って倒れている、白い人影。


「大変! 助けに行くよ、華!」


蓮は叫びながら、倒れている人に駆け寄った。鎧に覆われていない首元に触れて、目を閉じる。血液の流れる音、肌の温かさが感じられて、蓮は詰めていた息を吐いた。


「お姉ちゃん、その人……」


「大丈夫。多分、生きてる」


泉の水を手で汲んで、その口元に持っていく。華はその人の頭を起こして、手で支えてくれている。何度か水を飲ませて、様子を見る。その人は(まぶた)を震わせていたけれど、やがて目を開けて、蓮を見た。


「…………ああ、ありがとう、ございます」


凛とした声音の、その人は。動かない体を、無理やりに起こそうとした。


「待って!」


蓮はそれを制止しようとして、声をかけた。


「まだ起きない方がいいわ。私たちが、お医者さんを呼んでくるから……」


「――いいえ」


その人は、口元に笑みを浮かべて、起き上がった。


「助けられたのですから、恩を返すのは当然です」


手元に落ちていた折れた剣を地面に刺して、それを支えに立ち上がる。その人が見ているのは、2人の背後。


「去れ。今の私は、彼女らを守る騎士。この私ある限り、お前の凶刃は届かぬと知れ」


蓮と華が振り返ると、そこには黒いマントとフードで身を隠した人が立っていた。黒い人影は何も言わず、騎士と向かい合う。蓮は華を背後に庇うようにしながら、人影を見つめた。永遠とも思える時が過ぎて、やがて人影は立ち去った。騎士は気が抜けたように、その場に膝をついた。




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