山が動いた
山が、動いた。
目の前で、のっそりと動いた。
そんなはずがない。
そう思ってよーく目をこらしたけど。
うん、動いてる。
絶対動いてる。
どうした、山。
お前、簡単に動いていいものじゃないだろ。
大自然が何千年、何万年かけて地形を形成したり、人が人工的に削ったり積んだりしないと動けないはずだろ。
なのになんで、そんな短期間で動いてるんだよ。
俺は、山があった場所と山が移動した場所を見比べてみる。
何か、この超常現象のヒントでもあるかなと思って。
じーっ(観察中)。
あっ、さっき山があった所に人がいる。
トンネル工事を始めようとしていた人たちが、途方にくれている。
ひょっとして嫌だったのか?
体に穴をあけられるの?
その瞬間、山の神だか山の精霊だかの声が聞こえたような気がした。
『ちょーし、のってんじゃねー。人間に尽くす山ばかりだと思うなよ』
今まで山に心なんてないと思ってたけど。
あれ、もしかして、山って心があったのか。
ただ、喋らなかっただけ?