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葉隠雲母  作者: 飯塚 喆
修行編
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私はカモメ

topic:魂

魂はCPUのようなものなので、体は動かすための部品に過ぎない。同一の世界の魂の本質は変えることはできないが、逆に言えば魂と合致するような部品ならいくらでも変えることはできる。

 おじいさんは語る。


「仕組みに前にこの世界のことについても喋っておこうと思う。わしも詳しいことはわからんが、もともとこの世界は魔法というものは存在していなかったらしい。しかし500年前に突然『神の光』と呼ばれる謎の発光が世界全体で起こり、心で思った現象をある程度の範囲で再現できるという事象が相次いだらしいのじゃ。人々はそれを魔術と名付けた。そしてそれに合わせるかのように魔物が現れ、地形が大幅に変形したのだと。ここもその例らしくてな、ここ一帯は海だったらしい。とまあこんな感じで世界は突如として変わったわけじゃが、当然混乱や問題が発生した。地形変化によるさまざまな要因で文明という文明は消滅し、機械の技術の多くは失われた。そのかわり人は魔術で機械を補うために鍛錬を積んできたわけだが、さてクロ。ここで問題じゃ。魔術という武器を手に入れた人間はどうなったと思う?」


 僕はちょっと考えた。

すぐに思いつくのは犯罪や殺しの氾濫といったところか。

だがそれに加えて500年経って文明の発展があまりないとなると…


「戦争ですか?」


「左様。人の心を具現化する魔術の在り方は人の在り方でもあったのだ。よって人々は己の精神の似通ったものでグループを作り始め、意見の違いからグループ同士で抗争が始まることがあった。シミというものは染み込んだら全体に広がるものだ。気がつけば争いになっていた。それらの影響は甚大であり、たくさんの死というものがあった上で、遂に300年前に一つのグループが勝利した。彼らは生き残った人を集めて国を築き、世界を平定した。だから人類の魔術文明というのは時代がまだ浅い。そのこともあって、お前がいた田舎の町のように魔術に対する理解がないところもあるのじゃ。というのがこの世界の概要だ。

そしてだ。本題の仕組みについてじゃが、さっき言ったように心の持ちようによって魔術が変わってくるというところに鍵がある。つまり魔術の出力は心の強さに、性質は心の形に依存する。このことを魂弴力(プシュケ)と言う。

かなり曖昧なものなのじゃが、こればかりは実戦で見て見ないとわからん。明日から修行だが、最初はこれを確認していこうと思う。」


 ただ、おじいさんはそれに付け加えて「突然長々と喋ってすまんかった。だが心配はするな、時間は沢山ある。」と言ってまっすぐ僕をみた。

正直なところ自分の魔術は敵をうんこにするというものしかできたことがないし、それをまだおじいさんに伝えられていない。でもおじいさんがここまで歓迎してくれているのに申し訳なく思う気持ちもあって、ただ「大丈夫です。頑張ります」と言うことしかできなかった。兎にも角にも明日に備えるしかない。


 

 食事が終わった後、二階にある自分の部屋に通された。

10畳ほどの部屋にベッドと机が一つ。修行と聞いて山の中で野宿のようなことをすると思っていた僕は少しだけ安堵した。

 いろいろと謎が多い。ここはあくまで辺境の地なのに普通に文明生活を送れるような作りになっているようだ。これまたどういう仕組みかはわからないが、暖かい湯船にゆっくりと浸かった。

 自室に戻ると、外は夜になっていた。窓の外から見える空はみたこともないくらいに宇宙が広がっていた。

 ベッドに入ってそっと目を閉じる。



_____不思議な夢をみた。

黒いガラスでできた蝶が飛んでいる夢を。

それは自分であって自分でないような気がして

自由に遊んでいる。

けれど途中で力が抜けていって、フラフラと蝶は堕ちていく。その先に紫色のグニョグニョがある。それは蝶を閉じ込めていった。

蝶はどうにかして逃れようとするけれど、もはや羽は上がらない。グニョグニョは円形の玉になって、剥製のように蝶は閉じ込められた。



 さらに意識は夢の中へ消えていき、目が覚めた。

 今日から修行だ。


三鬱を避けましょう。

清く正しい鬱でありましょう。

鬱に責任を持ちましょう。

(特別誤訳:サヨキョウはじめました。kan●nと見比べながらやるの楽しいです。また今日も、忙しく退屈な『イイズカ サトシ』としての1日が始まる。)

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