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いつか見た世界で私は何を想う  作者: すぺありぶ
1/1

違和感、ワタリ、始まりの日

今回書いたのは前に書いたことのある作品をリメイクしたような感じです。ぶっちゃけ前に書いた作品は途中でなんか違うな…ってなって書くのを止めまして、今回設定とかも結構変えて書きました。

毎週1回か2回は更新を目標に頑張ります。

何も聞こえない…いや…水の音が聞こえる…

ここは水の中…?…私カナヅチだから沈んでるのかな…

「………ィア!ま……て!…け…ら!」

誰かが私を呼んでる……?…そういえば水の中にいるのに苦しくない…もしかして…これって──


ピピピピ…

「んぅぅ…」

目覚まし時計の音が聞こえる。薄く目を開けるとカーテンの隙間から朝日がさしてきていた。

「あっつ…。ん、汗もかいてる…シャワー浴びよ」

鳴り続ける目覚まし時計を止めて1階に向かうとお母さんがリビングから顔を出してきた。


「おはよう、愛。」

「おはよう…あい…?」

「え、なに?あんた自分の名前も忘れるほど寝ぼけてんの?」

「ん〜?…あ、そうだ、愛か。愛だよ、私の名前は愛。う〜寝ぼけてるのかも…シャワー浴びてくる」

「ご飯出来てるから早く出てね〜」


脱衣所で服を脱ぎ、風呂場でシャワーを浴びた。ぬるめのお湯が気持ちいい。

(それにしても何で自分の名前を忘れたんだろ。寝ぼけてるからって普通自分の名前忘れる…?それになんか夢を見てた気がするんだけど…。うーん…まぁ、そのうちしたら思い出すかな。)



「はースッキリした」

リビングに行くとお母さんは朝食を食べ終えてパソコンとにらめっこしていた。

「あれ?また行き詰まってるの?」

「違いますぅ〜休んでただけですぅ〜。私の事よりさっさと朝ごはん食べちゃいなさい。今日終業式なんでしょ?」

「はーい」


この人の名前は明星(みよせ)(つむぎ)。私のお母さんで、作家を仕事にしていてよく家でウンウン唸っている。これでいて私をちゃんと食わせて育ててくれてるあたりちゃんと稼げてるんだから驚きだ。


「それにしても面白いわね、寝ぼけて自分の名前忘れるなんて。どうしてそうなったか教えて欲しいな〜。ネタになりそうだし」

そのお母さんが面白半分、興味半分にさっきのことを掘り起こしてきた。

「残念だけど、私にもなんで忘れてたのかサッパリわかんない」

「ふ〜ん……もしかしてなんか変な夢でも見た?」

妙に鋭くない?

「何かの夢は見てた気はするんだけどね…やっぱり思い出せない。ご馳走様でした」

朝食を済ませ部屋に戻ると身支度を済ませ家を出た

「いってきます」

「いってらっしゃ〜い、あんまり遅くならないようにね〜」



「や!愛!おはよ!」

学校に着くと幼馴染の東條(とうじょう)(のぞみ)と玄関で鉢合わせた。

「おはよ〜、やけに元気だね?」

「そりゃそうよ!今日は二学期の終業式!つまり明日からは夏休み突入なんだから!遊ぶぞー!!」

「そっか〜。ところで勉強はどうするの?宿題やらないと先生カンカンだよ?」

「ゔっ…そうだよね、宿題あるもんね…」

「希って勉強嫌いだよね…今年も宿題協力するからがんばろ?」

「ありがとうございます神様仏様愛様〜!愛してる!」

「うん、とりあえず暑いから離れよっか」

「くっ!誘っておいてその気になったら突き放すなんて…サイテー!でもそこが」

「馬鹿なこと言ってると置いてくよ〜」

「ちょっ!?待って!」

こんな風に希はちょっとおちゃらけてるけど友達想いのいい子だ。


教室につくと1番後ろの窓際の席に私が、その隣に希が座った。くじ引きでたまたま席が隣りに、しかも1番後ろの窓際だったので抱き合って喜んだものだ。その席も今日で一旦お別れだ。

