第12話 応用
第12話 応用
「それにしてもどうやって海を
渡るんです?」
宗也が聞く。
「君のソウルスキルだよ。」
宗也を指差しながら自慢げに言う上藤。
「俺の…ですか?」
少し不安げな宗也。
「君のソウルスキルは少し複雑だが、
試すにはちょうどいい、あの本の
知識も使って皆を乗せるイカダを
作ってくれ。もちろんオールも。」
「あの本ってこれですか?」
そこそこ分厚い本を出す。この本は
出発前に上藤の同僚から貰ったものだ。
〜回想〜
出発の前日、公園にて。
「奈華木くんだよね?」
宗也に話しかける女性。
「あ、はい。あなたは?」
突然の話しかけに驚きつつ質問する宗也。
「私は五十嵐羽菜。
上藤さんの同僚に当たるかしら。」
丁寧に自己紹介する五十嵐。
[彼女は五十嵐羽菜。
上藤の同僚で上藤に密かに心寄せる
女性。
ソウルスキル"ゴーステン"の所持者。
一時的に体を幽霊のように変化させ、
物理攻撃を全て無効化する能力。
何も触れないがサイコキネシスが使える。
が、あまり強くない。隠れ巨乳である。]
「何か用ですか?」
訝しく宗也が聞く。
「そんなに警戒しないで?上藤さんに
頼まれて、君にこれを渡すように言われた
のよ。」
にこやかに後ろから分厚い本を出した。
「これって……。」
宗也が何となく察する。
「植物の図鑑よ。君のソウルスキルって
植物を操るんでしょ?」
五十嵐が聞く。
「ええ、まあ。つまり、これで植物に
ついて学んでソウルスキルの向上に
努めろって事ですよね。」
宗也が自信に溢れた顔をする。
「ええ。そこまで言う訳ではないけど、
まあ、そうゆう事よ。遠征頑張ってね。」
超朗らかな顔で五十嵐が言う。
「あ、はい。」
少し顔を赤らめながら答える宗也。
〜回想終了〜
「それだ。それに書いてある植物の特徴を
覚え、どんな時にどの植物が使えるかを
実戦で考えるんだ。今回でいうところの
イカダ作りに必要な植物を探したりとか
な。」
上藤が丁寧に説明する。
「分かりました。やってみます。
ソウルスキル解放!グラスマン!」
胸の錠前を心の鍵で開ける。
「植物操作!
イカダ!オール!」
シュルシュルシュルシュルバキバキバキバキ
植物がゾロゾロと動く。それらは段々と形を
為してイカダ、オールへと変化した。
「おお!!」
皆んなは感動する。
「これは植物の種類を分かっていないと
出来ない芸当だな。」
上藤が感心する。
「そうですね。この図鑑のお陰です。
イカダとオールはそれぞれ水を吸っても
丈夫なものを選びました。」
宗也が自慢げに言う。
「よし。これで元香川県
バァッシュベーアまで移動する。」
一行は宗也の造ったイカダで移動する。
「宗也さんのソウルスキルって
すごいっすね〜!他にも何か
創れるんすか?」
鳴門がテンション高めに宗也へ絡む。
「そうだな。植物があればかな。流石に
海の真ん中じゃあ無理かな。」
宗也が優しく流す。
「まあ、そりゃあそうっすね。じゃあ、
あっちに着いたらお願いするっす!」
鳴門は諦めなかった。
第12話 完