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死へのパスポート  作者: 早瀬 渚
一人ぼっちの高校生
1/9

高校生の男の子

「本当に何もかも上手くいかないな……。」



 一人の青年が信号を待ちながらそんなことを呟いた。制服を着ており、高校生と見受けられる。その青年は信号が変わるまで俯いており、10秒に一回くらいため息をついていた。



「もういっそ、このままいなくなってしまおうかな……。」



 その青年はどうやら現状が嫌になるほど、思い詰めているようだ。あまり、覇気が感じられず、肩が落ちている。



「はぁ……。」



「すいませ~ん。そんなにため息をついてどうされたんですか~?」



「え……。」



 青年がその声につられ顔を上げると、一人の男性が立っていた。しわ一つない黒のスーツを着ており、ワイシャツの丈もちょうど良いところに揃えられていた。ただ、よくいるサラリーマンと違うところはネクタイではなく、蝶ネクタイをしているというところか。

 ……いや、よく見てみると決定的に違うところが一つあった。その男性は微妙に宙に浮いているのだ……。

 青年が足下を見て、ぎょっとした表情を浮かべると、その男が不気味に笑った。



「ああ、すいません。いつも、気をつけようとしているんですけどね。どうも、地面に立つというのは慣れなくて。」



 そう言い、男性は足を地面に降ろした。



「だ、誰ですか、あなたは……。」



 少年は振るわせた声でそう尋ねる。不気味な男はなおも笑顔を浮かべて答えた。



「どうやら、よほど驚かせてしまったみたいですね。それはこちらの意図するところではないのですが……。落ち着けますか?」



「……だから、あなたは誰ですか?」



 少年は恐怖を感じて、瞳孔が小刻みに揺れ動いていた。いや、瞳孔だけではなく、全身が震えていた。……これでは逃げようとしても、足がすくんで叶わないだろう。



「ああ、すいません。質問に答えていませんでしたね。誰?と言われましても、私に種族は割り振られていませんからね……。ただの営業マンと認識頂ければ、幸いです。」



 そう言って、自称営業マンは肘を折り、頭を下げた。執事みたいだなと青年は思った。



「営業マン……。どういうことですか。」



 青年は段々と緊張感が解けてきたのか、震えも少なくなっていた。まだ、警戒心は高まったままのようだが。



「どう……と言われましても、それは私の存在についてなのか、どうしてここに現れたのか、目的は何なのか、またはそれ以外、……質問の意図をお教え頂けますか。」



「3つとも全部です。……じゃあ、まず、どうしてここに現れたのかを。」



 青年からは少し敵意も感じられた。自分にとって害があるのか、見極めているのだろう。



「そんなに警戒しないでください。私はあなたの手助けをしようとやってきたわけなんですから。」



「手助け……?」



「はい。死への手助けです。」



「はい……?」



 その営業マンは笑顔でとんでもないことを言った。青年は理解が追いついていないようで、目を大きく見開いていた。


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