犬好きに悪い奴はいねぇ
「え……? 雨宮なにいってんの……? ウカノカミって……だっだれ?」
なおも認めようとしない宇賀神に俺は畳みかけた。
「シラを切んなくていいから。モナカちゃんってモモちゃんだったし。リクがやけに仲良さそうにしてたと思ったら……。プリンちゃんと仲良くできたのモモちゃんがいたからかな?」
俺は手を叩きながら1人で勝手に辻褄があったと納得した。宇賀神はおずおずと聞いてきた。
「いっ……いつから……?」
「いつからとかどうでもいいよ。宇賀神は何がしたかったの?」
宇賀神の疑問をバッサリと切り捨て、要件を聞いた。俺はそれを知りたいのだ。
「えっ…………何がって…………。
もう私が……無理してヤンチャな子たちと付き合ってるってわかってる?」
「なんとなく。ウカノカミさんとしてしゃべってたことが宇賀神のホントの姿かはわからないけど、
もしそうなら俺と似てる感じだとは思ったけど。」
「ホントはしゃべりたくないけど…………聞いてくれる……?」
「なにが助けになれるかはわからんけど理由があるなら聞くよ」
長いためのあと、観念したのかこれまでの経緯を話し始めた。
「雨宮って……いつもぼっちじゃん? 周りの目とか気になんないの? そのままでつらくない?
私は……怖い。だから嫌な人たちとも仲良くしてるけど、もう疲れちゃった。雨宮のこと知れば何か変わるかなって……。雨宮と接点なかったし、学校で仲良くしたら迷惑かけると思ってウカノカミって名乗ってたけど最近学校で絡みすぎて案の定あんなことになっちゃって……ごめん」
ウカノカミさん状態でいってたことはほんとだったんだな。宇賀神は陰キャなのか……。
まあ陽キャだろうが話してみてそんなに悪い奴とも思えなかったけど。ん……でも気になることが一つ。
「最初に聞いておきたいんだけど……モモちゃんが迷子になったのは?」
「あれは本当に偶然! モモがいなくなって保護してくれたのが雨宮で運命感じちゃったんだ。
このまま別人として接点持てば……って。騙しててごめんなさい……」
「飼ってる犬をわざわざそんなことしないよな。逆に疑って悪い。
でぼっちがつらくないのかって話だっけ?」
「うん……。友達作らないの? ……作れないの? 色々知りたい」
俺は昔を思い出しながら、今まで思っていた断片的なことを言語化して宇賀神に伝えようとした。
わかりにくくなってもいい、自分の素直な気持ちを答えようと思った。宇賀神は悪い奴じゃない。
なにより宇賀神が本気で悩んでいることは俺にとってもまた、関係ないことだとは思えなかったからだ。
「そうだな……。
改めて考えてみると最初の頃は友達を作ろうとしたし、周りの目も気になってた気がする……。
でも誰かと話すたびに何か違うって……思っちゃったんだ。波長が合わないっていうのか……。
無理して話すととにかく疲れた。あの頃は毎日毎日精神的に疲れていたな」
絞り出すようにゆっくりとしゃべり始めた。俺は空を見つめながら話した。
「ぴったりとハマる人がいるはずだと思った。違うと思ったらもう仲良くする努力なんてしなかった。
でもそれがいけなかったんだろうな。努力もせず受け身の姿勢で周りのせいにした。
……でも努力もせずに誰かと仲良くしようだなんて都合がよすぎるよな。
いつの間にか誰ともしゃべらなければ疲れることもないしいいやって思ってたよ」
「雨宮も私と似た感じだったんだ……」
「いや。宇賀神は俺よりすげえよ。もしかしたら今からでも遅くないかもしれない。
それなのに俺は言い訳をして未だになんもしてない。でも宇賀神は悩みながらも努力してる。
合わないと思いつつもDQNと仲良くした結果として東城と仲良くなれただろ。
宇賀神には東城がいる。無駄じゃない、努力の結果だ」
「前も言ったけど……怖い。歩とこんなに仲良くなれたのに拒絶されちゃうかもしれない……」
「そうかもしれないけど、今まで努力してきた宇賀神ならできるだろ。俺にはいない。うらやましいよ」
「でも……」
難しい顔をしながら食い下がった。
今までずっと我慢してきた悩みだ。今すぐどうにかするのは難しいだろう。それでも。
「東城はわかってくれるよ。もし東城がダメだったら……
ウカノカミさんとしてじゃなく、宇賀神として俺と本当の友達になろう」
俺は赤くなりながらも語りかけた。俺にできることはこれ以上もうない。
宇賀神の悩みがもし解決できたなら、俺も一歩進んで何か変えることができるかもしれない。
そんな願望に近い願いを宇賀神に重ね合わせた。
最後に恥ずかしさをごまかすように言った。
「それに大丈夫だろ! 宇賀神も東城も犬好きだろ?
つまり何が言いたいかって……犬好きに悪い奴はいねぇ!」




