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謎と散歩

 翌日、いつも通りホームルームの3分ほど前に教室に入ろうとした。その時だった。

教室に入ろうとする俺と同じタイミングで教室を出ようとしてきた女の子がいた。


 宇賀神だった。


 俺は驚いたがおとなしく一歩下がり、先に出れるよう譲ったつもりだった。しかしなかなか出ようとせず、かといって俺に譲ってくれる様子もなかった。しゃべったこともないのにバカにされているのかと思ったその瞬間だった。


「……おはよっ!」


 そう言ったかと思うと、小走りに教室を出ていった。

わけもわからず困惑していると、チャイムが鳴ったので急いで席についた。

ほのかに香った彼女の匂いを嗅いだことがあるような気がしたが、すぐに忘れるのだった。


 この一連のやり取りを宇賀神と同じくカーストトップクラスで親友でもある、金髪ショートカットの美女が見ていたことにはまったく気づかなかった。


 

 ――結局朝の出来事は何だったんだろうか?

あの後一切会話する機会もなく、疑問が解決せず悶々と帰った。当然帰宅部の俺は日が沈む前に家に着いた。


 陰キャの俺は当然アニメやゲーム、漫画など陽キャにバカにされるものが趣味の男だ。

それ以外の趣味といえば犬くらいなもの。幼い頃から一緒にいる家族であり、ぼっちの俺にとっての親友でもある。心のオアシスなのだ。いつも通り犬と戯れ、帰宅から2時間ほどたった時だった。


 ブーという振動がメールの受信を知らせた。


 確認してみると、なんとモモちゃんの飼い主さんだった。

驚きすぎて携帯を落としそうになったが、内容を確認してみると散歩のお誘いだった。

社交辞令じゃなかったことに喜び、近くの公園で待ち合わせしないか、という誘いを二つ返事で了承した。


 夕暮れ時、待ち合わせの十分ほど前に到着すると、すでにモモちゃんと飼い主さんはそこにいた。


「遅れてすいませんっ!」


「遅れていませんよー」


 そう笑って返してくれた。相変わらず眼鏡とジャージと地味な恰好だったが、かわいかった。

リクもモモちゃんもお互いを確認すると、リードに繋がれながらも飼い主を引っ張るようにして再会を喜んでいた。


 リクが飼い主さんの周りをぐるぐる回るように喜び、さらにモモちゃんもそのリクにじゃれるように再会を喜んだため、飼い主さんは絡まったリードでぐるぐる巻きになってしまった。


「大丈夫ですか!?今ほどきます!」


 リクの粗相を謝りながらそういうと、すぐにリードをほどいていった。

苦労しつつもなんとかほどき終わり大丈夫ですか、と声をかけると彼女の顔は真っ赤になっていた。

どうやら意図せず彼女の体に触れまくってしまっていたようだった。


「さ……さあ!散歩にいきましょう!」


 謝る前にそう言われ、恥ずかしさを紛らわすように返した。


「そうですねっ!いきましょう!」


 モモちゃんと飼い主さんとの散歩は楽しかったし、お互いの犬も喜んでいたし幸せを感じた1日だった。

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