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飼い主




 俺の名前は雨宮聖。ぼっちで陰キャで、フツメン……と信じたい……そんな名前負けしている男である。



 翌日、遅刻ギリギリで学校につく。チャイムがなり、担任がやってきた。ホームルームがはじまると


「今日は宇賀神は休みだな」


 担任が言った瞬間クラス中でまじかよという声や、目の保養がどうこうというような類の言葉であふれた。  


 ――宇賀神真琴


 クラスだけでなく学校のマドンナ。えげつないスタイル。胸が大きく、顔は小さい。

黒髪美少女という清楚ルックスに反した、明るい性格でクラスのDQNと仲が良い。

そういう連中と仲がいいからか援助交際などの黒い噂もあるくらいだ。

だがしかし間違いなくカーストトップ。それどころか頂点に君臨する陽キャの女王。



 つまるところぼっち陰キャの俺とは接点なんてあるはずもなく、会話なんてしたこともなかった。


 クラス中が騒がしくなる中、俺には関係ないと顔を伏せ、いつものように過ごすのだった。




 学校が終わるとすぐに家に直行した。モフり欲が溜まっていたからである。

しかも今日は2匹いるから2倍だなぁぐえっへっへ……

家につき鍵を開けてリビングに入ると2つのケージ、それぞれのケージに入っている2匹の犬がしっぽを振りながら、くるくると回っていた。その反応に嬉しくなりながらも、ケージを開けると2匹とも俺に勢いよく飛びついてきた。


「よーしよしよし」


 2匹を全欲で撫でまわすと、ともに仰向けになり腹を見せてきた。


「なでろってことか~。このこの~」


 そうやって保護した毛の長い茶色メスのダックスフンドと飼っている黒い短い黒い毛オスのダックスフンド、リクを撫でた。


「リクはここがええんか~ここがええんか~」


 そういって前足の脇をマッサージしてあげた。


「君はここがええんか~」


 保護した犬は顔の下胸のあたりを撫でられるのが好きなようであった。


 一通り堪能した後、携帯を見る。


 昨日保護した後、色々調べたが警察に連絡したりSNSを利用したりと色々できることはあるはずだった。


 だが陰キャの俺はSNSなどやっているはずもなく、ネット上にある迷子犬の掲示板をとりあえず利用することにした。


 写真や保護した場所などと一緒にメールアドレスを入力したため、飼い主が見てくれていればメールが届くはずだった。しかし昨日今日といまだに連絡はない。


 再び2匹に目をやると立ち上がりお互いの匂いをかいだり、なめあったりなど短時間にも関わらず仲良くなっていた。


「リクちんはイケメンだから仕方ないねぇ~」

 

 しかしお互い仲良くしているなーと感心しているとリクがおもむろに保護した犬の背後に回り、背中にのしかかったかと思うと、腰を振り始めた。


「やめなさい!」


 そういってリクを軽くたたき、2匹を引き離すと心なしかリクが残念がっていた。

知らぬ間に愛犬の貞操が奪われていたら、殺されちゃうからね。俺だったら激怒じゃすまさないしね。

 

 そうこうしているうちに、携帯が鳴った。急いでみてみると飼い主からのメールだった。

メールの内容はこうだった。うちの飼い犬に間違いないこと。保護してくれたことへの感謝。迷惑じゃなければ今すぐにでも迎えにいきたい、ということだった。


 愛犬は家族。そう思っている俺にとってメール相手の気持ちが痛いほどわかった。

二つ返事で申し入れを受け入れ、家の住所を教えるのだった。直ぐに返信がきて急いで伺うとのことだった。


 本当に短い間だったが、楽しい時間だった。


「迎えに来るって。よかったなぁ」


 そういって保護した犬を撫でると顔を擦り付けてきた。

別れを察したのかリクは悲しそうな顔をした。人見知りで臆病なリクにとってすぐに打ち解けたのは珍しいことだった。そんな相性のいい犬とすぐに別れさすのは心苦しかった。


 しばらくして玄関のチャイムが鳴る。保護した犬を抱きかかえながら玄関を開けるとどでかい眼鏡をかけジャージ姿の女性がいた。髪を後ろで結び、地味な見た目だがそれでもところどころのパーツが整った綺麗な人だった。


「モモちゃんっ!」


 そういって俺から犬を受け取ろうとする彼女が飼い主であることを確信した。

どうぞ、そういって優しく犬を渡すと彼女は思いっきり抱き着き、ごめんねと小さくつぶやいた。

 

「モモちゃんっていうのかぁ~」


 感動の再開の余韻をしばらく味わった後リクを抱きかかえながら片方の前足をとり、動かしながら


「リクだよ。よろしくね」


 すると彼女もまた同じように


「モモです。よろしくね。それとありがとう」


 そう返してきた。俺がほのぼのしていると彼女は俺の顔を見、衝撃を受けていた。


 気持ち悪かったかも、そう思ってどうしました?そう聞くと彼女はしどろもどろになってしまった。


「あっ……あのっ……なんでもありませんっ!」


 なおも、えっ!?っていう顔をしている彼女に困惑したがリクがクゥーンと鳴くのが聞こえた。


 俺は恥ずかしかったが、リクのためだろっ!そう腹を決めて真っ赤になりながら言った。


「こんなタイミングで気持ち悪いかもしれませんが連絡先を教えていただけないでしょうかっ!?これは決してナンパや保護した代わりなどではありませんっ!断って頂いてもかまいませんっ!ただリクがあまりにも仲良く楽しそうに他の犬と遊ぶのを見て友達になってほしい、一緒に遊んでほしいってだけなんですっ!」


 早口で時に声が裏返りながらそう宣言すると、彼女は一瞬驚いた後笑顔になった。


「私もモモちゃんに友達ができてうれしいです。ぜひよろしくお願いします」


 そういう彼女に見とれてしまったが、すぐに気を持ち直し、こちらこそお願いしますっ!そう返した。


「LIMEでいいですか?」


 彼女は一瞬固まり


「いや……LIMEはやってない……です。メールアドレスでお願いします……」


 バレバレの嘘だったが、下心はないんだ!リクのためだから別に大丈夫だよね!そう強がって自分のメールアドレスを渡した。

 

 こうしてアドレスを交換した後、別れた。その後すぐにメールが来た。感謝と共に今度一緒に散歩でもしましょう、という社交辞令かのようなお誘いがきた。これは本気にしていいんだろうか?そう疑心暗鬼になりながらも、楽しみですと返信をしたのだった。

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