「ね〜愛。帰りに池のあるちょっとおっきめな公園あるじゃん?あそこに美味しいクレープ屋さん来てるらしいから帰りに寄らない?」

「ん、いいよ。今日は全然時間あるし」

「マジ?やりぃ!ちなみにおごってくれたりは」

「すると思う?」

「するわけないよね〜!(コクコク)」

「と、言おうと思ってたんだけど…二学期の期末テスト頑張ってたし、ご褒美も兼ねて今日はおごってあげる(ニッ)」

「え?ほんと!?嘘じゃない?」

「嘘じゃないよ」

「とか言ってやっぱなしとか」

「そこまで言うならおごらな」

「奢っていただきありがとうございます愛様!!」

「よろしい」

「お前ら一旦席につけ〜」

教室のドアを開けて先生が入ってきたので話を中断して席についた。先生の話が終わると体育館で終業式が行われ延々と長い校長の話をきかされた。



「終わった〜夏休みだ〜!!」

「待って希…終礼が終わってから学校出るの速すぎ。そんなに急がなくても夏休みは逃げないって」

「夏休みは逃げないけどクレープ屋さんは並んでるかもしれないから早く行こう!」

「まぁそれもそうだね。行こっか」


公園に着いてクレープ屋を見るとまだ誰も来ていないようだった。

「お、ラッキー♪まだ並んでないじゃん」

「まだ早い時間だからだろうね」

「だね。愛は何食べたい?私が買ってきてあげるから愛は良さげなベンチを確保しておいてよ」

「わかった。うーんとじゃあ…無難にチョコバナナでいいかな」

「ほーん、ド王道だね」

「希は何食べるの?」

「よくぞ聞いてくれた!私が食べたいのはこれだぁ!!!」

そう言って勢いよく差し出されたスマホの画面には

『超スーパーハイパーエクストリームジャンボデラックスクレープ』

といういかにも頭悪そうな名前がシークレットになっているクレープと共に書かれていた。

「………なにこれ」

「これは超スーパーハイ」

「名前は分かったから中身は?」

「シークレット!アイドントノウ!!でもヤバいのは見た目で分かる!」

「悪いこと言わないから止めといた方がいいよ…」

「食べるもーん!だって今日は愛の奢りだからね!甘えさせてもらう!!」

「はいはい、いくらなの…って1500円!?高!」

「世の中にはこれより小さくて2000円するクレープもあるんだからむしろここまでボリューミーで1500円は安いほうだよ?」

「まぁそうだけど…逆にそこまでボリューミーなのに1500円って赤字じゃないか心配になるんだけど…」

渋々自分のチョコバナナ分と希の分の1500円を財布から出して渡した。


「サンキュー!それじゃパパっと買ってくるわ!」

希はそう言って颯爽と走り去って言った。

「さてと、いいベンチ探そっか」

少し周りを見渡すと木陰になっているベンチを見つけた。

座ってみると池を眺めながら木陰で涼める中々いい場所だった。


そこに座って希を待っていると私の隣りに誰かが座ってきた。隣りに目をやると和服を着た綺麗な人だった。

「こんにちは」

「え、あ、こんにちは」

見惚れていたらいきなり話しかけられてしまった。

「その、えーと、お綺麗ですね」

「あら、ありがとう」

見たまんまの正直な感想を述べると微笑んでくれた。

しかしその後は会話が続かず気まずい空気が漂ってきた。するとまた向こうから話しかけてきた。

「1つ、質問してもいいかえ?」

「…?えっ、と…どうぞ」

「おぬしは大切な何かをを助けたり、誰かを守ったりできる時、とっさに自分の何かを擲つことができる、もしくはその覚悟があるかえ?」

「…」

(な…なんだこの質問…公園で聞くことじゃないでしょ…でも真面目に答えないといけなそう…)

