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死へのパスポート  作者: 早瀬 渚
一人ぼっちの高校生
5/9

高校生の男の子5

「本当に疲れた……。」



 青年は昨日よりもため息をつく回数が多かった。散々だった。忌々しい授業「体育」があったのだ。今日の体育はバドミントンで二人一組でやるタイプだった。俺は当然のように一人になるのだが、それを分かっている体育教師が「じゃあ、ペアを作れ。お前は、俺とやるか。」と言ってきたのだ。その瞬間、大爆笑が起きた。俺以外の皆が笑っていた。悪気はなかったのかもしれないが、俺は辛いなんてものではなかった。全身が痛かった。笑い声が肌に触れるたび、鳥肌という名の悲鳴を上げた。みじめだった。……もうなくなってしまえば良いと思った。



「この帰り道が永遠に続けば良いのに。」



 家に帰れば、また辛い気持ちを押し殺して勉強をしなければいけない。もし、さっきのエピソードを母親に言っても、何もフォローしてくれないだろう。それどころか、「高校生にもなって、そんなことでくよくよしてどうするんですか」なんて言ってきそうだ。……もう頑張りたくない。



「大丈夫ですか?」



「っ!お前……。」



 青年の目の前には昨日の営業マンが現れた。昨日と同じく、不敵な笑みを浮かべている。



「昨日ぶりですね。」



「お前……、お前のせいで、俺の楽しみがなくなったんだぞ!俺の唯一の楽しみが……、返してくれよ!」



 青年は営業マンに吠えた。一日を頑張ることができる微かな理由を潰されたのだ。当然である。



「はい、知ってますよ。」



「は、……はぁ?」



 昨日同様、訳の分からないことを言うなと青年は思った。理解が追いつかないどころか、出来ない話である。



「昨日言ったじゃないですか。私は全て知ってるんです。あなたに関することならね。」



「どういうことだよ……。」



 もしかしたら、こいつは犯罪者なのかもしれない。盗撮、盗聴、ストーカー……青年の頭の中では、あらゆる犯罪が浮かんでいた。



「お、今日は聞いてくれる気になりましたか?」



 しかし、またこの男は俺の知りたいことをなかなか教えてくれない。さっさと教えて欲しい。青年はイライラし始めていた。



「ああ、だから早く教えろよ。」



「そんなに焦らなくても教えますよ。そうだ、あそこのカフェででもどうです?」



 営業マンはそう言って、青年の後方を指さす。そこには、落ち着いた雰囲気の古くからやっていそうなカフェがあった。いや、喫茶店といったほうが正確かもしれない。



「そんなことしてたら、また、俺の休憩時間が……。」



「大丈夫です。あなたが逃げなければ、きちんと確保して差し上げますよ。」



 営業マンはそう言って、青年の返答を待たずに喫茶店へと足を向けた。


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