妹の願い
皆が、華のことを可愛がってくれる。いつだって、華に気を遣ってくれる。だけど。
『双子なのに、全然似ていないのね』
家の外の人たちは皆そう言って、蓮と華を切り分けようとするから。華は絶対に、蓮の側から離れようとしなかった。この世界でも、それは同じ。だけど、本当は気にしていた。自分が居なければ、姉は自由に生きられるのではないかと。この世界に来てから、その思いは段々と強くなっていた。だって、知らない人たちが必要だと言ったのは、華だけだったから。知らない人に囲まれて、知らない場所に閉じこめられる。どんな言い方をされたって、それはとても恐ろしいことだ。でも。蓮はあの人たちにとって、どうでも良い存在だった。華を連れて行かなければ、姉だけならば、こうして追われることも無かったはずで。今だって、華の手を離して置いていけば、姉は自由になれるのに。
『私は諦めないから、華が諦めないでいてくれるなら、きっと大丈夫』
蓮はいつだって、繋いだ手を離さないで、笑っていてくれる。だから、華は蓮が幸せでいてくれるのなら、なんだって出来ると思っている。今だって、そうだ。
「私も、諦めない」
繋いだ手を、強く握りしめる。姉の隣に立って、ジゼルに向かって宣言する。
「諦めたく、ない。お姉ちゃんと、一緒にいたいから」
ジゼルは華と蓮を見下ろして、穏やかな表情になった。そうして彼女は2人に近寄って、膝を折って目線を合わせた。
「私の言い方が良くなかったな。謝罪する。ここまで付き合っておいて、放り出すわけにはいくまいよ。それは、私が目指す騎士の在り方では無いからな」
そう言って、ジゼルは微笑んだ。
「諦める必要はない。ただ、道を変えるべきだと思っただけだ。橡蝠守がお前たちに見つかったことで飛び去ったのなら、追っ手にもその事は伝わっているだろう。この洞窟は、一本道だ。相手は、追いかけるよりも、待ち伏せる方が確実だと考えるはずだ。まずは、この山の外側を通って迂回する。その方が待ち伏せに遭わず、安全に進めるはずだ」
ジゼルの言葉を聞いて、姉妹は明るい表情になった。ジゼルの話は、更に続いた。
「そして、追っ手についての推測だが。獣の子供は都市に馴染めない。私たちが街から街へ、街道を歩いていくのなら。獣の子供は、追いかけられなくなるだろう。また、獣の子供は人に懐かない。彼らは、手綱も無しに使役出来るような存在ではないんだ。だから、追っ手が獣の子供なら、その近くには必ず使役者が居る。つまり、追っ手は1人ではない。だが、マクデブルクが見逃しているのなら、片手の指の数よりは少ないのだろう。私の考えでは、追っ手は使役者と獣の子供が1人ずつ。私たちが選んだ道に合わせて、どちらかが先行して追いかけてきている。獣の子供に対応しきれないのなら、ここから最も近い街に入ればいいんだ。火と土の街、炭鉱で栄えたオルヴェントに」
姉妹は、その提案を受け入れた。不安はない。愛する家族と繋いだ手があって、信頼できる大人が居たから。