大切な誰かを、何かを守ったり助けたりする時自分を犠牲にできるかってことだよね、簡単に言うと。大切な誰か…

頭の中に希が浮かんだ。希が危機にさらされるってあんまり想像はできないけど…でも、


「…でき…ます。覚悟もあります」

「ほう、何故?」

「大切な誰かとか、何かって自分にとってなんか特別な価値観があって、それを失うと自分が自分でいられなくなっちゃいそうで…」

「ふむ?つまりおぬしは何かの為に自分を犠牲にするのではなく、自分の為に自分を犠牲にするということかえ?」

「そう…ですね。その何かが無くなると結局自分の中の何かを失ってしまうから…そうして結局何かを失うくらいならいっその事自分を擲つ方がいいかなって…」

今言っていることは自分勝手だと思う。『じぶん』が傷つきたくないから、何も失いたくないから自分が盾になる。矛盾しているだろうか?いや、矛盾してない。なぜなら自分を盾にしているだけであって『じぶん』の中身は守りたい『何か』にあるのだから。私の中身は空っぽで何時でも『何か(じぶん)』の盾になる準備ができているのだ。


「くっ…はっはっはっはっはっ」

私の答えを聞いて彼女は笑い始めた。

(えっ答え聞いといて笑うの!?)

少しショックを受けているとまた話し始めた

「なるほどのぉ…『じぶん』を傷つけないために自分を犠牲にするのか…ふっ、一見矛盾しているようでそうではない…『じぶん』の本質は自分ではなく守る方の『何か』にあるわけだからのぉ」

今ので全部理解できちゃうんだ…

彼女はニヤリと笑った

「おぬし…面白いなぁ。まさか紬の記憶を残すだけで今までの子らとこない違うとはなぁ」

「え、何でお母さんの名前を…!?」

「ふふふ…まぁそれはいずれ分かるかもなぁ?それよりおぬし、気ぃつけんと、今の答えからして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…さて、そろそろお暇しようかのぉ」

「あ、あの、名前を、名前を教えて下さい!」

こ、これだけは聞いておかないと気が済まない!

すると彼女はにっこり微笑んで

「そうやなぁ…ワタリ、これが私の名前やから、ようけ覚えてってのぉ」

「ワタリ…」

そう言って彼女は去ろうとしたがすぐに足が止まって何かを見ていた。視線の先を見ると池にある桟橋の上で今にも池に落っこちそうな男の子がいた。

「なっ!?」

危ない!誰か助けないと──

そう思った時には既に私の体は動いていた。

桟橋にいる男の子目掛けて全力で走った。途中で希の驚いた声が聞こえた気がしたけど止まらなかった。

そうして男の子が池に落ちる直前に間に合った。が、そこそこの距離を全速力で走ったせいか足がもつれ段差につまづき体が宙を舞った。

それでもなんとか落ちそうになっていた男の子を手で桟橋に引き戻すことができた。

ただし私と入れ替わる形で。

ザブンという音と共に体に冷たい感触を肌で感じた。カナヅチかつ全力疾走後で体力のない私にもがく力はなく、そのまま沈んでいった。

沈む途中、希の叫び声が聞こえた気がした。

ああ、そういえば、あの超スーパーなんちゃらクレープ、希と一緒に見てみたかったなぁ…

そんな事を思いながら私の意識は途絶えた



夕方、公園には規制線がはられ立ち入り禁止になっていた。普段とは違う物々しい雰囲気に周囲は少しざわついている。

「え、何これ?ここ何かあったの?」

「いや、知らねぇ」

「なんか桟橋から池に落ちそうになった男の子を助けようとした人が居たらしくて、その人が池に落ちちゃって心肺停止状態なんだって!」

「うわぁ、やべぇなそれ…あれ?あそこに居るの希じゃね?」

「あれ?愛は?あいつ、いつも愛と一緒にいるだろ。今日もずっと一緒だったし。放課後も一緒に遊びにいくって聞こえたし」

「え、てことはもしかして落ちたのって…」

「「「愛!?」」」





「あらあら、()()()()()()()()()()()()()()って、私は忠告したんやけどなぁ、愛?けどまあ…」






「聞かせてもらったその覚悟…楽しみにしてるで?ふふふ…」

皆さんは自分の大切な何かを守る時ためらいなく自分を擲つことができますか?

できたとして、何を想ってその結論に至るのでしょうか?

考え方は様々です。ただの偽善者か、純粋なお人好しか、自己を軽視した自己犠牲精神者か、はたまた主人公のように『じぶん』を守りたいだけなのか。考えれば考える程、色んな想いが見えてきそうですね。

後書きが少し長くなりましたが最後まで見てくれてありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

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